GO!豪!ゴールドコースト!


photo:ビーチ

*1 えっ?

2* えっ?海外挙式?

*3 ゴールドコーストへ

4* サーファーズ・パラダイス

*5 マリーナ・ミラージュ

*6 挙式の朝

*7 パパラッチ

*8 コアラを抱きたい!

*9 ローンパイン・コアラ保護区

*10 カード紛失事件

*11 真夏の夜は心も冷える

*12 へぇ、さんまが?

*13 グワッ、愉快なダックス・ツワー

*14 海辺の豪邸

*15 ビフォア・スミング

*16 至福のスイミング

*17 アフター・スイミング

*18 Q1タワー

*19 マンゴースのワイン

*20 最後の晩餐

*21 夜明けの光

*22 ロングステイ談義

*23 東京のほうがいい!

*24 移住という選択肢

*25 ロングステイ

*26 わが人生、どう生きる?


*1 えっ?

オトーサン、 驚きに満ちている人生って素晴らしいなあ とつねづね思っております。 例えば、さんまさん。 東奔西走の大活躍。 私生活も、波乱万丈。 「えっ、結婚するの?お相手は誰?」 「そう、そうなの、やっぱりねえ」 という会話を交わしたかと思ったら、 「えっ、もう離婚するの?」 お子さんは、どちらが引きとるの?」 そんな会話が続きます。 もっとも、当事者にしてみれば、 驚きというよりも苦痛かもしれません。 オトーサン、 息子は、結婚しないものと思っていました。 友人知人のご子息が結婚すると聞くと、 正直、うらやましいとは思いましたが、 「そういう人生もあっていいよなぁ。 いまは、コンビニもあるし、経済的にも楽だし...」 それも、息子がつねづね言っていたからです。 「ボクは、多分結婚しないよ。 これ以上、日本の人口を増やしたくないから」 「そうかもなあ、そのほうが正しいかもなあ」 世界的にみても、人口増加は大問題です。 何百年後かには、人口が増えすぎて、 地球がその重さに耐えられなくなるなんていう 説を聞いたことがあります。 ところが、ある朝のこと、 「会ってほしいひとがいるのだけど」 オトーサン、驚きました。 「会ってほしい?」 不始末で上司にわびをいれるのか? サラ金業者にでも会うのか? 悪い女にひっかかったか? 「そう、つきあっているひとがいるんだ。 結婚しようと思ってさ」 「えっ?結婚?お前が? 結婚しないと言ってたじゃないか」 「そうだったかなあ」 そう堂々と言われると、困ります。 まるで、こちらが記憶障害のような気分になります。 むしろ、 「その件につきましては、 えー、記憶にございません」 とでも言ってほしいものです。 「で、いつ?どこで?」 そんなことで、彼女に会うことになりました。 「おお、いい娘じゃん」 「あなた、そういう言い方ってないでしょ」 その日は、一緒になごやかに会食しました。 「あの娘、無口ね」 「おい、もう嫁と姑の対立かよ」 「あいつ、ボクが支払うからなんて イキがっていたなあ。給料少ないくせに」 「いいじゃないの、そのほうが」 「そりゃ、そうだけど...」 その後も、驚きが続きました。 「あのー、相手の両親に会ってほしいんだけど」 「そりゃ、そうだなあ。で、どこで?」 「N県なのだけど」 「えっ、あんな遠いところまで行くのか?」 「うん!」 「だって、相手が東京に出てくればいいじゃないか」 「仕事があるんだって」 「そりゃ、おかしいんじゃないか?」 この押し問答、奥方の一言で決定しました。 「行ってあげなさいよ。 先方にもいろいろ事情があるんでしょうから」 どうも、奥方は、息子に丸めこまれているようです。 「おかしいよなあ。筋が通らないよな。 せめて第3国で会うとか... 北京とか、クアラルンプールとか」 オトーサン、 まるで、対北朝鮮外交を担当しているような 気分になってまいりました。


*2 えっ?海外挙式?

オトーサン、 ようやくN県遠征という重責を果たして、 のんびりしていると、 次の驚きがやってきました。 「あのさ、結婚式だけど、 彼女がどうしても、 海外であげたいって言うんだけど」 「えっ、海外で?」 奥方、 「なんで、国内で式をあげないの?」 息子、 「国内だと、職場のひととか、 誰を呼ぶか決めるのが大変なんだ」 オトーサン、 「会社辞めるわけじゃないんだろう。 それなら上司ぐらい呼ばなければ。 職場結婚ならなおさらだよ。 彼女のほうは、いずれ辞めるにしてもさ」 「うん、子供が出来たら辞めるつもり」 「まさか、出来ちゃった婚じゃないだろうな」 「そんなことないよ」 「じゃ、普通に国内であげたらどうだ? 気にくわない上司の顔など 見たくないという気持ちも分からなくはないけど、 お前のほうは、そうじゃないんだろう?」 「...」 どうやら、息子の一存では もはや、どうにもならなくなっているようです。 オトーサン、 息子がいないときに、奥方とぼやきあいます。 「...おれたちの頃は、宮崎だったけどなあ」 「そうよね。海外なんてとんでもないわよね」 「おれの上司なんかの時代は、熱海だもんなあ」 「海外は、お金がかかるわ。 お相手のご両親、海外旅行に行ったことないそうよ」 「えっ、いまどき?」 「田舎のひとって、そんなものらしいわよ」 「それじゃあ、なおさら海外なんて大変だ」 「でも、楽しみにしてるんですって」 「おれ、やだよ。行きたくないよ。 添乗員のマネさせられるなんて」 「あの娘も。 NYから来なければならないし...。 忙しくて、休めないかも」 「まあ、ロスかハワイあたりなら、いいかも」 「あの子は、ハワイよりオーストラリアにしたい そうよ。ハワイは前に行ったから」 「それじゃあ、あの娘はますます大変だ。 地球の反対側のようなものだからな」 オトーサン、 心のなかで、 ようやく海外挙式、 そしてオーストラリアで挙式という 避けがたい事実を消化しました。 春が過ぎ、夏が過ぎ、秋になりかかった頃です。 時間はすべての確執を癒すとは本当です。 ところが、秋分の日に、 奥方を通じて新事実を知らされました。 「えっ?お正月に行く? 旅行代金が、バカ高い時期だぜ」 「そうなの、彼女のお姉さんの 旦那さんの都合がつかないからだそうよ」 「その時期、おれのほうは、仕事がはじまってるよ」 「あの子、職場に事情を話せばいいのじゃないか って言ってたわ」 「やーめた。オレは行かない。 まあ、都合のつくひとだけで行ったら」 奥方、 「そんなこと言ったって」 「....」 事態は、北朝鮮外交のように 膠着状態になってまいりました。 そして、その後も 「えっ?」が続いたのです。 「えっ?パック旅行?代理店に丸投げ?」 「えっ、子連れ?二人も?6歳と3歳?」 「えっ、JALを利用するって?」 「えっ、機内泊?たったの6日間?」 最後の「えっ」」は、 バリ島でテロが起きたディスコ爆破事件。 何でもオーストラリア人を狙っての犯行だとか。


*3 ゴールドコーストへ

オトーサン、 「もう行く日がやってきたのか」 あまり気が進まないので、 ガイドブックも、近畿日本ツーリストのくれた 分厚い資料にも、まだ目を通していません。 ようやく、 当日の朝、 パラパラっとめくってみました。 「えっ、パスポートのほかに、 ETAS(イータス)がいるの? おれ、そんなもの用意してないよ」 ETASとは、 Electronic Travel Authority(電子ビザ)の略で、 これをパスポートと一緒に 成田空港でチェックインの際に 提示しなければならないようなのです。 奥方、 「資料をよくみなさいよ。 葉書みたいなのが入っているでしょう」 「えっ、そんな大事なものも、 このなかに入っているの? 近畿日本ツーリスト(近ツー)が 用意してくれたのか?」 要するに、何の準備もしていなかったのです。 オトーサン、 「えっ?アダプターがいるの?」 「そうよ、日本のようにはいかないのよ」 「おれ、用意してないよ」 「空港で買えばいいでしょう」 「そうかぁ」 そんなことで、 空港でハの字型のアダプターを買いましたが、 「また、出発前にアタフタしたなあ」 と反省しました。 成田空港の日航ホテルの前 レンタルパーキングに マイカーを預けて、 午後7時間に空港ロビーに集合しました。 こちらは、奥方と娘2人の4人。 息子とその彼女、 ご両親、 そして彼女のお姉さん。 その6歳の男の子と3歳の女の子。 オトーサン、この時点で、 相手方の氏名を完全に忘れていて、 ろくなご挨拶もできませんでした。 オトーサンたち、 11人の団体を乗せた飛行機は、、 夜の9時45分に離陸。 離陸直後に、乱気流で大揺れします。 「こんなにゆれたのはじめてだなあ」 「そうねえ」 「また、海外旅行保険かけていないなあ」 「そうねえ」 「子供たち、怖がっていないかな」 後で、うかがうと、喜んでいたそうです。 オトーサン、 奥方と娘たちに言います。 「機内食、遅くなるだろうから、 ここで、食べておこう」 空港でカレーライスを食べました。 息子にも忠告。 「夕食食べておりたほうがいいよ」 「だって、機内食が出るんでしょ」 息子、そう言い張って、 彼女も、ご両親たちも、お茶で我慢。 思ったとおり、夕食が出たのは、 午後の11時半! 息子、 「空腹でまいった、まいった」 そう言っていました。 旅慣れないくせに、ひとのアドバイスを 聞かないと、こういうことになるのです。 オトーサン、 「もう着いたのか。 オーストラリアは、楽だなあ」 ブリスベーン空港には、 朝7時10分。 およそ8時間のフライトです。 時差は、1時間。 日本より1時間早いだけなので、 ハワイなどのように時差がありません。 比較的よく寝たほうですが、 満席状態で、おまけに座席の間隔が狭いので みんな寝不足のようです。 そのまま、 近ツーのバスでホテルに直行しました。 およそ1時間で、ゴールドコ−ストです。


*4 サーファーズ・パラダイス

オトーサン、 10時にホテルについて、部屋へ。 「今日は、ゆっくり休養だ」、 そんな予定でしたが、 明るい陽光に血が騒ぎだして、 12時には起きてしまいました。 「シャワーでも浴びるか」 大きなバスタブを目にして、 たまらずシャワーを浴びました。 すると、元気回復。 「街にいくか?」、 「そうねえ」 と言っていると、娘たちから電話。 「サーファーズ・パラダイスに行ってみようよ」 「いいとも」 息子と彼女、そして新婦の父親は、 明日の挙式のリハーサルで不参加です。 ほかのひとも、休養とか。 わが一家4人は、 午後2時に、これか4泊する 5つ☆ホテル、シェラトン・ミラージュの 豪華なロビーで待ち合わせ。 「あらっ、クリスマスツリーが飾ってある」 「そうだった、昨日がクリスマスだっよねぇ」 「真夏のクリスマスって、やっぱり感じでないなあ」 「でも、ここ、本当にいいホテルねえ」 「やはり、シェラントンっていいわねえ」 「ちょっと東京ディズニーランドの シェラトンに似てない?」 大理石の広いロビーの先には、 いくつものラグーンが広がり、 その先には、白いビーチ、 青い海原には、波が白く砕けております。 まぶしい夏の光景です。


photo:ロビー

「そう暑くもないなあ」 「湿気がないからよ」 「寒いNYからくると天国だわ」 「ヤシの木もほんとに元気そうよ」 「ねぇ、お池で白鳥が泳いでいるの見た?」 「見た見た、芝生を歩いていたわよ」 「子連れのカモ、見た?」 「へえ、いたの?見たいわぁ」


photo:ココナツヤシ

オトーサン、 いつまでも、娘たちと奥方が ロビーでおしゃべりを続けているので、 時間が気になってきました。 何もいそぐことはないのですが、 いつものクセが出て、つい時計を見ます。 「おい、もうそろそろ街に出かけようや。 サーファーズ・パラダイス、どうやって行く?  歩いていこうか?」 長女、 「歩けっこないでしょ」 次女、 「勿論、タクシーよ」 オトーサン、 「ほんとに歩いていけないのか?」 長女、 「無理に決まってるでしょ!」 オトーサン、 「でも、タクシーなんか乗りたくないし、 ホテルのシャトルはないのか?」 長女、 「パパって、何も調べていないのね」 どうも、長女は得意の英語を駆使して コンシエルジュから取材し終えていたようです。 オトーサン、完全にバカにされています。 奥方が仲裁に入ります。 「これ使えそうよ」 「どれどれ?」 見ると、DFSギャラリアまでの 無料タクシー券です。 市内のホテルからなら、どこでも無料。 「ラッキー!」 「さすが、DFSギャラリア。 でも、こんなサービスして採算あうのかなあ」 「儲かっているから、いいのよ。 ニュージーランドのお店も、同じサービスしてたわ。 気の毒なくらい遠くのホテルだったわねえ」 「そうそう、そういえば、巨泉さんのお店も近くよ」 「OKギフトショップ?」 「そう」 オトーサン、 タクシーの車窓に流れる風景を じっと見つめます。 「このゴールドコースト、 まるでフロリダみたいだなあ」 海に面した陸地のそばが、すぐ川や運河や内海。 どの建物からも水面が見えるので、 「東洋のヴェニス」とも言われています。 「楽しそうにやっているなあ」 浜辺で水遊び、そしてバーベキュー。 奥方が盛んにシャッターを押しています。


photo:サーファース・パラダイスのビーチ

DFSギャラリアの看板が見えました。 「ありゃ、通り過ぎていく」 タクシーは、角を曲がって 屋内駐車場に入り、 その3階で停車します。 係員がでてきて、優待券をチェック。 外に出るには、 各フロアを見ていかねばなりません。 オトーサン、 「ふーん、うまく考えているなあ。 転んでもタダじゃ起きないっていうわけだ。 ようし、こうなったら絶対買ってやらないぞ」 もう午後2時半、 さすがに空腹なので、 奥方たちも店内を通りすぎます。 オトーサン、 「うわっ、まぶしいなあ」 ここは、サーファ−ス・パラダイスの中心、、 ゴールドコースト・ハイウェイと カヴィル・アヴェニューの交差点です。 真向かいには、ハード・ロックカフェ。 「おい、どこに行くの?」 娘たち、ビーチと反対方向に歩いていきます。 「お食事よ」 2分も歩かないうちに、川辺に出ました。 「ネラング川よ、 ここがマンゴーズよ!」 しゃれた石造りのレストランで、 セミ・オープンの川辺の席が気持ちよさそうです。 「メキシコでも、 こんなお店に入ったなあ、 なかなかいいお店じゃないか」 「あらっ、ランチはやってないわ」 「残念だなあ」 オトーサンたち、 すごすごと、カヴィル・アヴェニューを DFSギャラリアのほうに引き返えします。 「腹減ったなあ。 こうなったら、もう、どこでもいいじゃないか」 「そうは、いかないわよ」 「せっかく来たんだものねえ」 「でも、お腹空いたわね」 結局、探し歩く元気もなく、 ハードロック・カフェそばにあった ビアホールの2階のテラス席へ。 ビーチのそばなので、 上半身は裸、短パンで歩いている男の子や ビキニ姿の女性たちを見ろせます。 みんな日焼けして、健康そう。 何も悩みもなく、人生を謳歌しています。 ここは、亜熱帯なので冬がなく、 年間平均気温は23度という地上の楽園です。 オーストラリア第1のリゾート都市。 年間観光客数は350万人、 年率20%以上の伸びとか。 いわば、バブル。 オトーサン、 久しぶりに、 バブルの頃の日本をなつかしく思い浮けべました。 奥方、 「ここのハンバーガー、アメリカと同じね。 2人で1つでいいんじゃなーい?」 「そうね、じゃ、 ドリンクはみんな好きなもの注文して」 そう仕切った長女は、自分はビール、 ほかの3人は、コーラを注文しました。 「お前、昼間からビールか?」 「....」 「お前たち、厚化粧だなあ。 そうか、日焼けどめクリームを塗ってるのか。 ここの紫外線、東京の6、7倍だというからなあ」 「....」 「....」 ジロっと娘たちに睨まれました。 そうそう、娘たちも。もう大人。 何をしようと、カラスの勝手でしょってわけ。 「この娘たちも、いずれは結婚か」 オトーサン、 その後、女性3人は、 洋服や靴、アクセサリー、化粧品など のお買い物タイムを楽しむことでしょう、 つきあっても面白くも何ともないようなので、 早々と宣言します。 「じゃ、5時にDFSギャラリアで待ち合わようぜ」 2時間ほど、繁華街を視察しました。 「おっ、セブンーイレブンも、マクドナルドもある」 「へえ、スーパーの Woolworths もある。 アメリカでは、つぶれたのに、健在か」 大きなショピングセンターもあって、 両替店、みやげもの屋、ブランド・ショップが 多数並んでいました。 オトーサン、 ひとだかりがしている 「ヘビ使いのショー」を覗きこんだり、 人気のマンゴー・アイスクリームを食べたりして 時間をつぶしました。 買い物は、ソックス1足と ケンドーンのTシャツをDFSで買っただけ。 DFSギャラリアの1階のソファでじっと待機。 5時すこし前、 買い物袋を抱えた女性陣が戻ってまいりました。 無料バスで、一緒にホテルへ。 日本とちがって、まだ太陽の位置が高いのです。 「さあ、これから泳ぐそ!」


*5 マリーナ・ミラージュ

オトーサン、 「おいおい、どこに行くの?」 せっかく10分ほどでホテルに戻ってきたのに、 娘たちは、ロビーの反対側に歩きだします。 道路の向こうにおしゃれな建物があります。 「あのホテル、見ておかなくては」 「何っていうホテルなんだ?」 「....」 教えてもらえませんでした。 でも、これ、超豪華ホテル。


photo:パラッツォ・ヴェルサーチ

ネットには、こう出ています。 ファッションデザイナー、 ジャンニ・ヴェルサーチ。 世界中を風靡した斬新で鮮やかなデザイン、 ファションだけに止まらない彼の洗練されたセンス、 そしてアイデアを具現化するスペースを... 彼の遺志を汲んで、 妹ドナテラ・ヴェルサーチがここに実現。 クラシカル・エレガンスをテーマに 過去と現在を表現。 限りなく優雅な時を過ごすための空間、 「パラッツォ・ヴェルサーチ」 ゴールドコーストに誕生! オトーサン、 宿泊者のような顔をして、 アプローチの車止めに感心し、 ドアマンの横をぬけて、ロビーへ。 「素敵ねえ」 「でも、シェラトンのほうがいいわね」 「お茶していく?」 「夕方、ライトアップしてからにするか」 そんなことで、パス。 おしゃれな陸橋を渡って、 高級ショッピングセンター、 マリーナ・ミラージュへ。 「あら、ここも素敵ねえ」 遠くから見ると、 シドニーのオペラハウスの屋根を思わせます。 天井が帆船の3角帆のようになっていて、 中庭に立つと、陽光と風を感じることができます。 2階建てで、円形回廊のまわりに ジュエリーやアートギャラリーが配置され、 作品群に目を奪われます。 デザイナーズブランドの ファッション・ショップも数多く並んでいます。 奥に進むと、風景は一変し、 ネラング川の川幅が急に広がっています。 有名なブロードウォターです。 「ここは、内海なのかなあ」 立派なマリーナがあります。 クルーザーが数十隻と壮観です。 観光船もここから発着しているようです。 そして、対岸遠くに建物が見えます。 レストランなのでしょうか、 ショッピングセンターなのでしょうか?


photo:マリーナ・ミラージュ

オトーサン、 女性陣が、再び、買物モードに入ったので、 ホテルに帰るかどうするか迷いました。 1階に、DIVA coffee and Tea house という小ぶりなオープンカフェがあったので、 のんびりコーヒーを飲むことにしました。 「...今日はもう泳ぐのあきらめるか。 泳ぐのは明日にしよう」 カウンターの前に並んでいると、 みんなが注文するのが、カプチーノ。 一旦カップいっぱいまでついで、 その上にシナモンをまき、 さらに過ぎ足して、 コップにあふれるほどです。 「ふーん、いい仕事してるなあ。 3ドルか、まあいいか」 心変わりをしました。 ガラス容器においしそうなビスケット類が 並んでいます。 「Melting Momments か、素敵な名前だなあ」 それも注文。 オトーサン、 屋外のテーブルを確保して、 やおらカプチーノに口をつけます。 ちょっと解説をしておくと、 あまりカプチーノは好きでありません。 「うん、うまい!」 芳醇なコーヒーの香りが口一杯にひろがり、 暖かい液体が喉をうるおします。 同時に、唇に何ともいえないシナモンのほろ苦さ。 「うーん、カプチーノって、 口も、喉も、唇も、 同時に3者を満足させてくれる飲み物なんだ。 そうだったのか。 すると、これまで日本で飲んでいたあれは、 一体、何だったのだ。 はたして、カプチーノだっただろうか?」 オトーサン、 30分程のんびりしていたでしょうか、 女性陣がもどってきました。 「あらっ、雨よ」 「スコールかしら?」 「風も強いなあ」 ココナツヤシが風にゆれるのを見るのは、 なかなか風情があります。 そんなことで、陸橋を駆け足でわたり、 ホテルに戻りました。 「年間晴天日数300日というけど、 たまには、雨が降ることもあるんだ」 ウェディング・イヴの夕食は、 サーファーズ・パラダイスにある マンゴーズまで遠征するつもりでしたが、 雨天中止。 代わりに、マリーナ・ミラージュの イタリア・レストランに行きました。 雨もすぐやみました。 鏡のようにおだやかで、 光がゆれる海辺の夜景も、また格別です。 「涼しいくらいね」 「いや、このくらいがちょどいい」 「この爽やかな気候! 外国人が、日本の梅雨時の湿気には がまんできないというけど、 その気持ち、よく分かるなあ」 オトーサン、 レストランの夕食にも感激しました。 「うまいの何の!」 「何を食べてもおいしいわね」 「毎年賞をとっているんだってさ。 オーストラリアで、ナンバーワンの シーフード・ファミリー・レストランだってさ」 ご参考までに 店名を紹介させていただくと、 OMERO BROS SEAFOOD RESTAURANT。 イチオシです。 さて、 11人全員のお勘定は、 チップを1割はずんで、 440オーストラリア・ドルでした。 1豪ドルは70円として換算して3万円ほど。 オトーサン、 息子が払おうとするので 「いいよ、いいよ、今日は、おれが払う」 と久しぶりに男気を示しました。


*6 挙式の朝

オトーサン、 午前9時、 なかなか起きない奥方に声をかけます。 「おい、食事に行こうよ。 ところで、式は何時からだっけ?」 「...あなた、そんなことまで忘れたの? ...12時30分ロビー集合よ」 「ふーん、 すると、午前中はフリーか。 泳ぎに行こうかなあ。つきあうか?」 「...何言ってんのよ。 あたしたち、いろいろやることがあるのよ」 「...」 奥方は、 寝ぼけているのか、 あまりご機嫌がよろしくありません。 ホテル内のレストラン"Terras"へ。 「ここ、TDLのそばのシェラトンと おんなじつくりだ。 バイキングだというのも、 それに混んでいるのも同じだし」 案内されて席へ。 すぐそばがラグーン、青さが目にしみます。


photo:朝食風景

「おーい、ここだ!」 ちょうど息子と彼女が 階段から降りてくるのが見えました。 4人でひとつのテーブルを囲みます。 「いい天気でよかったな」 「うん、まあな」 息子は、上の空。 式の段取りのこと、朝食のことで 頭がいっぱいなのでしょう。 オトーサン、 息子たちが、 ブッフェに朝食を取りに行っている間、 奥方に話しかけます。 「まあ、よかったなあ」 「何が?」 「いや、天気がよくて」 「そうね」 「これが、もし雨だったりしてごらんよ」 「そうねぇ、ドレスも濡れるし」 「おれのほうは、祝辞のとき 雨降って地固まるなんて言って 取り繕わねばならないことになる」 「今日は、あなたの出番はないのよ」 「...」 オトーサン 息子がビュッフェから持ってきた 朝食を見て、笑います。 「ハハハ」 何と和食なのです。 それもサラダの小さなカップに ごはんを山盛り。 「このホテル、気にいったよ。 和食も用意してあるんだ。 でも、惜しいことに、お茶碗が置いてない」 奥方が聞きます。 「そのご飯おいしい?」 「うん、まあまあだよ。 タイに行ったときは、まずかった」 「ああ、タイ米ね」 と奥方。 息子が彼女に説明します。 「タイ米ってさ、 米粒が長くて、パサパサなんだよ」 「...」 彼女は、黙って頬笑んでいます。 奥方が彼女に話しかけます。 「いろいろ大変だったでしょ。 どう?ウェディング・ドレス、いいのあった?」 「それが、あまり種類がないんです。 東京で選んでくればよかった」 「そうなの?」 オトーサン、 海外挙式を計画されているかたにアドバイス。 ワタベ・ウェディングを利用する場合は ドレスの選択幅が限られます。 息子、 「そうそう忘れてた。 お父さんに頼みたいことがあるんだ」 奥方、 「何?」 息子、 「結婚証明書にサインしてほしいんだ」 奥方、 笑顔を息子に向けて 「そう、そんなものがあるのね」 オトーサン、 今日は、どうやら たいしたオレの出番はなさそうだなあと つくづく思いました。


*7 パパラッチ

オトーサン、 集合時間が迫ってきて、 ひとり、部屋でアタフタ。 挙式の模様を撮ろうと持ってきたビデオカメラを チェックしたら、写らないのです。 「変だなあ」 バッテリーが上がっていたのです。 「せっかく、このために わざわざ重いものをもってきたのになあ」 そう思っても後の祭り。 直ちに、充電をはじめてみましたが、 15分やそこらでは、とても無理。 「いいや、あきらめよう」 12時30分にロビーへ。 全員集合しています。 新郎はグレイのタキシードで、てれ笑い。 花嫁は、ワタベ手配の簡素なウェディング・ドレス。 まあ、お似合いでしょう。 ところが、 わが女性陣に目をやると、 「えっ」 忘れかけていた驚きが待っていました。 「お、お前?誰だ? お前たち、何という格好を!」 朝食後、奥方が、 「あたしたち、これから忙しいのよ」 と言っていたわけが分かりました。 「そうか、変身していたんだ!」 別に、ゴキブリや仮面ライダーに 変身していたわけではないのですが、 そのくらい驚きました。 奥方ときたら、 白づくめ。白い帽子、白いドレス。 そして白い薄物のベールを肩にかけています。 次女の髪型は、何と形容すべきでしょうか。 カラスが巣づくりに失敗したかのようです。 こちらは紫色の薄物を肩にかけています。 まあ、まともなのは、長女。 それでも、ケバイお化粧をしています。 対照的なのが彼女の母親で、 年相応の地味なドレスを身につけています。 ワタベ・ウエディングの若い女性 (以下、ワタベ)は、ピンクの制服姿。 こちらは、いかにも 「今日はお仕事ですわ」という感じ。 オトーサン、 慨嘆します。 「これじゃぁ、 まるで、 オレが... 芸能人をひそかに飼っていたみたいじゃないか。 ...今日のこの日のために」 息子と彼女は、 豪華なリムジンに乗り込みます。 ボデーカラーは白、 ボンネットの先端に花嫁人形がつき、 白いヴェールが車体後部方向になびいています。 オトーサンたち、 残りのメンバーは、乗り合いのバンに。 大分、格下ですが、今日は仕方ありません。 10分ほどで教会へ。 車中、挙式を行うのが、 St,Margaret Churchという名前であることを 思い出しました。 どちらの方角に走ったのでしょうか、 10分ほどで運河のそばに 小さな教会が見えてきました。


photo:海辺の教会

オトーサン、 「ちょっとイメージとちがうなぁ」 パンフレットのイメージでは、 青い海と芝生と教会だけですが、 ひろびろしたアスファルトの駐車場、 運河の向うには高層ビル、 俗世間のイメージがたっぷり。 イメージ通りの教会で挙式したいなら それこそ、グレート・バリア・リーフの 珊瑚礁の島でも探さなければならないのでしょう。 オトーサン、 「おお!」 先に走っていったはずの 新郎・新婦をのせたリムジンが到着。 ワタベウェディングの女性が 赤い絨毯を鋪道に引きます。 「うーん、なかなか演出するなあ」 ついでに、後輪のタイヤに白いカバーも。 オトーサン、 そんな場合ではないのですが、 好奇心を押さえ切れなくなって ワタベに聞きます。 「それ何のためですか?」 「あの、ドレスが汚れないためです」 「なーんだ、営業上の理由か」 オトーサン、 新郎・新婦を撮ろうと、 後ろに下がります。 そして、見てはいけない風景を見て、 思わずパチリ。


photo:パパラッチ

オトーサン、 「おお、神よ、異教徒の心なき業を許したまえ」 そう牧師さんが祈っているような気がしました。 抑えられぬ好奇心、 決定的瞬間を残しておこうという気持ち、 新郎・新婦の旅立ちを祝う気持ち、 それに偽りはないでしょうが...、 「おお。神よ、許したまえ」 オトーサン、 それでも、 流石に教会のなかでは撮影禁止となっているので 安心しました。 異教徒がクリスマスを祝う、 異教徒が教会で挙式する ワタベなる商業資本が教会を利用する 牧師さんもそれに一役買う 考えてみれば、不思議なことです。 オトーサン、 牧師さんの言葉、 新郎・新婦の誓詞 キス、 指輪の交換 ととどこおりなく終わって一安心。 ぼくとつな感じのおばさんが弾いてくれる オルガンの結婚行進曲演奏もよかったですが、 牧師さんの新郎・新婦へのはなむけの言葉が とくに身にしみました。 「ふたりが死の床につくまで、 お互いを敬愛しあうように誓いますか?」 という趣旨のようでしたが、 一箇所だけ気になるところがありました。 「今日のセレモニーにようこそ」 Welcome to the ceremony of this church today これが原文なのでしょうが、 オージー英語では、、 "today" のところが "to die" という発音になるのです。 オトーサン、 「おお、結婚とは死の準備か、 子供を残してむなしく死んでいく、 この世のならい。...うん、当たっているかも」 そんなバチあたりのことを考えたせいでしょうか 一天俄かにかき曇り、激しい雨が降ってきました。 教会の窓の多くはステンドグラスなのですが、 素通しの窓にを大粒の雨が叩きつけています。 さあ、式が終わって、 屋外で専属カメラマンによる撮影という段取りの はずですが、突然の雨。 ワタベとカメラマンは急に忙しくなります。 ドレスが濡れない場所はないか。 人数分の傘の手当てなど...、 リムジンの運転手やエレクトーンおばさんも 加勢して、動きが急になります。 「では、裏口から出ましょうか」 オトーサン、 また、バカな考えが浮かびます。 「裏口入学という言葉は聴いたことがあるけど、 裏口結婚式とはなあ」 そこで率先して裏口から出ていって 掌をかざして雨滴を測定します。 「うん、これならだいじょうぶかも」 ワタベ、 「そうですね。あの大きな木の下で撮影しましょう」 参列者の誘導におおわらわです。 オトーサン、 ワタベにいいます。 「傘はもう必要ないかも」 ほんとうに不思議です。 まるでディズニーランドみたいに、 雨がさっとやみました。 新緑のように木々が生き返ります。 芝生も水滴がキラキラ輝いています。


photo:アフターウェディング

オトーサン、 「雨降って地固まる。 パパラッチ騒動もあったけど、 まあ、これでよかったのかも。 息子もこれで人並みの人生を送れる。 よかった、よかった。 日が下に新しきことなしだ。 ”Rien de nouveau sous le soleil” なお、教会については、以下のサイトをどうぞ。 http://www.mwt.co.jp/overseas/wedding/ aus_new/saint_margret.shtml


*8 コアラを抱きたい!

オトーサン、 出発前に内心こう思っていました。 「オーストラリアなんか行きたくないなあ。 以前、シドニーやメルボルンに行ったけど、 たいして面白くなかった」 でも、奥方が目を輝かせて 「あたし、オーストラリアに行ったら、 コアラを抱きたい!」 娘も、 「そうよ、絶対、動物園に行くわ。 コアラの抱けるところ調べておいて」 オトーサン、 インターネットで調べてみました。 「あるある!コアラのいいHPが」 ・コアラのすべて(豪コアラ財団)  http://www.savethekoala.com/jpkoala.html    コアラの歴史  コアラはどんな姿  コアラの一生  コアラ間のコミュニケーション  コアラの常食と消化  コアラはどこに住んでいる?  現在何頭いるのか?  コアラの住まい  コアラの生息地で何が起こっているのか?  コアラの木など ・ローン・パイン・コアラ保護区  http://www.koala.net/japan/lp_main.htm  園内案内  ローンパインの歴史  オーストラリアの動物たち オトーサン、 勉強しているうちに、 心変わりしてきました。 「そうだな、一度くらい、 コアラ抱っこ体験をしても、いいかも」 さて、翌朝9時に出発。 ロビーに総員11名がそろいました。 みんな式も終わって遠足気分です。 長女が手配してくれた 白い車体にMURRAYと社名がはいっている マイクロバスが待っています。 長女 「ローンパインに行くことにしたわよ。 カランビン(Currumbin Sanctuary)はやめて。 ..パパのカードで払っといたからね」 「...そうか、 オレの言うとおりにしたかわりに オレのおごりってわけか」 実は、一昨日、 到着早々、ちよっとモメました。 近ツーのガイドさん 「あさってのご予定ですが、 コアラをご観になりたいのだったら カランビンのツアーがいいですよ。 ホテルから30分くらいで行けますし」 オトーサン、 「コアラなら、ローンパインだよ」 長女 「でも、時間がもったいないわよ。 1時間以上かかるしさ」 近ツー 「1時間半はかかりますよ。 それにまたブリスベーンに戻ることになりますし」 長女 「カランビンでも、コアラは抱けるんでしょ?」 近ツー 「そうですよ」 次女 「じゃ、カランビンにしようよ」 オトーサン、 近ツーに向かって、 「そりゃぁ、君の立場は分かるよ。 オプショナルツアーは儲かるからなあ。 でも、コアラなら絶対にローンパインでなけりゃ。 どうして、オプショナル・ツアーに入れてないの?」 近ツー 「JTBさんのには、入っているんですけどね」 オトーサン、 「そうだろうなあ」 長女 「...じゃ、後でご連絡します」 そんなことで話しあいは、物別れになりました。 どうやら長女は、その後、コンシェルジュに相談し、 ローン・パインとブリスベーン観光を 組み合わせれば、わざわざ遠方にいく価値がある、 また、近ツーに頼むよりも、自分で手配したほうが 費用が安くすむと判断したようです。 近ツーには気の毒でしたが、 これは正解でした。 オトーサン、 車窓から4車線のハイウエーを流れる 雄大な景色をビデオカメラに収めております。 奥方、 「ビデオカメラ持ってきてたの?」 オトーサン、 「うん、昨夜充電した」 奥方、 「結婚式、撮らなかったの?」 オトーサン、 「バッテリーを充電していなかった」 次女、 「パパって、いつもそうなんだから。 アラスカの氷河が落ちる瞬間も撮りそこなったし」 奥方、 「この前のホェール・ウォッチングの時は、 持っていかなかったのよ」 次女 「あはは」 オトーサン、 非難の嵐を避けるために、 撮影に専念します。 広大な片側4車線のハイウェーは、 アメリカと同じく通行料はタダ。 速度はキロ表示で、 制限速度は最高で110キロでした。 日本とおなじ左側通行、 「運転しやすそうだなあ」 違いは、樹木がユーカリが多いこと。 カンガルーの飛び出し注意のマークもあります。 防音壁が木板というのは 「これなら費用が安くつくかも」 間伐材の有効利用にもなるし、 道路公団や林野庁が参考にしてほしいものです。 走っているクルマで多いのは、 GM、フォード、日本車の順ですが、 韓国車が健闘しているので驚きました。 ミニ・トレーラーを牽引している乗用車も 目立ちました。 「あれなら、荷物が多くても大丈夫だな」


photo:次女になついた子

木々の梢が道路を覆う 緑の多い道路に入ってしばらく走ると ローンパイン・コアラ保護区に到着。 「10時15分か。、 思ったより早くついたなあ」 「...」 オトーサン、 周囲を見回します。 みんなぐっすり眠っています。 どうやら長旅の疲れのようです。


*9 ローンパイン・コアラ保護区

オトーサン、 窓口の行列をみて 「すごい人気なんだ」 日本人が多そうですが、 あるいは、中国人かも知れません。 最近の中国人は、おしゃれになって 服装だけでは見分けがつきません。 オトーサン、 「さあ、みなさん、 空港でもらった小冊子を出してください」 入園料15ドルが2割引きなのです。 長女が窓口で面倒な交渉をやってくれました。 「こういうとき、英語がしゃべるひとがいると 便利だなあ」 入園するとすぐ檻のなかの木陰に 「何だろうなあ」 小型のカンガルーがいました。 「ワラビーっていうんだってさ」 首の青い大きな鳥もいました。 「孔雀の一種かなあ?」 コアラが気になるので、 きちんと見ないで通過しましたが、 あとで調べると、何とエミューでした。 「もっとよく見ておけばよかったなあ」 前方、森のなかには、 木製デッキの道が続いています。 「Go! Go! Let's 豪! いそげ、いそげ、コアラをみよう」 100mほど行くと、 コアラ王国。 「おお、いるいる!」 「どこどこ?」 「ほら、あのユーカリの木影!」 「あら、ほんと」 「あそこにもいる!」 「あら、木につかまって眠っているわ」 そんなわけで無事対面を果たしました。 夜行性なので、昼間は寝ていて、 身じろぎもしません。 目もあけてくれません。


photo:コアラ

オトーサン、 また先頭に立っていそぎます。 何しろ、ここは広そうだし、 あとのスケジュールがつまっているので、 2時間程で、見終えなければなりません。 娘たち、2時にはサーファース・パラダイスに戻って お買い物がしたいようです。 オトーサン、 「おお、カンガルーだ!」 「あらっ、人間も柵のなかに入ってる!」 「入っていいのかしらね」 「いいんじゃないの」 ということで、広い芝生のカンガルー保護区へ。 「わぁー、いっぱいいる!」 「近づいても、こわくないかしら」 「だいじょうぶそうよ」 みんな夢中でカンガルーを撮りまくりました。 タイ式ボクシングのように ノックアウトされずにすみました。 それどころか、近づいていくと、 カンガルー、いやがって逃げるのです。 「あら、跳んでる!」 それが面白いので、 子供だけでなく、わが新郎までが 一緒になって追いかけまわしていました。 「おまえ、ここカンガルー保護区だぜ」 息子、反省して、 「思わず童心に帰ってしまったなあ」


photo:おびえるカンガルー

オトーサン、 「おっ、コアラが抱っこできるぞ!」 「どこどこ?」 「ほら、みんなが行列しているだろう」 「あら、有料なの?」 「大人ひとり10豪ドルか」 レンジャーのお姉さんたちがいて、 椅子に座ると、 抱いていたコアラを そっと腕の中に置いてくれるのです。 そして、もうひとりが撮影係。 後で撮った写真をもらえます。 希望すれば、メールでの追加発送も 行っているようです。 念のために、記載すると、 オトーサンたちの写真は、 send photo:28120634 to photo@koala.net で入手できるそうですが、 「本当かなあ」 見ていると、 コアラ抱っこ式は、あっという間に終わります。 何人かに抱かせると、 別のコアラに交代するのです。 オトーサン、 「どうする?全員抱っこする?」 「勿体ないから、ペアで抱きましょうよ」 そんなことで、息子夫婦、娘2人、 そして、オトーサンと奥方というように 何組かに分かれました。 「どうだった?抱き心地」 すぐに自分の番になるのに、取材してしまいます。 「けっこう重かったわよ」 ご満悦です。 次女、 先遣隊の様子を見て、 「やっぱり、ひとりづつ抱っこするわ」 息子、 「ウチもそうしよう」 結局、全員が10豪ドル払う羽目になりました。 「あなた、どうする?」 「いや、おれはやめとくよ」 オトーサン、 天邪鬼ですから、土壇場になって辞退。 奥方が抱くコアラの背中を撫でるだけにしました。 「おお、毛皮がやわらかいなあ」 さて、全員が無事撮影終了。 「そうか、ここがコアラの在庫置き場だったんだ」 「いえてるわね。在庫置き場って」 撮影場所 (Koala Cudding) のとなりに、 やはりコアラの柵があって、 ユーカリの木が10本くらいあり、 それぞれにコアラがとまっているのです。 それをレンジャーのお姉さんたちが、 代わる代わる撮影場所に持ってくるというわけ。 長女、 「みなさん、先を急ぎましょう!」 時計を見ると、もう12時10分前。 時間があっという間に経過しました。 このほか、 Kindy Boys Young Ladies Bachelor Pad Old Folks というように、 各世代のコアラ・コーナーがあるのです。 息子、 「ここ、コアラだらけだ。 もうコアラ見飽きた。 ほかに面白い生き物ないの?」 「ぜいたくなこというなあ。 コアラは絶滅の危機にさらされているんだよ」 「どうして?」 「森が減っているし、犬に食べられるわ、 クルマに轢かれるわ、気の毒なもんだ。 130匹もいるのは、世界でここだけなんだぜ」 「へえ、そうなの」 オトーサン、 「じゃ、タスマニア・デビルだけ見て終わろう」 「それって、なに?」 「行けば分かるよ」


photo:タスマニア・デビル

このデビル(悪魔くん)、 この写真の印象では凶暴ですが、 実際はなかなかの愛嬌者で、 体型も仕草も子豚の赤ん坊みたい。 檻のなかの同じコースを飽きずに とことこと回っています。 奥方、 「あらっ、これも撮れない!」 このデビルくん、すばしっこいので、 シャッターを押した頃には、 もう別のところに行っているのです。 長女、 「みなさん、早くして。 運転手さんと約束した時間が来たわよ」 オトーサン、 「みやげもの買う時間だけ延長できない?」 長女 「だめ。あとの市内観光カットするわよ」 オトーサン、 「おれ、運転手さんに直接交渉してくる!」 そんなことで、10分だけ延長。 みんなコアラの大小さまざまのぬいぐるみを 買っていました。 オトーサン、 "Wildlfe AUSTRALIA"という写真集を買いました。 上記のコアラとデビルの写真は、ここから。 「だって、自分が写したのがあるんじゃないの?」 「うん、ビデオカメラでバッチリ!」 「なんで、ないの?」 「うん、...間違って消しちゃったんだ」 「パパってダメねえ」 実は、ほかの場所を撮影したとき、 巻き戻して見ていたのをすっかり忘れて そのまま上書きしてしまったのです。 だから、カンガルーもコアラも デビルも一切消えていました。 オトーサンたち、 この後、定番観光コースらしい マウント・クーサの展望台から オールトラリア第3の都市、 クイーンズランド州の州都でもある ブリスベーンの市街を遠望し、 もう1ケ所、 運転手のジムさんの たってのお薦めとかで、 ブリスベーン川の展望台にも行きました。 「こりゃぁ、いい景色だ。 ここも住みやすそうなところだなあ」


photo:ブリスベーン川


*10 カード紛失事件

オトーサン、 「腹減ったぁ」 この発言に、みなが賛成したのをみると、 いくらしっかりホテルで朝食をとっても 人間の体は、午後2時過ぎになれば、 空腹になるように設計されているのでしょう。 「今朝のルーム・サービス、 すごい分量だったわね」 「あたし、勿体ないけど食べ残したわ」 「...」 オトーサン、 黙っています。 どうやら食べ残したフルーツを ビニール袋に入れて持ってきているのは、 オトーサンだけのようです。 「日本人は、みんな贅沢になったなあ。  そのうち罰が当たるぞ。  ...そうか。もう当たっているか」 オトーサン、 「それじゃ、 その辺のフードコートに行って、 食事してから解散としましょう。 後は自由行動。 それで、いいでしょうか?」 「賛成」 「異議なーし」 「安上がりだし、いいわ」 このサーファーズ・パラダイス、 オーストラリアは多民族国家だけあって あちこちにフードコートがあります。 中華料理、 タイ料理、 インド料理、 トルコのケバブ、 ハンバーガー、 フライドチキン、 クレープ 日本料理(寿司) オトーサンは、 トムヤンクン・スープのラーメン、 娘たちは、タイ式チャーハン。 奥方は、タイ料理がキライなので 「あたし、クレープにしたわ。 でも、中にはお肉が入っているのよ」 「ゴホ、ゴホン、ゴホン」 これは、オトーサンの咳です。 「はじめのうちは、 たいしたことないと思っていたけど、 これやっぱり、辛いわぁ」 オトーサン、 これからお買い物という女性陣と別行動。 「さて、どうするか。 ホテルに帰ってひと泳ぎするか? そうか、4時のバスまで時間があるな。 じゃ、巨泉さんのお店にでも行くか」 ウロウロしました。 だいていは、DFSギャラリアのそばに 大きな店を構えているのです。 ところが、このゴールドコ−スト店は、例外。 ちょっと外れた目立たないお店でした。 近ツーがくれた無料券でスリッパをもらい、 申しわけないので、ボールペンを1本買いました。 10豪ドルでした。 「70円でスリッパを買ったようなものだ。 これじゃあ、巨泉さん、儲からないな」 オトーサン、 すぐに買い物が終わって時計を見ると、 まだ30分ほど残っています。 「じゃあ、Woolworths でも覗いてみるか」 DFSギャレリアの向かいの パラダイスゼンターの地下にありました。 「うわっ、混んでる。  それに、汚らしい!  入るのやーめた」 アメリカで、Woolworths の閉店間際の 商品が散らかり放題の店を見たので、 その悪印象もあって、敬遠しました。 考えてみれば、 土曜日の夕方は、一番混む時間帯でした。 オトーサン、 「あと20分あるな。 どうしよう? そうか、少しは、DFSギャラリアで 買ってあげなきゃなぁ。 着替えも少ないことだし」 てなことで、定番のみやげもの、 ケン・ドーンのTシャツをもう1着、 自分用に購入しようとしました。 20豪ドルです。 「キャッシュにしようか、 両替した現金も少なくなってきたから、、 カードで払おうか。 でも、たった20豪ドルでカードというのもなあ」 そのうち買い物自体が面倒になってきました。 「オレって、物買わなくなったなあ」 オトーサン、 時間があまったので、 街をぶらぶら。 不動産屋が目立ちます。


photo:物件一覧

「3ベッドルームで、17万9500豪ドルか。 7掛けして、1260万円。安いなあ。 でも、現物をみなければ分からないけど」 インターネット・カフェも覗きました。 満員です。 「1時間で3豪ドルか。安いなあ」 オトーサン、 4時のバスに乗りました。 乗客は数人。 この時間にホテルに帰る人は少ないのです。 バスのなかで、鞄を見ると、 「あっ、カードがない!」 パスポートや航空券はセーフティ・ボックスに 入れていますから安心。 カードを1枚だけ持ち歩いていたのです。 「おかしいなあ。 もしかしたら、紛失したのかも、 それとも、コアラに夢中になっていたときに、 盗まれたのかも。 あるいは、フードコートか。 いや、人混みを歩いているときだろう」 バスの車窓を流れる風景が もう目に入らなくなりました。 オトーサン、 ホテルの部屋に戻ります。 すぐ、カード探しをはじめます。 もう一度鞄のポケットを隅々までチェック。 「...ない」 NYでの財布盗難事件が頭をよぎります。 「ソーホーだった」 レストランで払おうとしたら、 財布がないのに気づいたのです。 すぐにアルマーニXだと分かりました。 ドーンと人に当たられたことを思い出しました。 背中のリュックから財布を盗んだのでしょう。 「あの時は、助かったなあ」 すぐに、長女がカード会社に連絡してくれました。 「あの時は、手帳にカード番号を控えてあったけど、 今回は、忘れた。...こりゃ、まずいなあ」 オトーサン、 冷や汗が出てきました。 自分の手が震えているのが分かりす。 「あった!」 昨日着た背広のポケットに入っていました。 ディナーで払ったとき、話に夢中で つい鞄のポケットでなく、 背広のポケットにしまったのでしょう。 「あー、よかった」 もう泳ぎに行く気力も失せて、 ベッドに倒れ伏してしまいました。


*11 真夏の夜は心も冷える

オトーサン、 ぐっすり寝ていました。 「ねえ、あなた、起きて!」 奥方の声ですが、聞こえないふりをしていました。 「ねぇ、あの娘たちが泳ぎに行きたいって。 付き合ってあげたら」 オトーサン、 飛び起きます。 「いま、何時だ?」 「6時よ」 娘が一緒に泳ごうなんて、 こんないい機会を逃すことはありません。 いそいそと起きて、水着に着替えます。 「部屋からパンツで行くこともないでしょう」 オトーサン、 「あいつら、何、やってるんだろう。 ちっともこないなあ」 「支度に手間どっているんでしょう」 30分経過。 たまらず部屋に電話をします。 「いつ頃、泳ぎに行くんだ?」 「行くけど、パパたちとは別行動よ」 「でも、ママがそう言っていたぜ」 「そんなこと言わないわよ」 電話を切って、 「おい、一緒には行かないとさ」 「じゃ、あたしの聞きちがいかしら」 娘たちにふられて、奥方が急に元気を失います。 しばらくして、 「...じゃ、あなただけプールに泳ぎに行ったら。 あたし、ひとりでビーチを散歩してくる」 「それじゃ、オレもつきあうよ」 オトーサン、 そんなことで、泳ぎは断念して、 2人でホテルの目の前のビーチに出ました。 「いい景色だなあ」 「でも、さびしい景色ね」 たしかに、人影もまばらです。 数え方で変わってくるのでしょうが、 最大70キロの南太平洋に面した白砂のビーチに、 ほとんどひとがいないと、確かにさびしい感じです。 「ここ泳げないのよねぇ」 「サーファーには楽園だろうけれど、 オレみたいなスイマーには地獄だよなあ、 目の前に海があるのに泳げないなんて」 引き波が強いので、すぐ沖までさらわれるそうです。 「まあ、さらわれても、監視所から すぐにライフセイバーが救助に駆けつけるから、 死者は、ひとりもいないと言ってたなあ」 「誰が?」 「ガイドさんだよ。 さては、バスのなかで寝てたな」 「...いい砂ねえ。サラサラしている」 「泣き砂と言ってたなあ」 「泣き声はしないけど、それに近い感じがするわ」 オトーサン、 「それじゃ、ホテルに戻るか? 喉が渇いたから、何か飲むか?」 「..うん」 お目当てのラグーン・プ−ルのバーは、 もうクローズドしていました。 「それじゃ、ここに座るか」 サンデッキを倒して寝そべります。 「いい景色ね」 ココナツヤシが夕日に輝いています。 青いラグーンの水面に夕日が反射しています。 「いい気持ちだなあ」 しばらくして、夕日が沈むと、 急速に冷えてきました。 「寒いわね」 「寒いってほどじゃないけど、 そろそろ部屋に戻るか」 「そうね」 オトーサン、 「軽く夕食を食べに行くか」 「あたし、あまり食欲ないわ。 ..、でも、マクドナルドくらいなら 付き合ってもいいわ」 「よし、それじゃ、 マリーナ・ミラージュに行こう」 マクドナルドは混んでいて、敬遠し、 海辺のレストランに向かいます。 「ここにしょう」 「...」 奥方、 元気がありません。 「何にしようか?」 メニューを見せても、気が乗らない様子です。 疲れたのでしょう。 息子が片づいたのはいとしても、 家を巣立っていきますし、 長女は、NYで海外暮らし。 次女は、まだ一緒に暮らしていますが、 仕事に夢中で、話すヒマもないし,,, 息子の結婚でひと安心という思いとともに、 虚脱感もあるのでしょう。 オトーサン、 快活にワインを注文します。 「ピノ・ノワール レッド」 「ボトルを頼んだの? ...あたし、飲まないわよ」 「今夜は、久しぶりに、 しっかり飲みたいんだ。 それに、地元のワインは安いんだぜ」 昨日、アフターウェディング・デイナ−で 奮発したフランスワインは、 200豪ドルもしましたが、 いま注文したのは、30豪ドルですから、 2000円ぐらいのもの。 それに、奥方には話していませんが、 カードが出てきたのですから、 そのお祝いでもあります。 オトーサンたちのテーブルは, マリーナの正面、 クルーザーの発着所のすぐそば。 夜景のなかで、Water Tour の看板が目立ちます。 レストランのテントを彩るイルミネーションが 風にゆれています。 「ここ若い人たちが多いな」 「...」 「こちらのひとって、集まって騒ぐのが 好きなみたいだなあ」 いわゆるサタディナイト・フィーバーでしょうか。 注文したサラダ1皿とパスタがきました。 奥方は、手をつけません。 夜が更けていくにつれて どんどんお客がやってきて、ほぼ満席状態。 若い歌手のペアがやってきました。 手を振っているとこをを見ると、 常連さんもいるのでしょう。 オトーサン、 「若いひとたちって、いいなあ」 「...」 カップルが踊りはじめます。 若い男のほうは、頑強で禿げ頭、 女性は、肌を大きく肩まで露出したドレス。 日焼けが目立ちます。 "Killing me softly"といいう甘い歌声が リズミカルです。 踊るカップルが次第に増えていきます。 オトーサン、 いい気持ちになってきました。 「もう3杯目よ」 という奥方の声が遠くに聞こえます。 話し声、サウンドが、いい感じにミックスして、 陶然となりました。 「もう帰りましょうよ、 ...あたし、寒くなってきた」 息子に去られてさびしい、 しかもあまり食べす、飲んでもいない 奥方にとって、真夏の夜の風は、 とても冷たく感じられるようです。 この夜のデイナーのお勘定は、 80豪ドル、約5600円でした。 まあ、お安いのではないでしょうか。


*12 へぇ、さんまが?

オトーサン、 すでにご紹介しましたが、 到着早々、サーファーズ・パラダイスを 見学に行きました。 「おい、あるぜ」 「何が?」 「ダックス・ツアーだよ」 「?」 「ほら、あのボストンで乗りそこなった」 「あらっ、こんなところでもやってるのね!」 「今度は、乗らなくてはなぁ」 オトーサンたち、 この夏、ボストン名物 「ダックスツアー」に参加できませんでした。 これは、水陸両用車「あひる号」に乗って ボストンを陸上とチャールス・リバーの 両方から楽しもうというもので、 バスによる市内観光とは一味変わっているので、 人気のツアーです。 「ボストンに行ったら絶対乗ろうな」 「そうよ、あれに乗らなきゃ」 と張り切っていたのですが、 残念ながら、予約でいっぱいでした。 その名物ツアーが、 何とゴールドコーストあったのです。 しかも、ここでは、陸上と、川ではなく海と その両方を楽しめるのです。 「すぐ予約をしておこう」 「そうね」 と言い合っていたのですが、 買い物や挙式の忙しさで、すっかり忘れていました。 翌朝9時、 ホテルの朝食をとりにテラスに行くと、 娘たちに会いました。 「パパ、今日はダックスツアーに 一緒に行こうね」 長女が言ってくれます。 昨日振られて、シュンとしていた オトーサンには、朗報。 「うん、行こう、行こう!」 急に、元気になりました。 「でも、いまから予約できるかしらね」 「大丈夫よ、12時15分のを予約しといたから」 オトーサン、 内心ニンマリ、つぶやいています。 「老人が持つべきものは、 1にお金、2に伴侶、3によい通訳だ」 娘たち、 タクシーを呼びます。 「何で、無料券を使わないの?」 「ちょっと寄っていくところがあるのよ」 「どこへ?」 「....」 意地悪な娘に代わって、 奥方がフォローしてくれます。 「ルアーですって」 「ルアー?釣り道具?何でまたそんなものを?」 「あの子はやらないけれど、 お友達に頼まれたんですって」 「そうか、ゴールドコーストは、 釣りをやるひとには、天国だものなあ。 何でも、海辺の家の窓から釣り竿を出すと 入れ食い状態だそうだ」 長女、 「ホント?」 「昔、そんな話を聞いたことがある」 「誰に?」 「昔、オーストラリアに来たとき、駐在員から」 「へぇ、パパ、ここに来たことあるの?」 「いや、シドニーとメルボルンだけだった」 「そうなの、知らなかった」 オトーサン、 「ふーん、英語が出来るといいなあ」 長女が、NYから来たというと、 「また、英語もしゃべれん連中か」と 無口だった運転手が、 にわかに興味を示し、質問攻めにしているのです。 「定年後、ここらの英語学校に通おうか」 オトーサン、 いんちき英語を駆使します。 「Hey! 釣り道具店はどこ?」 「Oh! 忘れていた」 こちらの運転手は、ノンビリしたものです。 おまけに地理も不案内。 ようやく店を探し当て、 娘たちがお店に飛び込んでいって、 ルアーを買ってきました。 「どれどれ。ふーん」 それ以上の発言は差し控えました。 ふーんの意味は、 「日本でも買えそうなやつだ。 いくら英語が得意でも、釣りを知らなきゃ、 いい買い物はできんわなあ」 釣り人は、道具にウルサイもんなのです。 12時前、ANAへ。 正確に言うと、ANA hotel Gold Coast サーファーズ・パラダイスの中心にあります。 その2階に近ツーのツアーデスク。 ここで、ダックスツアーのチケットと お値打ちエステの申し込みをしているようです。 オトーサン、 ヒマなので、居合わせた近ツーの 若いガイドの男の子とおしゃべりをはじめます。 「うちの娘、近ツーにいたんだ」 「へぇ、そうですか」 日本は、企業社会なので、この一言で、 一挙に、かれとの距離縮小に成功しました。 アパートの家賃が8万円、 3人でシェアして3万円を払い、 クルマも乗せてもらっている。 お金は溜まるけど、 忙しくて遊べないとのことでした。 長女、 「さあ、終わったよ、急ぎましょう」 ダックス・ツアーの乗り場へ。 ところが、なかなか乗り場が分かりません。 ビーチ沿いでした。 あひる号がくるまでの 時間つぶしに話題を提供。 「ねえ、さんまさんがさっき到着したとさ」 奥方、 「へえ。どこで聞いたの?」 「ついさっき、近ツーのガイドから」 長女、 「ここでは、そんなことが話題なんだね。 NYじゃ、そんなこと話題にもならない。 大勢有名なひとがくるから」 まあ、NYからみれば、 ここは「ド」がつく田舎なのでしょう。 何しろ人口は30万人しかいないのです。


photo:あひる号

オトーサン、 「あっ、やってきた!」


*13 グワッ、 愉快なダックス・ツワー

オトーサン、 乗り場に大勢並んでいます。 世界中から観光客がきますから、 インド人の家族もいます。 「おお!大人気なんだ」 あひる号が到着。 あひるの黄色いくちばしが開くと、 タラップが降りてきて、乗客が降りてきます。 「ふーん、そうか、そういうことか、 高い位置になっているんだ」 水陸両用車ですから、当然、海に入ります。 すると、普通のクルマやバスのような位置に ドアをつくると、水が侵入してきます。 高い位置にしておけば、水は入ってきません。 その代わり、航空機のようなタラップが 必要になるのです。 オトーサン、 「のんびりやっとるなあ」 乗り降りに手間どっているのです。 今日の気温は、29度。 真夏の太陽がギーラギーラ、 待っている間に、体が熱くなってきて、 薄着なのに、もう汗ばんでいます。 「そうか、相席ではないんだ」 ステュワーデスさんが、 待っている乗客、それぞれのグループの 人数を確認し、いちいち席に案内するために 何度もタラップを乗り降りしているのです。 「そうか、ここはオーストラリア、 オージーの国、万事のんびりなんだ」 そう思い直してはみたものの、 どうみても、待っているひとと 乗車定員のギャップが大きすぎます。 オトーサン、 「こりゃ、おれたち、乗れないかも」 「...」 奥方も、娘たちも、 「キャーッ、可愛い! あひるちゃんの前でお写真撮ろう!」 なーんて言っちゃって、返事もしてくれません。 「あ! あっ、あーあ」 あひる号は、出ていってしまいました。 去り際にステュワーデスさんが、 乗れなかったひとたちに何か言っていましたが、 早口の英語なので、聞きとれませんでした。 オトーサン、 たまりかねて、長女に救いを求めます。 「おい、何って言ってた?」 「もう1台くるって」 こんな簡単な英語すら聞きとれなかったの? という表情を浮かべています。 「...くやしいなあ。 英語に堪能でないと、 娘にまでバカにされるんだ。 やっぱり、短期留学でもいいから、 語学学校にでも通うか」 オトーサン、 あひる号に置き去りにされ、 そのうえ、娘にまで相手にされず、 頭に血がのぼりかけてまいりましたが、 「あっ、来た!来た!」 すぐに2台目がやってきました。 オトーサン、 ステュワーデスさんの にこやかな応対や 乗り込んでくる家族連れの ウキウキした遠足気分に囲まれて すぐに、いい気分になりました。 しかもステゥワーデスさん、 みんなに出発する合図を合唱させます。 「グワッ、グワッ、グワッ!」 「あは、は、は、は」 子供たちの黄色い声もまざって 乗客みんなが大笑い。 しかも、 2台目にまわされたおかげで 空席もあるのです。 ゴトゴトゴトゴト,,,,出発進行! このあひる号、相当ゆれます。 はっきり言って乗り心地がよくないのです。 ビデオカメラで、 サーファーズ・パラダイスの ビーチ風景を撮っていて、 それを痛感しました。 画面がいちじるしくぶれるのです。 「おい、席を代わってくれ」 「いやよ、あたしだって マリーナ・ミラージュの写真撮るんだから」 オトーサン、 「おお、シーワールドだ!」 ビーチと反対側の道路沿い。 早速、席を移動。 このシーワールド、 イルカのジャンプが見られるとのこと。 サンディエゴの本場の Sea World からすると 2番煎じかも知れません。 奥方の横に戻ります。 「...いそがしいひとねぇ」 言われた途端にまた席を立ちます。 「だって、海に入るんだぜ」 「あらっ、そう?」 奥方も英語が不自由な方ですから、 英語のアナウンスは聞きとれなかったようです。 あひる号が、どんどん左折して、 ビーチに続く駐車場のほうに向かっています。 ステュワーデスさん、 " ONE! TWO! THREE!" 乗客全員が大声をあげて 「ワン!、ツー!、スリー!」 「ドーン」 これは、あひる号が勢いよく 海に入ったときの音。 すごい波しぶきが、窓にかかります。 「ウォーツ!」 大歓声です。 オトーサン、 夢中になって、海への突入シーンを撮影、 その後は、海上から見える景色を じっくり腰をすえて撮影しました。 海の向こうに高層ビルが林立している風景、 どこか既視感があります。 「そうだ。 自由の女神からNYを見た景色にそっくりだ」 クルージング中は、 カメラは陸上ほどぶれませんでした。 「いいなあ、ここの若いひとたち、 青春を謳歌しているよなぁ。 それに比べると、 日本の若いひとは気の毒だ。 アクセク、アクセアク、働きバチで一生終わる。 こんな素敵な暮らし方、 自分でその気になりさえすれば、手に入るのに、 それすら知らないんだから」


*14 海辺の豪邸

オトーサン、 目を細めて見入ります。 目の前を、水しぶきをあげながら ジェットスキーの若者が、 猛スピードで通過していきます。 「いいな、あれ。 一度乗ってみたいな。 転覆するかな」 オトーサン、 カメラを回し続けます。 あちらでは、パラ・セイリングの若者。 ボードの上にようやく乗って、 帆が風を捉えて走り出しました。 「あれは、もうオレには無理だろうな、 運動神経のいい若いひとでないと」 撮影をやめようと思った途端に転覆! 「ハ、ハ、いいシーンが撮れた!」 赤い小型水上飛行機もあります。 奥方は、見るのがめずらしいらしく、 撮影に夢中。 おお、目の前をクルーザーにのった 家族が手を振りながら通過していきます。 「いいなあ、この家族は。 マリーン・ライフのすべてが楽しめるんだ。 まさに地上の楽園、ここにありだ」 奥方、 「何なの?あれ?」 「あれかい、ハウスボートだよ。


photo:ハウスボート

ハウスボート、 海の上に浮かぶ住宅、 ボートですから、もちろん動きます。 昔、トム・ハンクスが ハウスボートで暮らしていた映画をみました。 「"めぐり逢えたら"だったっけ」 内海を移動して、気が向いたら、 また別の景色のいいところに停泊するのです。 「あれに泊まったら面白いだろうな」 「あたし、イヤよ。船酔いするから」 「ここは、内海だからダイジョイウブだよ」 「わたしなら、あの家のほうに泊まりたいわ」 奥方が指さしたのは、海岸に並ぶ豪華な家々。 このあひる号は、それを海上から見学する ツアーでもあります。


photo:海辺の豪邸

オトーサン、 内心つぶやきます。 「いいなあ。あんな家に住めたら。 海をみながら、 サンデッキに寝転がって居眠りしてもいいし、 芝生のプールで水浴びするのもいいだろうし、 庭からは、魚が釣れるだろうし、 家の前の自家用桟橋からクルーザーを駆って 外洋に出て大物釣りを楽しんでもいいだろうし...」 ステュワーデスさんに、 写真の豪邸を指さします。 手帳で筆談。 "That House, How much?" 娘たちが見たら笑うだろうな、 これで通じるかなと思っていると、 ステュワーデスさん、 にこっと笑って、 ボールペンを受けとって書いてくれました。 "3.7 million" "Thanks!" 意気揚々と奥方に説明します。 「あの豪邸、いくらだと思う?」 「....」 奥方、撮影に余念がなく無言。 オトーサン、 かつて、奥方に宣告されました。 「あたしイヤよ、 海のそばに住むなんて 断然、山がいいの」 夢のセカンド・ハウスは、 勝浦か下田あたりと思っていたのに、 八ケ岳山麓につくりました。 「山もいいけど、海もいいなぁ。 3700万豪ドル、7掛けで2590万円! 安いなぁ」 1時間足らずで、 あひる号は、上陸します。 「なーんだ、こうなってるんだ!」 砂浜に海面まで続く 舗装道路が1本敷設してあるのです。 海からそこに乗り込むだけ。 コロンブスの卵のような新発見でした。 このダックス・ツアー、 サーファーズ・パラダイスの 繁華街からビーチ沿いにシーワールドへ。 その先から内海に入り、 クルージングを楽しみつつ南下、 マリオットホテルの近くで上陸し、 サーファーズ・パラダイスに戻るというもの。

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所要時間は1時間15分、 大人1人、28豪ドルでした。 ジュースとクッキーのサービスつき。 子供たちには、素敵なおみやげ。 もう1社、アクアバス・サファリが 営業していますが、同じようなもの。 本家のほうをおすすめします。


*15 ビフォア・スイミング

オトーサン、 「腹減ったなあ」 次女、 「パパったら、そればっかり」 「どこへ食べに行こうか?」 長女、 「みんな好きなところに行って。 わたし、行きたいところがあるの」 「いいよ、付き合うよ。なあ」 長女が向かった先は、 ビーチ沿いの "HUNGRY JACK'S"なる ハンバーガー・ショップ。 マックと同じようなお店で、 水着の若者たちで超満員。 椅子も確保できないくらいです。 オトーサン、 慨嘆します。 「アメリカで暮らしていると、 こんなものを食べないと、 落ちつかなくなるのかなあ」 まあ、冷静に考えてみれば、 日本でも若いひとが、 たまにインスタント・ラーメンを食べないと 落ちつかないのと同じようなものかも知れません。 オトーサンの世代だと、ご飯に味噌汁、お漬物。 奥方、 「このお店、アメリカにもあるの?」 「あるわよ。マックよりも人気あるわよ」 「そうか、アメリカでもマックは落ち目かい?」 「そうねぇ。飽きられたわね」 奥方、 「マックって、あまりおいしくないのよね。 そういえば、昔、あの子が、 マックには、ミミズが入ってるなんて 言ってたわねぇ」 あの子とは、今回、無事に新郎になった 息子のことです。 かれが大学生の頃、一時、そんな噂が出ていました。 「...そんなことないのになあ」 ちょっと藤田田さんの怖い顔が浮かびました。 オトーサン、 「キミたちは、エステだね。 それじゃ、オレ、これで失礼するよ」 奥方、 「どこに行くの? 5時45分にDFSギャラリア集合よ」 長女、 「わかってる?」 あまり信用されていません。 もうひとり奥方がいるようです。 「ああ、ホテルに戻って、ひと泳ぎするよ」 奥方、 「そうね、まだ一度も泳いでいないものね。 水着も持っててきてるんでしょう?」 「ああ」 時計をみます。 いま、2時15分。 すると、ここに戻ってくるまでに、 残るは、わずか3時間半。 「じゃバイバイ、時間もないから」 オトーサン、 娘たちの手前、 勢いよく別行動に移ったものの、 「さて、どうやって、ホテルに帰ったものか」 と立ち往生します。 DFSギャラリアのバスは、出たばっかりです。 1時間おきですから、あと45分待ち。 バス停に行きましたが、 どのバスがシェラトンに行くのか不明。 小金の持ち合わせもありません。 「やはり、タクシー拾うしかなさそうだなあ」 でも、ゴールドコーストでは、 流しのタクシーなんていう便利なものはないのです。 「電話するか、でも英語だよなぁ」 それにどこに公衆電話があるか分かりません。 いくら入れればいいかも、電話番号も知りません。 「弱ったなあ」 ホテルに行って拾うという奥の手もありますが、 泊まってもいないホテルでは、 ちょっと気がひけます。 オトーサン、 そのとき、道路の向かい側に タクシーが止まっているのを発見しました。 赤信号でしたが、大急ぎで渡りました。 手をあげて、乗車の意思を表します。 乗り込もうとして、回りをみると、 何台もとまっています。 「なーんだ。DFSのそばが、 タクシー・スタンドになっているんだ」 ガイドさんは、 タクシーは呼ばなければ、来ませんよ と言っていました。 「いい加減なこと言うな。 まあいいか、 例外なき法則はないというから」 12豪ドルを払って、 無事、シェラトン・ミラージュへ戻ります。 「意外に安かったな。 往きは、確か24豪ドル払った。 そうか、釣具屋探しに手間どったからか」 オトーサン、 部屋にもどります。 3階、何度見ても心がときめきます。 「いい部屋だなあ。 何しろ、5つ星だもんな。 1泊28000豪ドル、4泊で8万円。 息子が結婚式というので、泊まったけれど、 自分たちだけなら、こんな高いところには 宿泊しないだろうなあ」 ひょっとすると、 この部屋、新郎新婦に用意された 特別の部屋だったのかも知れません。 シャンペンが置いてありました。 入室直後に、 「間違ってる! オージーは、いい加減だな」 そう言って、息子の部屋に届けました。 「ありがとう!」 「部屋、交換しようか?」 「いいよ、ここ、いい部屋だもん」 息子は、まったく意に介しない様子。 「ほんとうにいいホテルでよかったよ ビーチが庭続きななんて」 オトーサン、 あらためて 自分たちが泊まっている 部屋を見回しまず。 キングサイズ・ベッドが2つ。 いない間に、メイドさんが入ったのでしょう、 きちんとベッドが整えられています。 ソファ、スタンド、 テレビ、冷蔵庫、 有料のミニバー、 コーヒーと紅茶は無料です。 そのほか、セーフティボックス ヘアドライヤー アイロン、 まだ使っていない純白のバスローブとスリッパ。 そして、グリーンのバスタオル。 「そうだ、これを持っていかなくては」 スポーツ・ミラージュをご利用される場合は、 このタオルをご使用くださいと書いてあります。 オトーサン、 いそいそと水着に着替えます。 「さあ、いよいよ泳ぎだ。 泳ぐのは、久しぶりだなあ。 何年ぶりかなあ?」


*16 至福のスイミング

オトーサン、 ホテルのロビーを抜けて、 一旦、ラグーン・プールに出ます。 「ここじゃ、水浴び程度のようだな」 と判断して、 スポーツ・ミラージュへ向かいます、 ヘルスクラブは、 別棟になっているのです。 4面のテニスコートを抜けると、 ようやくお目当てのプール棟にきました。 受付の若い娘に言われて、 ルームキーをみせ、名前と部屋番号を記帳。 ジムが奥に見えます。 「ロッカールームは、どこ?」 彼女、にこッと笑って、 「次回からは、有料よ」 なんて言って、ロッカー・キーをくれます。 オトーサン、 「まあ、日本のフィットネス・クラブと大差ないな」 40台後半から、水泳に狂いはじめました。 1日1キロが日課。 いろんなクラブに入りました。 「おお、シャワールームにベンチがある」 こんな設備は、はじめてです。 着替えるのでしょうか? 「濡れるだろうに」 シャワーのバルブが壊れていました。 「やはり、オージーだ」 この国は、特に修理関係の人手が不足のようです。 オトーサン、 ようやく屋外のプールへ。 「おお、いいプールだ!」 25メートル、8コースと書くと、 どうってことはないのですが、 コース幅が広いのです。 そして、プールサイドのスペースがゆったりして、 サンデッキがたくさん置いてあります。 それでいて、ゆったり。 「...ここは、国土が広いし、 あのイアン・ソープを生んだ国だからな」 ここオーストラリア、 すべてが、こじんまりとしていて、 息がつまりそうな日本とは、大ちがいです。 老年の夫婦がサンデッキでひなたぼっこしています。 本を読んでいる婦人もいます。 サングラスで年齢は分かりません。 でも日焼け色で、健康的です。 「こちらのご婦人は、みな肌黒だな。 皮膚がんも多いそうだが」 オトーサン、 プールに入ります。 先客は、1人。 若い女性、なかなかのスイマーです。 「2年ぶりだから、1キロはやめて 500メートルくらいにしておくか」 慎重を期して、 最初の25メートルは、クロールでゆったり、 さらに慎重を期して、折り返してからの 25メートルは、平泳ぎにグレードダウン。 「うん、衰えていない」 ひとかき、ひとかきを楽しみます。 水温は28度でしょうか、 心地よい温度です。 オゾン臭もありません。 「いい水質管理してるなあ」 水に慣れて、魚に戻ったような あのなつかしい感覚が戻ってきました。 オトーサン、 泳ぎ疲れて、 背泳で水面に浮かびます。 青空をみながら、感慨にふけります。 「ずいぶん、 世界のあちこちで 泳いだなあ」 国連を見下ろす高層階のプール、 ラスベガスのネオンに照らされたプール、 ハワイのマウイ島のプールで迎えた夜明け、 バリ島で味わったインド洋の濁った水、 シンガポール、ラッフズホテルのプールの星明かり 香港は対岸の100万ドルの夜景 そして、ソウル、台北、上海... 太陽が照りつけ、雲が流れ、花が咲き乱れ...、 「世界プール漫泳記」が書けそうなほど 思い出がびっしりとよみがえってきました。 「スイミングっていいなあ」 水着ひとつあれば、 世界中どこでも、 誰にもわずらわされす、 すぐに桃源郷に入れるのです。


*17 アフター・スイミング

オトーサン、 時計を確認、4時15分です。 「もう時間だ」 名残惜しそうにプールを後にします。 「初日から、泳ぎに来ればよかった。 そうすれば、この至福を毎日味わえただろうに」 後悔先に立たず。じっと手を見ます。 後悔の数だけ皴の多い手。 オトーサン、 「でも、あとやることがある」 スイミングがノスタルジックな時間とすれば、 これからの味わう時間は、 いわば、甘美な初体験のようなもの。 「アフタースイミングは、 オイスター・バーで過ごそう」 密かに決めていたことです。 このシェラトン・ミラージュのロビーから 部屋に行く間にひっそりとたたづむ暗闇、 それがオイスター・バー。 「紫煙がただよう、男の隠れ家」 夕暮れともなれば、 満ち足りた人生を送ってきた男たちが、 喉を通過するアルコールにより 人生をさらに完璧にしようと企む秘境、 それが、オイスター・バー。 オトーサン、 カードを持っていることを確認して、 秘境に足を踏み入れました。 「何だ、誰もいないや」 いちじるしく落胆いたします。 考えてみれば、当然のことです。 まだ、早すぎる時間なのです。 バーテンが、夕方からの商売繁盛時に備えて グラスを磨いています。 オトーサン、 カウンターは避けて、 ガーデンビューのソファに腰を落ち着けます。 メニューを手にします。 分厚く滑らかな革張りのメニュー、 このメニューに収められているワイン類の 総額は天文学的な数字にちがいありません。 バーテンが、豹のようにすばしこく やってきます。 ".... " 何か聞きとれない言葉を発します。 "Thanks" とりあえず、さしさわりのない英語を 重々しく言ったつもりですが、 すこし声が上ずっていたかもしれません。 オトーサン、 メニューを開きます。 気ぜわしく安いビールのページを探します。 「何もワインを飲まねばならないという 決まりがあるはずはない。 おれは、泳いだ後、喉が渇いて、 ビールが飲みたいだけなんだ」 そう自分に繰り返し言い聞かせます。 「でもなあ」 すぐ弱気の虫がささやきます。 「それってマズイんじゃない? ほかに何か頼んだほうがいいんじゃない。 こういう高級な場所での定めじゃないの?」 ...そうかもなあ。 でも、すぐ後に夕食が控えているからなあ」 オトーサン、 "What your suggestion?" 本人は、逆襲に転じたつもりですが、 初老のバーテンは、余裕尺々で、 肩をすくめるだけ。 「えーと、それでは」 つい地がでて、くだけた日本語になります。 情けない話です。 "Crown Lager ...and Oyster natural" そう注文しました。 ホッとため息。 オトーサン、 ビールをグビ、グビ、グビッ。 「うーん、うまい、フワーッ」 スイミングのあとのビールは、格別ですが、 今日はまた特別の格別。 最近泳いでいないし、 飲んでいないし、 異国の地で飲むのも久しぶり、 3拍子そろっていては、 うまくないはずがありません。 「このビール、うまいじゃん」 オトーサン、 ビールの泡と一緒に、 活性酸素も吸入したのでしょうか。 俄然、元気になりました。 英会話力が戻ってまいりました。 昔から、どういうわけか、 飲むと流暢な英語がしゃべれるのです。 "May I ask you a question?" バーテンさん、 よほど退屈だったのか、 目を輝かせて、手を広げて、 "Sure!" この一節だけを取り上げると、 「スゴイじゃん、ちゃんと会話できるじゃない!」 という大きな誤解を与えることになります。 なあーに、 "May I ask you a question?" てぇのは、 馬鹿のひとつ覚えなのです。 この第1声さえ発しておけば、 相手は、悪い気がしません。 あとは、筆談でもOK!というわけです。 オトーサン、 手帳を取りだします。 すらすらとハウスボートの絵を書きます。 「スゴイじゃん、絵もうまいの?」 「冗談言っちゃいけません。 ボートを書いて、その上に四角を載せただけ」 バーテンさん、 "House boat?" "Sure!" この"Sure!"は、オトーサン。 覚えたての単語を再利用すると 記憶に残ります。 "How much?" "..... About 15000A$" 大きさや、年式によってちがうとのことです。 「1000万円か、案外安いものだなあ。 まあ、次に来たときに、 3泊くらい試しに借りたら面白いかも」 バーテンさん、 生牡蠣をもってきました。 "OK Please!" (さあ、どうぞ!) プレートに12ケ、殻つきです。 ディナー前ですが、小粒なので、 全部食べても問題ないでしょう。 オトーサン、 牡蠣をもつと、手が汚れそうなので、 ペーパーナプキンを頼みます。 "Paper, please" "Sure!" バーテンさん、 依頼の品を届けてくれました。 オトーサン、 一瞬、ためらってから、 "Thank you!" 目の前に置かれたのは、 胡椒の瓶でした。 「そうか、胡椒pepper と紙paperは、 発音が似てるからなあ」 でも、負け惜しみですが、 胡椒をかけた牡蠣も、案外いけましたよ。


*18 Q1タワー

オトーサン、 タクシーを呼んでもらって、 DFSギャラリアへ。 「しめしめ、まだ無料券が残っていた」 雨がパラパラつきだしました。 何も買ってもらえなかった DFSギャラリアの涙雨かも。 「天候不順だな。 ゴールドコーストとくれば、晴れだと 思っていたけど、毎日降る。 夕立だから、実害がないけど」 雨のせいでしょうか、 サーファーズ・パラダイスの中心部には、 なかなか入れませんでした。、 「道がえらい混むなあ。 ...そうか、今日は日曜日か、夕方だし」 旅をしていると、曜日の感覚がなくなります。 退屈しのぎに林立するビル群をみやります。 かなり変わったデザインやカラーの建物もあります。 オトーサン、 つぶやきます。 「ここは、いま、まさに高層ビル・ラッシュだ」 ゴールドコーストは、建築ブームのようです。 建設中のビルが、ニョキニョキ。 オトーサン、 "Where is the Q1 Tower?" (どこにQ1は、あるの?) 寡黙な運転手さんに話しかけます。 いましがたバーテンさんから、 イアン・ソープが企画に参加している 超高層マンション「Q1」の話を聞いたばかり。 建設中のマンションは、 80階建てで、世界最高とか。 運転手さん、 "Q1 Tower? From here,we can't see it" (Q1は、ここからじゃ見えないよ) オトーサン、 "Ah...、By the way, do you know how much?" (それは残念。ところで、いくらする?) 運転手さん、肩をすくめて "Q Tower? I don't know. ...Did you come to buy it?" (知らないなあ、買いに来たのか?) オトーサン、 びっくりして。、 "Oh no! From curiosity, I tried to hear it to you" (とんでもない! ただ好奇心から、聞いてみただけさ) このQ1タワー、 最高階のペントハウスのお値段は、 「えーと、手帳のどこに書いてもらったかな。 ああ、890万豪ドルだった」 日本円にして約6200万円。 これなら、日本の億ションの半値以下。 買ったのは日本人だそうです。 「誰だろうな。買ったのは? さんまさんや和田アキコさんあたりかも。 彼らなら、お小遣い感覚で買うんだろうなあ」

Q1タワー

ご購入希望の方は、下記サイトを! http://www.nichigo.com.au/publi/np/Qldnichi/re/0211/re2.htm Q1 世界一を誇る高さ322.5メートルの 超高層マンションがゴールドコーストに誕生する。 (2005年7月完成予定)。 南太平洋からヒンターランドの山々へと広がる パノラマは壮観そのもの。 80階建て、全527戸は景観を最大に眺められるように 設計されている。  約1ヘクタールにおよぶ広大な敷地内には ラグーンや熱帯雨林を模した造園などの リゾート施設がある一方、 居住者専用のジムや映画館など近代設備も 充実している。 間取り ペントハウス(1)、 サブ・ペントハウス(12)、 1ベッドルーム(213)、 2ベッドルーム(184)、 3ベッドルーム(117) カッコ内は物件数 設備 展望デッキ、スカイ・ガーデン、 プール(屋外、屋内温水)、 スパ、サウナ、ラグーン、ジム、 映画館、カフェ、プール・バー、 託児所、ビジネス・センター、 セキュリティー・システム完備 敷地面積 12,840u オトーサン、 ちょっといじけた気分で、 DFSギャラリアへ。 5時に到着。 新婚夫婦は、お買い物の真最中。 待っているのは、先方のご家族だけ。 わが一家は、まだ来ていません。 3歳の幼女と6歳の坊やが ベンチにだらしなく寝ています。 「疲れたんだろうな」 オトーサン、 子供たちの寝顔を見て、 感慨にふけります。 「...オレが、初めて海外に行ったのは たしか石油危機の年だったなあ」 すでに、30代も後半になっていました。 大勢見送りにきました。 いまでは、送迎なんか誰もしません。 「...田舎の子まで海外旅行をするなんて、 日本も豊かになったもんだ。 将来、この子たち、 ゴールドコーストのマンションくらい ポーンと買えるようになれるかなあ? 無理かなあ。 でも、せめて立派な大人になってくれよ」


*19 マンゴースのワイン

オトーサン、 ぶつぶつ。 「うちの連中、遅いな。何やってんだ」 言い終わる間もなく、 3人官女、そして新郎新婦が到着。 新郎 「大変だったよ、おみやげ買うのが いそがしくて」 次女は、 小ぶりの黒のスーツケースを持っています。 見たことがないものです。 「それ、どうしたの?」 次女、 「DFSギャラリアでもらったの。 600豪ドル以上買うと、これがもらえるの」 オトーサン、 「また、ムダ遣いしおったな」 そう口には出しませんでしたが、 態度でわかったのでしょう。 次女、 「お兄ちゃん、これあげるよ。 おみやげものを入れるといいよ」 兄思いなのです。 オトーサン、 「...日頃、 突っぱってるけど、 案外いいところあるなあ」 それにしても、何を買いまくったのでしょう。 600豪ドルといえば、 4万2000円! 「3人分の化粧品でも買ったのかな」 さて、 ウェディング・ディナー第2弾の 開催地は、マンゴースです。 DFSギャラリアからは、歩いて数分、 マリーナのそば。 ランチに出かけて振られたところ。 いわば、今夜は、リベンジ。 もう振られることはないでしょう。 なぜって? 長女が予約したといっていましたから。 オトーサン、 出迎えたウエイトレスに、 「いい席をとってくれ」と 怪しげな英語を駆使して頼みました。 せっかくの機会です。 言うべきことは前もって、 きちんと言っておかねばなりません。 長女、 憤然として、 「パパ、 そんなこといわなくてもいいの。 ちゃんとお願いしておいたから」 その通りでした。 最高のセッティングでした。 マリーナを見下ろす半屋外の場所に すでに長いテーブルがセットされ、 11人分のお皿が並んでいます。 「おぬし、やるなあ」 考えてみれば、長女はキャリア・ウーマン。 本場ニューヨークで揉まれて、 こうした場合にどうすればいいか もう慣れっこなのかも。 「成長してるなあ、娘どもは。 どうも、オレは、おいてきぼりにされている 気味があるなあ」 オトーサンにしてみると、 いつまでたっても、娘たちが あの危なっかしい女子高生時代のような 気がするのです。 オトーサン、 名誉挽回を図ります。 鞄からごそごそと小冊子を取り出します。 無料配布の観光案内です。 これには、市内のレストランなどの 割引券がついています。 ホテルで、6冊もらってきました。 「おひとり様、1割引き」 これは、日本語版で 英語版のほうは、 ワイン1ボトル。サービスとあります。 長女、 「おお、やるじゃん」 受けとって、 ウエイターに何事かをささやきます。 すぐに、ワインがきました。 オトーサン、 そこで気をよくして、 全員に向かって、 宣言します。 「ワインなら、おれに任せて!」 バスケットに入ってきたワインを ウエイターがオトーサンのグラスに入れます。 うやうやしくグラスをもって、 すこし振って、匂いをかぎます。 そして、一口飲んで、 "Good!" これで儀式は完了。 ウエイターは、にっこり。 先方の田舎のひとびとは、うっとり? このワイン、 ほんとをいうと、 おいしくなかったのですが、 なにせ無料です。 「おいしくなかったら、 返してもいいんだぜ」 新郎 「そんなことしていいの?」 オトーサン、 「いいの!」 オトーサン、 ワイン通をもって任じています。 長女は、ビール党。 ワインについては、弱いのです。 そこへいくと、 オトーサンは格が上です。 その昔、 ホテル・オークラのソムリエから、 ワインの銘柄、テイスティングについて、 直々に教わりました。 「やーい、まだまだ、お前らに 教えることが残ってるんだそ」 と叫びたいくくらいです。 この態度、 娘たちに言わせると、 「あたしたちと、 張り合ってどうするの? いい年して」 とのことなのですが...。


*20 最後の晩餐

オトーサン、 すこし落ち着いて、 あらためて、参加メンバーを数えます。 新郎1家が、5人。 新婦1家が、6人。 合計11人、 ずらっと長方形のテーブルを囲んでいます。 席決めには、手間どりました。 「夕日が見えるから、こちらの席へどうぞ」 「いやいや、そちらこそ」 「坊やたちは、ママのそばがいいかな。 それとも、オネーサンの横かな」 この結婚によって、 両家の結びつきが確認されたものの、 他人行儀から抜けだすには、 まだまだ時間がかかりそうです。 オトーサン、 「みなさん、 酔っぱらう前に、 記念写真を撮っておきませんか?」 「異議なーし」 ということで、整列。 たまたま居合わせたバースからきた 太ったおじさんに撮ってもらいました。 「あたしのカメラでも」 「お願い、あたしのでも」 にぎやかなことです。 「いい加減にしろよ、ご迷惑だろうが」 オトーサン、 ひとり列を離れます。 「どこかで見たような光景だなあ」 長方形のテーブルを囲む人物たちという 構図に既視感があったのです。 そうそう、レオナルド・ダヴィンチの 名画「最後の晩餐」と構図が似ているのです。 「...惜しかったなあ。 この目で見たかったなあ」 せっかくイタリアはミラノの サンタ・マリア・デレ・グラーツィエ教会まで 見に行ったのに、修復工事中でした。 「あの絵は、確か13人だった」 キリストを中心に弟子たち12人。 イスカリオテのユダは、黒髪、黒髭。 キリストのそばにいるものの、 金目当てに師を裏切ったため、 ひとり違和感を抱いている様子。 「...ここにいるのは、11人か」 すると、2人欠けていることになります。 「欠けている2人は、誰だろうな。 ...キリストとユダか」


最後の晩餐
出典
http://www.pcs.ne.jp/~yu/ticket/supper/supper.html

オトーサン、 「ここには、 幸い磔にされるキリストも 裏切り者のユダもいない。 でも、聖バルトロマイも、 聖ヤコブも、聖アンデレも、 聖ペテロも、聖ヨハネも、聖トマスも、 聖ヤコブも、聖ピリポも、聖マタイも、 聖タダイも、聖シモンも、いない。 異教徒だけだ。 テーブルの上の、 パンと水と魚料理は同じだけどなぁ...」 なぜか物悲しい気分になりました。 酔いが回ってきたのでしょうか。 奥方、 「あなた、なに、ぼんやりしてるの。 みんなも決まったわよ、 何、注文する?」 「お前の好きなものでいいよ」 あまり食欲がありません。 そういえば、さっき、カキ12ケと ビール1本を飲んだばかり、 「ここ、あまりシーフードないのね」 奥方は、海辺のレストランといえば、 シーフードとパブロフの犬のようです。 新郎、 「ぼく、イセエビが食べたいな。 なあ、追加していいだろう?」 と新婦に了解を求めています。 「おい、お前、いつから魚、 食べられるようになったの?」 新郎、新婦に向かって、 「なあ、魚、食べてるよなあ?」 オトーサン、 内心、 「ハハ、もう尻に敷かれてるな」 奥方、 ふたりの睦まじい光景から目をそらして、 「じゃあ、あたしは、マッド・クラブ!」 マッド・クラブは、直訳すると泥蟹。 ここの名物のようです。 これを獲りにいくツアーもあるほど。 オトーサン、 あわてて、 「おい、それ2つとも時価だぞ」 奥方、 「"こういう時"くらい、いいでしょ」 オトーサン、 「いつも、"こういう時"じゃないか」 奥方 「....」 奥方の"こういう時"は、 食べたいという欲求が先にあって、 あとから理屈がつくのです。 サラダ記念日のようなもの。 「まあ、いいとするか」 家族そろっての会食なんて何年かぶりです。 息子は、家を出ていくし、 長女は、NYに帰ってしまうし、 次女も、「あたしパリに住みたい」 なんて言っていますので、 ひょっとすると、 これが、最後の晩餐になるかも知れません。


*21 夜明けの光

オトーサン、 朝、4時半に目覚めて、 「おお、もう最後の日だ。 泣いても笑っても、もう最後だ。 それにしても、馬鹿げている。 モーニング・コールが、4時45分、 荷物を部屋の外に5時30分までに、 そして、ロビー集合6時10分なんて」 ブリスベーン発は、9時30分なのです。 いかに余裕をとっているかが分かります。 すべては、団体旅行のせい。 不心得者、粗忽者、愚か者の出現を 前提にしているのです。 例えば、空港に着いて、 「あっ、パスポートをホテルに置いてきた」 「おい、うちの家内はどこにいる?」 といった類の事件発生を想定しているのです。 旅なれた(つもりの)オトーサンにとって、 これは、苦痛以外の何物でもありません。 オトーサン、 「まあ、しょうがない、 災いを転じて福となそう。 そうだ、ラグーン・プールに行って、 サンデッキで、旅行記でも書こう」 眠そうに起き上がった奥方に宣言。 「じゃ、7時10分、ロビーで会おう」 「あなた、荷物は?」 「もう、ドアの外に出してある」 奥方は、荷造りの最終仕上げ、 そして身づくろいなど、 いろいろとやることが多そうです。 オトーサン、 「ここは楽園だなあ」 サンデッキに腰掛けて、あたりを見回します。 あくまでも青いプールの色、緑の芝生、 ココナツヤシの剣先がかすかにゆれ、 潮騒が聞こえます。 「残念だなあ」 パソコンを開きましたが、 太陽が昇ってきて、 その明るさで、画面が見えづらいのです。 「これは、いい写真になるかも」 鞄からデジカメを取り出して、日の出を撮りました。


photo:夜明けの光

オトーサン、 立ち去り難い気持ちが沸いてきました。 「帰国を延長するか? まあいいや、いつか、また来よう」 そう口に出すと、 プールを立ち去りやすくなりました。 集合時間まで、 ロビー横の人気のない応接室で、 旅行記に専念しました。 ときどき、ラグーンプールに目をやると、 かもの親子連れが泳いでいます。 小鴨が、親の後をついて懸命に泳いでいったり、 あるいは、親が心配して、小鴨を見守ったり。 「子供も、あのくらいの年が一番可愛いなあ。 大きくなると、ロクなことがない」 6時10分、 定刻どおり全員集合。 近ツーの添乗員は、見慣れぬ若い女性、 やけに高圧的です。 バスのなかでも、みんなが眠っているのに、 マイク片手にガンガンとお説教。 オトーサン、 目をつぶったのですが、 耳からは、ノイズが入ってきます。 近ツー、 「空港では、お荷物の検査があります」 オトーサン、 「当たり前じゃないか」 近ツー、 「みなさん、ナイフやハサミを お持ちでないでしょうね?」 オトーサン、 「テロで警戒厳重だっていうんだろう」 近ツー 「...没収されます」 オトーサン、 「ハハハ、当たった」 近ツー 「最近では、みなさんがおみやげに買われた ブーメランも、没収されます」 オトーサン、 「昔、おみやげに買ったなあ」 多摩川の河原で、投げる練習をしたものです。 最初は、向こうへ飛んでいってしまうだけ。 やがてコツを覚えると、 手元に戻ってくるようになりました。 「息子も、無事、結婚したけど、 たまには、家に来てくれるかなあ? それとも、カミさんの言いなりになって サッパリ寄りつかなくなるかなあ?」 午後5時20分 飛行時間8時間、成田空港に着いたという アナウンスがありました。 オトーサン、 「よかった、 よかった..、 よかった」 と3度繰り返しました。 1つ目のよかったは、 定刻より20分早めに着いたこと。 2つ目のよかったは、 旅行中、テロにも、事故にも、 病気にも、トラブルにも遭遇しなかったこと。 「海外旅行障害保険代が儲かった」 最後のよかったは、 まあ、息子が片づいたこと、 世間並みになったということでしょうか。


*22 ロングステイ談義

オトーサン、 帰国してから、会うひとごとに、 「いやぁ、ゴールドコーストはいいよ。 冬もないし、じめじめした梅雨もないし、 1年中、快適な気候! マリーン・スポーツが楽しめるし」 「そう?」 つれない返事が返ってきます。 日本は海に囲まれていますが、 マリーン・スポーツは、サッパリなのです。 せいぜい、海水浴か釣り程度。 クルージングなんて、夢のまた夢。 オトーサン、 別の方向から攻めてみます。 「ゴルフが安いんだ。 打ちっぱなしぐらいの値段でプレイできる」 「ヘぇー」 と興味を抱いてくれたら、 もうこっちのもの。 止まりません。 「飛行時間はハワイより少し長いけれど、 時差が1時間しかないから、ずっと楽なんだ」 「時差がないのは、いいね」 「そうでしょ、そうでしょ」 「運転は、どうなの?」 「よくぞ、聞いてくれました。 日本とおんなじ!左側通行。 渋滞もないし、 ハイウエーの通行料もタダ。 ガソリンも安いし」 「高速道路が、タダ?」 「そう! 治安もいいし、 台風もこないし」 「そりゃ、いいね」 「そうでしょ、それに...」 オトーサン、 声をひそめます。 「地震がないんだ。 だから、阪神淡路大地震のような ひどい目にあわずにすむ。 東海地震が起きる前に、 日本から逃げ出したほうがいいぜ。 それに、北朝鮮からは、 いつテポドンが飛んでくるか分からないし、 そこへいくと、 豪州は、核戦争とも無縁。 いま、日本は不況でしょ。 街であうひと、みんな冴えない顔をしてるでしょ。 リストラだ、ボーナスが減ったとか、 年金も危ないとか、先行き何もいいことないよ」 「...そうだなあ」 オトーサン、 勢いこみます。 「こんな時期に 日本にいる人の気が知れないよ。 オーストラリアにおいでよ」 まるで、もうオーストラリアに移住して オーストラリア政府観光局の 支部長になっているかのようです。 オトーサン、 「へえ、いいねえ」 と身を乗り出してきたひとには、 移住まで勧めます。 「いいよー、ゴールドコーストは。 生活費が日本の半分。果物もうまいし」 「...でも、日本食が恋しくなるかも」 「大丈夫! おコメだって、 日本にコシヒカリを輸出しているほど。 梅干や海苔、納豆、お漬物、味噌、醤油、 何でもそろっている」 「ほんと?食べてみた?」 オトーサン、 そういわれると、困ります。 短かい滞在で、そこまで調査していません。 「物価も安いよ。 何かの本に、物価の比較表が出ていた」 そんなことで話を外らせてしまいました。


*23 東京のほうがいい!

オトーサン、 帰国したら、お正月番組が ゴールドコーストを取り上げていました。 番組名は、確か、 「ゴールドコーストと東京、 どっちで暮らす?」 若手の女性タレントや落語家に交じって、 デビ夫人も出ています。 気候、治安、遊び、食べ物、買い物、交通事情など テーマ別に、両都市を比較して行きます。 途中、出演者が札をあげて、 自分が選んだ都市名を示します。 次女、 「あたしは、東京だと思うわ」 奥方、 「半分に割れるのじゃないかしら」 オトーサン、 「おれは、ゴールドコーストだと思うけどなあ」 結果は、全員がゴールドコースト。 オトーサン、 「そら見たことか。 ゴールドコーストに決まってるだろう」 でも、もうひとつのテーマが追加されました。 医療事情。 歯が痛くなって、 GP(General Practishoner:ホームドクター) に行ったら、レントゲンを撮るだけで、 あとは専門病院に行けとのこと。 満員で2週間も待たされ、 歯が痛いまま地獄のような日々を過ごした という内容です。 司会者、 「それでは、最後に出演者のみなさんの 判定をお伺いしましょう」 で、結果はというと、 全員が東京! オトーサン、 「そんな馬鹿な...取材不足だ。 ゴールドコーストには、 いい日本人の医者がいるって聞いたぜ」 OKADA MEDICAL CLINIC tel:07-5592-2900 次女、 「ねっ、あたしが言った通りでしょ、 あのひとたち、東京で稼いでいるから、 東京と答えるに決まってるわよ。 ゴールドコーストなんて、 田舎だから ロクな仕事ないわよ。 旅行関係か、サービス業か」 その後、ある新年会に出ました。 物故者がすでに2人。 勿論、出席しているひとは、元気です。 まだ現役で頑張っているひと、 もう引退したひと、 元気そうに見えるものの、 病気療養中のひとと、さまざまです。 酒が入って盛り上がって、 病気や医者の話になって、 後輩のオトーサンへのアドバイスが なされました。 「まあ、65歳で定年として、 元気なのは、その後10年がいいところだな」 「いやいや、75まではとてもムリ、 せいぜい70歳だよ。 まあ、遊ぶとしたら、それまでだな」 オトーサン、 頃合を見はからって、 先輩たちの意見を聞いてみました。 「あんた、気が若いね。 オレは、もうそんなところまで行く 気力も、体力もないよ。 まあ、温泉めぐりのほうがいいな」 「行きたいが、女房がなあ。 ボランティア活動で忙しくて、 ぬけられないって言うんだ」 「まだ義理の母が生きておるからなあ。 介護を手伝わんわけにはいかんし、 孫もおるし、犬の世話もせにゃならん」 音楽好きなひとは、 「ゴールドコーストなんか、 ロクな演奏会もないだろうよ。 行くなら、ニューヨークだなぁ。 おたくは、娘さんがNYにいるんだって? うらやましい」 そんなことで、先輩たちには、 オレも行こうというひとは、いませんでした。 オトーサン 「どうも、この年代のひとは、 オーストラリアといってもピンとこないようだな。 若いひとは、行きたがるんだけどなあ...」 オーストラリアは、1980年に、 働きながら学べるワーキング・ホリデイという制度を 世界ではじめて導入して、これが極めて評判なのです。


*24 移住という選択肢

オトーサン、 新年会のあと、反省しました。 「先輩たち、それなりに余生をエンジョイしている。 おれも、もっと地に足のついた暮らしを 考えないといけないかもしれない」 でも、オトーサン、 「50歳から人生をはじめる方法」という本を書き、 日本人のこれからの新しい生き方を提案したひと。 何も、先輩のマネをする義務はありません。 「まあ、日本にしがみつくのもよし、 しがみつかないのもよし」 日本のどこに住もうと文句を言われないように、 いまや、世界のどこに住もうといいはずです。 「カラスの勝手でしょ」 オトーサン、 それでも、やや心配になったので、 ゴールドコーストに移住するとして、 現地での暮らしはどうなるのか 一応チェックしておくことにしました。 「このホームページは続けたいなあ」 移住後も、映画批評や旅行記を続けるとすると 何がネックになるでしょうか? 「インターネット環境は、問題なさそうだ」 先進国ですから、ダイジョウブ。 「旅行記だって、ネタがたくさんできる!」 これは、現地にいるわけですから、 "オーストラリアならオトーサン" というくらいネタが集まりそうです。 「...問題は、映画だなあ」 DVDの入手は、問題なさそうですが、 日本語字幕のない映画が分かるかどうかです。 「ちっと難しいかも。 でも、そのうち慣れるさ。 いい英語の勉強になるはずだし」 物事は、心配ばかりしてもしょうがありません。 何事も、前向きに考えればいいのです。 オトーサン、 「問題は、奥方。 TVが見られない! と不満をいうかもしれんなあ」 NHKワールドという海外向け放送がありますが、 無料のせいか、朝5時からの1回だけとか。 「そういえば、添乗員がぼやいていたなあ」 NHKプレミアムという有料放送があるけど、 月3000円もするし、専用チューナーがいるので、 ぼくらの給料では、見られないとのことでした。 「おれは、いまでも、 TVなんかほとんど見ないから、平気だけどなあ」 奥方だって、NYの娘のように、 そのうち現地の放送しか見なくなるでしょう。 「紅白みたいわ。録画しておいて」 と日本の知人に頼めばいいだけのこと。 「そうだ、現地の日本人がみせてくれるはず」 その昔、終戦後、1家に1台TVというのは お金持ちだけの頃、見せてもらいに行きました。 あれは楽しかった」 オトーサンたちの世代は、ゼロから出発しているので TVがなかろうと、新聞がなかろうと、平気平気! 「そういえば、新聞はまったく問題ないらしい。 ネットで記事全文が入手できるらしい。 便利な世のなかになったものだ」 オトーサン、 そこで、退職者ビザの取得を考えました。 条件は、以下のようになっています。 オーストラリア退職者ビザの概要 http://www.ajac.co.jp/visa/austvisafiles/austretiredvisa.html 1, 55歳以上であること  (既婚者が夫婦で申請する場合は、   どちらか1人が、55歳以上であればよい) 2, 配偶者以外に、扶養家族がいないこと  (子供がいる場合、全員独立していること)。 3, オーストラリア国内で、就労しないこと。 4, 健康診断(胸部のレントゲンを含む)の結果に   異常がないこと。 5, 以下のいずれかに当てはまる、   オーストラリアへの送金可能な資産があること。 ● 65万豪ドルの資産があること。  (オーストラリアに永住している独立した子供が いる場合は、60万豪ドル) ● 20万豪ドルの資産、及び、年間4万5千豪ドル 以上の年金か投資等による収入があること。   (オーストラリアに永住している独立した子供が    いる場合は、18万豪ドルの資産、および年間 4万2千豪ドル以上の年金か投資等による収入   があること) 「うーん、条件が厳しいなあ。 タイなら、80万バーツ(224万円)用意すれば、 OKなのに。チュンマイあたりで暮らせば、 年金生活で貯金もできるらしい」 ともあれ、 オーストラリアは、 お金のハードルが高いのです。 「65万豪ドルを投資せよ、つまり 4200万円の送金可能な資産を有するというのは キツイなあ」 「でも、1300万円の送金可能な資産と、 年金などの年収が4万5千豪ドル(300万円) というほうなら、何とかなるかも」 でも、いずれにせよ、 住む家の心配をせねばなりません。 「じゃぁ、どんな物件があるのかなあ」 以下のサイトを調べてみました。 物件情報(日豪プレスクイーンズランド版11月号) http://www.nichigo.com.au/publi/np/Qldnichi/re/0211/re2.htm オトーサン、 そのひとつに目がとまります。 *East Hill Residences(Glades) 「ゴルフ・オーストラリア・マガジン」誌が、 クイーンズランド州NO.1のゴルフ・コースに選んだ “GLADES”コース内に建設された一戸建て住宅で、 ゴルフ愛好家のためのゴルフ・リゾート。 自宅からゴルフ場まではゴルフ・カートで移動可能。 居住者だけがメンバーになれるステイタスが魅力。 オトーサン、 「こりゃあ、 ゴルフ狂なら、涙を流すだろうな。 ...でも、オレには向かないな。 あまりゴルフやらないほうだから」 「おお、例のQ1タワーも載っている。 80階建てなんて、馬鹿げてる。 眺めはいいだろうが、すぐ飽きる。 エレベーターは、なかなかこないし、 テロの標的になるに決まっている。 火事になって逃げ出すこともできないし」 オトーサン、 「これ、いいじゃん」 Royal Pines Resort サーファーズ・パラダイスから 車で10分の距離に位置する、 開発総面積200万uのリゾート。 緑あふれる広大な敷地内に、 ロイヤル・パインズ・ホテル、 ゴルフ・コース、テニス・コート、マリーナなど 施設が充実している。 ショッピング・センターなどへのアクセスも便利。 24時間セキュリティーを完備し、 日本人スタッフによる暮らしのサポートもあり。 別荘としての利用者にも、長期滞在者にも、 洗練されたリゾート・ライフ


photo:Royal Pines Resort

オトーサン、 不動産を買うときの注意事項を調べました。 1.物件を自分の目で確かめる。 2、家並みがよい   (治安がよい) 3、広い運河に面する   (景色がよい)  4、東北または北向き   (南向きは、暑い)  5、オージーについていってもらう。   (日本人だけでいくと、吹っかけられる) オトーサン、 一晩寝ての結論は、 「買うのやーめた」 大枚をはたいて、 豪邸を買ってもいのですが、 現地社会に溶け込めずに、 いつ日本に帰りたくなるか分かりません。 ふと思いついて、 息子に電話してみました。 かれは、不動産業界に詳しいのです。 「あそこ、不動産バブルの真最中だから、 はじけたときのことも考えておいたほうがいいよ」 「そうかぁ」 急速に、熱が冷めていきます。 「...しばらく様子をみるか。 滞在して、気にいったら、 その時、買うかどうか、考えればいいや」


*25 ロングステイ

オトーサン、 「そうだなあ、 不動産を買うのは、やめとこう。 その代わり、ロングステイにトライしてみよう。 半年は、ゴールドコーストに滞在し、 後の半年は、日本で過ごしてみようか」 そういえば、 現地で知り合った添乗員が言っていました。 「10月から3月まで冬の間、 こちらで暮らすひと、多いですよ。 6ケ月以上だと、アパート代も大幅に安くなります」 「そうなの?」 そんな会話を思い出しました。 オトーサン、 「そうなると、別のサイトを探さなくては」 ゴールドコースト・コンドミアム・リスト http://www.accommonet.com.au/ 「うーん、アコモネットか、 日本人が経営する不動産会社のようだな。 じゃあ、安心かも。 でも、迷うなあ、どの地区がいいか、 メインビーチか、サーファーズパラダイズか」 当面クルマがないので、 後者のほうが、繁華街の中心なので、 何かと便利でしょう。 「安くてよさそうなのを探してみようか」 SURFERS BEACH RESORT U ★★★☆ サーファーズパラダイスとブロードビーチの ちょうど間に位置するコンドミニアム。 1998年に建設されたばかりで真新しく清潔感がある。 目の前にはバス停があり サーファーズパラダイスやブロードビーチまで アクセスが簡単。 長期滞在レートもあるので、お問合せ下さい。 3階建て15室 駐車場、プール、バーベキューエリア

オトーサン、 「ワン・ベッドルームで、 オフシーズン料金が、1泊73豪ドルか。 1泊5000円ていど。 1ケ月だと、15万円」 6ケ月契約にすれば、 月10万円くらいまで下がりそう。 「まあ、この程度なら、やってける。 ...でもなぁ、これじゃぁ、 いまのマンション暮らしと変わらんなあ。 せっかくの機会だから、 一生に一度くらい、豪邸で暮らしてみるか」 そう思って探すと、ありました。 「あった!さすが、アコモネット!」 一戸建てで贅沢滞在!! 広々とした家で 家族や気の合う友達同士で 滞在してみませんか。 日本ではとても考えられない生活が ここでは演出ができます。 通常この手の物件は 最低半年間の滞在が要求されますが、 7泊よりご利用頂けます。 初めての方にも安心して利用できます。 オトーサン、 「おお、海辺だ、豪邸だ。プールもある!」 目がクラクラしてきました。

オトーサン、 「ところで、気になるお値段は?」 料金表をみると、 28泊で、5600豪ドル。 「1ケ月で、40万円!」 急に借りる気が失せました。 奥方とふたりで、 4ベッドルームというのは どう考えても、広すぎます。 「友人でも誘えば、安くはなるが...。 あるいは、7日滞在して10万円という手もある。 でも、これじゃあ、ロングステイとはいえんな、 ...弱ったなあ」


*26 わが人生、どう生きる?

オトーサン、 アコモネットのサイトをウロウロ。 「何か、もっといい物件ないかなあ。 サーファーズ・パラダイスは高いから、 もう少し遠いところにするか、 その分、安くなるが、 遠方は、クルマがないと暮らしづらいし...」 迷い出すとキリがありません。 オトーサン、 「おっ、他の都市も出ている。 シドニー、ケアンズ、パース、ポートダグラス... ほかの都市のコンドミニアムも調べてみるか?」 シドニーは、1度行きましたが、 オリンピック以降、荒れているようです。 「物価も高いし...、 まぁ、観光に行くのはいいだろうが」 コンドミアムのデータを いくつか調べてみましたが、 ピンときません。 まして、ケアンズやパースなどは、 土地勘がないので、もっとピンときません。 オトーサン、 腕組みします。 「弱ったなあ」 そのとき、アコモネットのサイトで 「夕刊フジにて、ロングステイ関連記事連載」 というのが目につきました。 「そういえば、昨年の暮れに、 ダイエーの取材をされたけど、 その後、何も言ってこないなあ。 その話は、もういいか。 じゃ、ひとつ覗いてみるか」 7回分の連載記事が出ていました。 「年金でリッチ!海外暮らし術」とあって、 見出しも、 ゴールドコーストは、 ・世界一暮らしやすい:気候がよくて、物価も安い ・もはやジャパニーズ・タウン:日本食に不自由なし と、うまいものです。 オトーサン、 連載記事を読み終えて 「そうか、日本人会もあるんだ。 会員160名、一度取材に行ってみるか?」 現地のひとの肉声を聞くと、 日本に愛想をつかせて、日本を離れたのに、 不思議なもので、日本人が恋しくなるようです。 「海外に行ってまで群れるな! 現地社会に溶け込め!」 とよくいわれますが、 オージーたちとのパーティよりも、 日本人との会合のほうが落きます。 「イザというとき、やっぱり頼りになるし」 オトーサン、 アコモネットのサイトを下っていって、 「そういえば、ここクリックしていない」 おすすめサイトがありました。 題名は、ちょっとお堅くて、 「自分らしく生きる人生を考える」 http://www.accommonet.com.au/Hirano_Top.htm オトーサン、 「この平野桂三さんって、どういう方だろう?」 プロフィールを覗いてみました。 生命保険会社支社長を54歳で退職、 第2の人生を趣味を生かし、 お好み会席のお店を10年間経営するも売却し、 65歳、第3の人生をゴールド・コーストに求める。 オトーサン、 むさぼるように読み終えました。 「すごいひとがいる! まず、心構えからして全然ちがいます。 「灰は、オーストラリアと ニュージーランドの真中に撒いてくれ。 墓は要らない。それだけが遺言。 周りと合わせることにあくせくしない。 死んだ先も考えない。 今新しいものに遭遇しているか、 遭遇したものに挑戦しているか、 わくわく、活き活き好奇心の目を光らしているか、 それだけが吾が人生と信じる」  オトーサン、 出発点は、おれと同じだけど、 到達点がまったく違う。 「宮仕えは、懲り懲り」は同じですが、 「死ぬまでに一度でいい、思うとおり生きたい!」 そういって、移住してしまうのですから、 大胆不敵というか、まことに爽やかです。 オトーサン サラリーマンをやめ、 いままた第2の人生を終えて、 第3の人生へと踏み出そうとしています。 「第3の人生」というと、 いかにも格好いいのですが、 さしあたり、自由な時間を享受したいという 気持ちで一杯なのです。、 でも、その内容たるや、 ・1日1万歩歩こう、 ・水泳も再開しよう、 ・あとは、山小屋で晴耕雨読。 ・人恋しくなったら、 東京に戻ってきて、 「公園デビューでもするか。毎日鳩に餌をやろう」 ときわめて、簡素というか、漠然としたもの。 奥方から、 「あなた、 半年もたたないうちに、ヒマをもてあますわよ」 と警告をうけております。 オトーサン、 「お前は長生きするだろうけど、 おれは、もう先が長くないからなあ。 ボケーっとしていても、いいんじゃないか?」 でも、よく考えると、 どう有意義に人生を終えるかを 決めるべき時期が否応なしに迫ってきているのです。 愕然とします。 愕然とせざるをえません。 「何事かを成就して、死のう」 そう思っても、 もう残された時間はすくないのです。 砂時計を見ているようなもの。 オトーサン、 このところ、悲憤慷慨しています。 「幸せな老後を送りたい!」 これは、頑張って働いてきたひとびと みんなの願いでしょう。 ところが、わが祖国は、最悪。 老人は、邪魔者扱い。 いまは、デフレですが、 政府は、これからインフレにしようとしています。 当然、年金は目減りどころか、カットへ。 それに、消費税増税、医療費値上げ、 老人の財布を狙う一般企業や悪徳企業...。 腹の立つことを上げだしたら、キリがありません。 老後の金勘定などしても、暗澹とするばかり。 知人が「老後のキャッシュフローを考える」を 書いています。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~hakuzou/Link-Y8.htm オトーサン、 ゆくりなくも、 昨年亡くなった母の末期を思い出します。 ひとり暮らしは、みじめなものでした。 耄碌しているのにつけこんで、 消火器を6本も売りつける業者。 メーカーはもちろん、警察も知らん顔。 病院のたらいまわし。 「おれは、 あんな老後は、絶対イヤだ。 よーし、発想を転換して、 老後は新天地で、もう一花、咲かせるぞ!」 オトーサン、 もう一度、 平野桂三さんの文章を読みます。 「まず、奥方の理解を得る。 そうだ。これが一番、肝心。 全力で説得すれば、わかってくれるだろう。 次に、準備に2年かける。 もうやり直しがきかない年令だからなあ。 その間、持病があれば、日本で徹底的に直しておく。 最後に、現地の不動産屋さんと仲良くなる。 そうだ、そうだ、その通りだ」 ようやく前途に曙光が見えてきました。 何もひとりで不安がることはないのです。 「困ったら、いい先輩に聞けばいいんだ」 オトーサン、 心はすでに決まりました。 いざ、ゴールドコーストへ、 陽射しも心もあったかい楽園へ。 「今度は、 "65歳から人生をはじめる方法"を書くぞ! 」 「心に太陽を!唇に歌を!」 老後は、こうありたいものです。

長らく連載してまいりました 「GO!豪!ゴールドコースト!」は、 これにて終了いたします。 旅行記を書き終えて、ホッとしました。 今回は、旅行している期間よりも、 旅行記を纏めるほうが、何倍も時間がかかりました。 書くほうも大変でしたが、 長らくお付き合いいただいたみなさまも 読みづらいところもあって、大変だったでしょう。 ご愛読、厚くお礼申しあげます。 オトーサン、 帰国後、手当たり次第に、関連本を買いました。 といっても、そんなに数はありませんが...。 インターネットだって、調べまくりました。 参考文献・サイト (1)柳沢有紀夫「極楽オーストラリアの暮らし方」 山と渓谷社 2001年 (2)柳沢有紀夫「オーストラリアで暮らしてみれば」 JTB 2001年 (3)立道和子「年金・21万円の海外2人暮らしU オーストラリア・ポルトガル・チェンマイ」 文春ネスコ 2001年 (4)中西佐緒莉「年金だけで海外で暮らす本」 朝日ソノラマ 2002年 (5)オーストラリア大使館 http://www.dima,australia.or.jp.html ビザの申請は、査証係 03-5232-411 東京都港区三田2-1-14 (6)オーストラリア政府観光局 http://www.australia.jp/top.html (7)日豪プレス: http://www.nichigo.com.au/toppage.htm   日本語新聞のホームページ (8)豪州屋便利帳   http://www.australiajapan.com/   膨大な情報を収録しています (9)カフェ・オーストラリア   http://member.nifty.ne.jp/yukimari/ 柳沢有紀夫さんのホームページ (10)ゴールドコースト不動産購入マニュアル http://www.nichigo.com.au/publi/np/Qldnichi/re/0211/re.htm 現地不動産会社社長による状況や用語解説 (11)WORLD LINK   http://www.sekaikankou.com/world/news/link/link4.htm   豪州についてのあらゆるリンク集。   観光やワーキング・ホリデイの情報が満載です。


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