香港・天空滞在記

目次
1 行き先は、香港 2 HISは、いい会社 3 困った事態、その1 4 困った事態、その2 5 JL705=CX532? 6 HIS香港<東洋旅行社 7 港島香格里拉大酒店 8 極悪非道のツアー 9 オーダーメイドの悲喜劇 10 天虹海鮮酒家での豪遊 11 下町市場散策 12 嗚呼、オーダーメイド 13 健康ランド、香港 14 香港〇級グルメ 15 謎の帰国時間 16 ゆとりの2時間半


1 行き先は、香港

オトーサン、 年末が近づくと、そわそわ。 風狂の心が騒いで、居ても立ってもいられません。 「NYへいくか」 ここ数年、娘のアパートに転がりこんで、 ブロードウエイでカウントダウンしてから お正月を迎えるのが恒例行事になっています。 ところが、早々に娘から言い渡されてしまいました。 「今年は遠慮して、仕事が忙しいから。 3月にきて。一緒に遊ぼうよ」 そうなると、 行き先がありません。 ハワイ、バリ、シンガポール オーストラリア、ニュージーランド、 エジプト、ギリシャ、イスタンブール プラハ、南フランス。 候補地はいくらでも出てきますし、 旅行代理店の窓口に行けば、 いくらでもパンフレットがもらえます。 問題は、お金と体力。 車を買い替えたいので、あまり高いところは困るし 目の手術で、水泳禁止で、体力低下。 本当は、ニュージーランドがお目当てだったのですが。 高いし、山歩きしなければおもしろくないし.... 迷った末に、香港にしました。 近いし、2回目だし、気楽です。 前回は、香港返還のブームが去った直後の夏でした。 先遣隊の娘が、 仕事で行って「おもしろかった」というので、 「じゃあ、われわれも一度行こうか」となったのです。 オトーサン、 奥方に言います。 「暑かったなあ」 「暑かったわねえ。その分、フルーツジュースがおいしかった」 「そうそう。テクテク、よく歩いたなあ」 「赤柱(スタンレー)で買った竹の椅子、もう壊れたのに、 あなたが買った腕時計まだ動いているでしょう」 「女人街で3000円で買ったオメガ、まだ動いている。すごいよなあ」 そんなことで、香港に行くことにしました。


2 HISは、いい会社

オトーサン、 早速、HISに行きました。 このまえアメリカに行ったときの女性係員はいませんでした。 この会社、顧客管理をしていないらしく、 10回以上利用しているというのに、いつもイチゲンの客扱いです。 格安航空券で先発したので、ひいきにしてきたのですが、 最近は、JTBや近畿日本ツーリスト、日本旅行の大手3社も 格安航空券をはじめたので、もうHISを利用する必要はないのです。 現に、9月のロンドン・パリ行きは、日本旅行でした。 でも、 やはり、お世話になったHISを使わなくては。 そういう思いで、HISに行ったのです。 新しい係員は、若い女性で、お名前はHさん。 10年前に最初に使ったHISの銀座営業所は 松屋裏のおんボロビルの4階にありました。 エレベータがいつ故障で止まるか心配したものです。 女性係員も、質が悪くて、 富永一朗センセイ描くチンコロ・ネーチャンのようでした。 姐御肌で「任せなさい、悪いようにはしないから」が口癖でした。 取れないはずの切符も取ってくれましたし、 何遍、行き先を変更してもいやな顔もせず、 「この会社、給料悪いけど、あたしが支えてやってるんだから」 という頼りがいのあるオネーチャンがいました。 オトーサン、 彼女がいなくなっても、HISを使い続けてきました。 女性係員は、上品になって、良家の子女風になりました。 テキパキと仕事をこなし、男より有能です。 だって、大卒女性の最優秀のひとが旅行会社をめざしているのです。 そういう変身したHISも、また、オトーサン、好ましく思いました。 内心、おれたちが大きくしてやったと思っています。 「沢田くん、おれたちのおかげだぜ」 オトーサン、 社長の沢田昭雄さんを10年来の知己のように思っております。 そんなスタンスですから、 社員の一挙手一投足をまるで沢田社長の目で見てしまいます。 「そんな応対していいのか。会社つぶれるぞ」 ところが、これまで、一度も、そういう叱責の言葉を吐かないですみました。 若い社員が、みな張り切って、よくやってくれました。 「HISって、格安航空券売ってるところでしょう、 そんなところ使って大丈夫ですか?」 と聞かれても、 「HISなら、心配ありませんよ。 あぐらをかいている大手より、きちんと仕事します」 と答えてきたのであります。 お世辞なんかじゃありません。 本当ですよ。


3 困った事態、その1

オトーサン、 奥方と一緒にHISに出かけて Hさんという女性係員に依頼しました。 「香港に行きたいのだけれど」 「何日発ですか?」 「12月22日発でできれば、羽田発の午前便」、 しばらくして戻ってきて 「お客さま、申しわけありませんが、満席だそうです」 「それでは、遠いけれど、成田発ではどうかな」 「少々、お待ちください」 大分待ってから、 「お客さま、申しわけありませんが、満席だそうです」 「困ったなあ。どうする?」 奥方も困ったような顔をしています。 Hさんは、あまり困っていないようです。 そりゃそうでしょ、自分が行くわけでなし... オトーサン、 Hさんに助けを求めました。 「何かいい方法ないかなあ?」 「ご出発の日を変えるわけにはいきませんか?」 「年末になるほど、料金が高くなるからなあ」 旅行代理店のこのやり方って、けしからんですよねえ。 昔は、こんな事はなかったのです。 いつも同じ料金。 さて、そんなことをいくらぼやいていても、 この際、何の解決にもなりません。 オトーサン、 新提案をします。 「じゃあ、名古屋発であたってみてくれるか?」 関西国際空港発でもいいのですが、 それでは、あまりにばかばかしい。 Hさん、しばらくして戻ってきて 「日本航空ならば、取れますが」 「JALかあ。ノースウエスト航空はないかい? マイレージもたまるし、乗った時から、外国気分になれるし。 そうだろ」l オトーサン、 奥方に援軍を求めました。 ところが、 奥方の返事は、ドライなもので、 「JALでもいいわよ。 あたし、JALのマイレージ・カードも持っているから」 オトーサン、 奥方の浮気を発見したような気分になりました。 「お前、いつの間に、そんな男(カード)作ったんだ?」 「まあ、いいじゃない。それより、どうする?」 そんなことで、 東京-名古屋-香港というルートになってしまいました。 ホテルは、 前回が、九龍のカオルーン・シャングリラでしたので、 今回は、香港島のアマンダリン・オリエンタル。 中環(セントラル)にある便利な高級ホテルです。 オトーサン、インドア・プールがあるのも気に入りました。 1泊延泊して4泊5日、 代金はひとり11万2800円に延泊2万円が加わって 13万2800円。 香港旅行にしては、豪華です。 「気軽に香港4日間」なら、6万3000円。 2回行けます。 流石に、ハーバービューのお部屋は5000円増しというので、 「なあ、いいだろ。昼間いくらでも海くらい見えるんだから」 そう言って、奥方に了承を求めました。 「そうねえ。あまりお金かけるのも何だから」 オトーサン、 そんなことで旅行の申し込みが出遅れたために、 名古屋発、しかもJALという不本意な事になりました。 「まあいいだろう。 やれやれ、やっと手配が終わった」 と一息つきました。


4 困った事態、その2

ところが、 数日後、Hさんから連絡が入りました。 「マンダリン・オリエンタルは、工事中だそうですが、構いませんか?」 オトーサン、即座に返事をしました。 「そりゃ、構うよ。ちょっと話しがちがうだろう。 HIS特選ホテルセレクションと謳ってあるのだから。 センビキ屋の果物が腐っているようなものだ。 当然、料金を値引くか、ハーバービューの部屋に替えるか、 どちらかにすべきだろう。そう先方に言ってください」 また1週間くらい経ちました。 Hさんから、連絡がありました。 「マンダリンからは、応じられない、 いやならやめてくれ。クリスマスで混んでいるからということでした。 ホテルを変えますか?」 オトーサンの頭のなかから、 マンダリン・オリエンタルについてのよいイメージが、 がらがらと音を立てて崩れていきました。」 「そうか、そうか。 マンダリンって、そういう商売をしているのか。 着飾っている淑女に見えるが、実際は商売女だったんだ。 誰がそんなところに、泊まってやるもんか」 さらに、HISについても、疑問がふつふつと湧いてきました。 「HISは、何をしているのだ。売った後で欠陥商品だと連絡してくるとは」 そこで、即座にHさんにいいました。 「マンダリンはやめた。 どこか同じクラスで、ハーバービューのホテルを手配してくれ」 しばらくして、Hさんから 「もうどこも満員で、ホテルは取れないようです」 という返事がありました。 オトーサン、怒り心頭に発しました。 香港とノンビリ連絡を取り合っているうちに、 時間は刻々とたって、どのホテルも埋まってしまったのです。 クリスマスシーズンが混んでいるなんて、旅行業者の常識でしょう。 「それをモタモタしおって」 ひとりなら、即座にキャンセルするところですが、 奥方が苦労して予定を空けて、楽しみしているのですから、それは出来ません。 かといって、マンダリンに、こっちが悪かったというのも妙なものです。 オトーサン、 もうHさんではラチがあかないと判断しました。 そこで、 「責任者を呼べ」とあいなりました。 「沢田社長は、何ボヤボヤしている」 別の営業所や本社にも電話して、事のいきさつを話して、善処を依頼しました。 やがて、 営業所の責任者から電話がかかってきました。 「もういい、お宅たちには頼まないから。 おたくの香港支店の責任者の電話を教えてくれ」 「もうしばらくお待ちください。 香港に連絡をいれて、何とかするように言っているところですから」 「おたくの香港は、動きがおかしいのではないですか?」 「実は、そうなんですよ。明日まで待っていただけますか?」 「ああ、いいよ。君の誠意は感じたから」 その後、すぐに電話がありました。 「ご希望のハーバービューはお取りできませんが、 アイランド・シャングリラが空いているという連絡が入りました。 いかがですか?」 「ああ、いいよ」 オトーサン、即座に承知しました。 これ以上、事を荒立ててもどうかと思ったのです。 「すこし、お値段が上がりますが、よろしいですか?」 「ああ、いいよ」 ほんとうは、ちっともよくないのです。 ここは香港では、最上級のホテルで、12万4800円。 延泊料金もマンダリンより5000円高くて、2万5000円。 しめて、おひとり様14万9800円です。 奥方に電話しました。 「アイランド・シャングリアになったよ。 ハーバービューではないけれど、 あそこは客室が39階以上だから眺めはいいはずだ」 「ふーん、今回は高くついたわねえ。 新幹線で名古屋往復で2万円はかかるから、 20万円ちかい香港旅行になってしまったわねえ」 そんなことで、ドタバタしましたが、 オトーサン、とりあえず旅行が決まってホッとしました。 おもむろに、「地球の歩き方ムック 香港」の アイランド・シャングリラの紹介されているページをみます。 146−147Pと見開き2ページ。 かの有名な、ザ・ペニンシュラと同じ大きな扱いです。 マンダリンのノータリンは、148ページに少々。 「ざまあみやがれ」 じっとアイランド・シャングリラの記事に目をこらします。 「天空に浮かぶ桃源郷は、まさに悦楽の園」 ザ・ペニンシュラのほうはとみると、 「究極の”優雅”を心ゆくまで、どうぞ」 両者、甲乙つけがたしです。 それに対して、ノータリンのほうは、 「高級感と細やかなサービスが自慢」と キャッチ・フレーズも、前2者とくらべると、明かに見劣りします。 オトーサン、 もう一度、 アイランド・シャングリラのキャッチフレースを読み直します。 「天空に浮かぶ桃源郷! 桃源郷なら20万円だって安いよなあ」 そんなことで、 今回の香港旅行のタイトルは、 「香港・天空旅行記」としようかなと思いました。 ところが、奥方は、 「こんなに高い部屋なら ホテルの部屋から出るのは勿体ないわね」 お部屋の広さが44平方m! このアパートより広いっていうほどではないけれど... 広いわねえ。 じゃあ、お部屋から1歩も出ないでおこうか」 などと妙なことを言っております。 そこでオトーサン、 また、タイトルを変更して、 今回の香港旅行のタイトルを 「香港・天空滞在記」とした次第です。


5 JL705=CX532?

オーサン、 あと数年の寿命ですが、 名古屋空港も悪くはないなあ と思いました。 2005年の愛知万博にあわせて、 常滑沖に国際空港が出来たら、おしまい。 名古屋高速の楠まで都心から10分、 出口の前後で混みましたが、 まあ、羽田並みの近さ。 駐車場も、空港のすぐそばの民間駐車場で1日1000円、 5日で5000円。公営駐車場だと、一日2200円です。 空港も空いていて、税関の行列もなし、 おまけに、JL705便ときたら、ガラガラ。 成田発は、満席と断られたのにねえ。 無事、離陸してから、 奥方が尋ねます。 「あの女のひとと、何を話していたの?」 オトーサン、ニコニコして答えません。 実は、日本航空の搭乗カウンターで、 「佐々木センセイですか?」 って、突然、係員に聞かれたのです。 オトーサン、名札をみて、教え子を思い出しました。 「ああ、キミか。いいところで働いているねえ」 授業でもマジメな娘でしたよー。 名古屋から香港までは、4時間半のフライトです。 「思ったより、遠いなあ。そうか、台湾より遠いのか」 2655km.時差1時間。10時発で、香港着は午後1時半。 「気温はどうなのかしらね、コートいるのかしら? 天気は、どうなのかしら」 奥方が、質問してきます。 オトーサン、 いそいそと香港の天気予報の紙を取り出します。 実は、名古屋空港にあるインターネットで調べたのです。 これ、10分間、100円。 カラープリンター付き。 22日 晴れのち曇、 気温13-17度 23日 晴れのち曇、 気温12-17度 24日 晴れのち曇、 気温13-18度 25日 晴れのち曇、 気温15-19度 「よかったわね、雨具の必要はないのね」 この飛行機、 何とも妙なヒコーキです。 乗務員は日本人と中国人。 これは、まあ、よくあることです。 アナウンスは、英語と中国語。 座席の背にとりつけられたモニターのビデオも英語と中国語。 これも、まあ、いいでしょう。 でも、機内誌は、キャセイ。 機体も、キャセイでした。 変だなあ。 ようやく理由が分かりました。 隣に座った中年のご夫人が、 入国書類の搭乗機の欄に、CX532と記入していたのです。 あらあら、日本航空とキャセイパシフィック航空との共同運行でした。 といっても日本航空がキャセイに便乗っていう感じ。 JL705=CX532どころか、 JL705<CX532、 これって国威低下ではありませんか。


6 HIS香港<東洋旅行社

オトーサンたち、 ようやく香港に到着しました。 中国難民家族のおかげで、入国審査で長いこと待たされたました、 そのためかHISの旗をもった係員が イライラしながら待ち受けています。 胸には、東洋旅行社と書いてあります。 HIS香港=東洋旅行社。 あらあら、HIS香港は、どうも東洋旅行社に仕事を丸投げしているようです。 若い男が3人。 皆、一様に暗い顔。 責任者らしき男は、日本語は達者ですが商売人。 口先だけで世渡りしているタイプと見受けました。 スタッフのひとりは、日本語まるでダメ、 そのうえ、愛想なし。 ガイドは日本語不自由で、ド素人。 おざなりの案内をしていました。 オトーサンが、 「シテイバンク、どこにありますか?」 と聞いたら、 「香港島にはありません。 九龍のネイザンロードにあります」 と答えたのです。 ウソばっかり。 超高層ビルの本社が香港島にあります。 オトーサンたちの泊まっているホテルとつながっている パシフィック・プレイス(太古広場)の3階にもありましたし、 中環にも支店がありました。 「やっぱりなあ」 HIS香港は、使っているというより使われているのでしょう。 HIS<東洋旅行社 これって、サイテーの関係じゃありませんか。


7 港島香格里拉大酒店

アイランド・シャングリラ。 港島香格里拉大酒店。 このホテルは、やはり一流です。 東洋旅行社と比べるのも何ですが、天と地ほどの接客の違いがあります。 受付の人は、みな、さわやかな応対。 さて、気になっていた部屋は、 44階のピークビューでした。 オトーサン、ぼやきます。 「客室は、39階から56階まであるのだから、低いほうだなー」 オトーサン、早速、カーテンをめくりました。 (電動になっているのは、後で気づきました) まあ、驚ろいたのなんの。 大きなガラス窓一面に、無数の超高層ビルが並んでいます。 標高398mのピークまで、超高層ビルの遠近法です。 右手の高層ビルは、中国銀行。 屋上に天を突き刺すように2本のポールがそびえています。 見下ろすと、道路をコメ粒ような大きさの車が走っています。 緑が濃いのは、香港公園でしょうか、 瀟洒な中国建築のと楕円形の池が見えます。 真上からみる噴水というのも、乙なもの。 「やあ、凄い眺めだなあ。こんな景色、絶対、日本では見られないよ」 地震のない香港では、ビルといえば超高層ビル。 ちなみに一番高いビルは、 78階建てのセントラルプラザで3755mだそうです。 ちなみに、日本で一番高いのは、横浜のランドマークの298mだそうです。 奥方は、 「いい部屋ねえ」とご満悦。 「このシャンデリア、小ぶりなのに明るいの」 よくみると、10本のローソクが光っています。 ゆったりとした寝心地抜群のツイン・ベッド、 窓に面した大理石張りの大きなデスク、 そして、大きな背もたれのついたえんじ色の安楽椅子。 足を乗せる大きなオットーマン付き。 高価な家具ですから、勿論、猫足です。 「あなたの好きそうな椅子ね、ベッド代わりになるわね」 オトーサン いま、このエッセイを そのゆったりとした椅子の背にもたれて書いています。 この椅子の座り心地のよいことと言ったらありません、 これまでの長い人生で、こんなにいい椅子に座ったのは初めてと断言出来ます。 いま、2日目の朝、23日の午前7時。 窓からは、ピークビュー全開。 あのキムタクもこのホテルをご愛用と聞きました。 同じ眺めを味わったかも知れません。 「でも、キムタクなら、ハーバービューのスイートルームだろうなあ」 ようやく起きて来た奥方に聞きます。 どうやら上機嫌のようです。 「浴室はどうだい?」 シャワー、バスタブ、洗面台、ヒゲ剃りに便利な拡大鏡、 便器、ビデ、さまざまな大きさの白いタオルやアメニティグッズ、 一見すると、ほかのホテルと設備は変わりません。 「昨夜の洗濯物、みんな乾いているわ。換気がいいから、鏡も曇らないの」 とのことでした。 オトーサン、 はたと膝を打ちます。 「そうか、ホテルのよしあしは、見た目ではなく、換気性能なのだ」 そういえば、部屋のエアコンも実に快適です。 目の前の小卓には、フルーツ。 バナナ、キウイ、リンゴ、オレンジ。 「このキウイ、ちょうど食べ頃ねえ」 そうなのです。 一流と言うのは、果物だって、選び方が違うのです。 その辺の八百屋と千匹屋とでは、おなじキウイと思えない程、味が違うのです。 引き出しの中に1枚のしおりが入っていました。 「失われた地平線」から引用した文章が入っていました。 翻訳して、ご披露しましょう。 「しかし、 ここシャングリラでは、 すべてが深い静寂。 月のない夜には、満天の星の輝き。 淡青色のもやが、カラカイ・ドームを覆う。 コンウエイはふと思った。 もし、計画を変えたら、 別世界からポーターがすぐにでもやってきて、 人生という長い待ち時間の 憂鬱をすべて払いのけてくれるだろう」 皆さん、 このホテル、お勧めです。 桃源境への入口。 夢のように快適な天空滞在気分が味わえます。 でも、オトーサンのひとりごとを よーく、お聞きくださーい。 「半値だったら、定宿にしたいところだなあ」 お値段は、ピークビユーのツインで、1泊、3100HK$。 1HK$が15円で換算し、日本円で、4万6500円! 半値だって、2万3250円ですよー。


8 極悪非道のツアー

オトーサン つぶやきます。 「今日(23日)は、忌中のようなものだ。 一日中、市内観光ツアーか、思いやられるなあ。 格安ツアーのもとを取ろうと、土産物屋を引っぱり回されるのではないだろうな、 風邪を引いたといって、キャンセルしてやろうか。 でも、ここしばらく、パックツアーに参加していないから 少しは、内容も変わっているかも知れない。まあ、覗いてみるか」 結果は、やはり、危惧したとおりでした。 それも、ひどいものでした。 過去サイテー。 土産物屋回りは何と5軒も。 そのリストは、 1 宝石屋(宝石城) 2 絹製品小売店(絹の都) 3 漢方薬の店(漢方薬堂) 4 輸入ブランド小売店(富溢) 5 免税品店(ガレリア) さらに、 小型バスの車内では、 ガイドの商品(各種お茶、化粧品、水虫薬、強精薬など) 運転手の商品(キーホルダー、絵葉書) 観光協会の写真屋の下手な記念写真を売りつけられました。 観光はといえば、 ヴィクトリア・ピークへバスで行き ケーブルカーで下ってきて 2階建てのハイトップバスで、中環まで行き、 スターフェリーで尖沙咀に渡るくらい。 このくらい、誰でもやれます。 そうそう、 九龍城塞公園というのもありました。 かっての魔窟。 盗み、殺人、強姦、麻薬取り引きなど、治外法権の場所が 生まれ変わって、緑豊かな公園になっていました。 ウエディングドレスの花嫁さんもいました。 奥方が、天を仰いで、言いました。 「こんなところで、結婚式あげるなんて、どういう感覚かしら」 オトーサン、 花嫁さんを弁護してあげました。 「いいじゃないの、幸せならば。住めば都」 オトーサン、 散々、HISが使っている東洋旅行社を非難しましたが、 ガイドのレスターさんは、30代後半のハンサムな日本人。 在住8年とかで、なかなかうまい説明をしてくれましたし、 15人の参加者への気配りも相当なものでした。 何でも、レスターは芸名で、浮世での仮の名前のようです。 彼、かつては、有能なビジネスマンでした。 バブルがはじけて、ライフプランが狂って 異国で、やりたくもないガイド兼物売りに転落。 お気の毒です。 聞けば、単身赴任で狭いアパート暮らし。 奥さんのお腹の中には、子供も。 今、香港に来ているので、浮気はできないそうです。 HISは、 お客は勿論、ガイドも内心いやがっている 極悪非道ツアーをいつまで続けるのでしょう。 止められないのは、香港への戦後賠償としか思えません。 かつてはベンチャー企業ともてはやされて 業績をぐんぐん伸ばしてきたHISも、いまや大手の急追にあって、頭打ち。 沢田社長さん、生き延びるために、付加価値をねらうならば、 せめて、「特選ホテル・セレクション」と銘打った旅行の品質を そろそろ吟味されたらいかがでしょうか。 それとも、HISは、結局、お客を無視した安売り大魔王のままで終わるのでしょうか。


9 オーダーメイドの悲喜劇

オトーサン、 オーダーメイドなんかには縁のないひとです。 昔から、着たきりスズメ。 スズメと同じで、着古すまで同じ背広を着用。 一度、どこかのデパートで イージーオーダーとやらに挑戦しましたが、 採寸で男性店員が股の間に手を入れてくるのに仰天。 「ホモじゃあるまいし...」 以後、ニ度と百貨店の紳士服売場には近づかないように 心掛けております。 ところが、 このオーダーメイドという言葉は、 魔法のような響きを持っております。 「あなただけの、世界に一着しかない背広はいかが」 いいですねえ。 でも、 「あなたを魅力的にする仕立て服。ボデイラインをすっきりさせます」 とまでいうのは、言い過ぎです。 「ちょっと待って。 俺、おなかがプクッと出てるんだ」 わが身体の弱点を思い出してしまいます。 オトーサン、 たまに、銀座の英国屋の前を通り過ぎると、 「ここで背広を仕立てる人生もあるんだよなあ」 なんて思うこともなきにしもあらずですが、 店に入る勇気など、これっぽっちも湧いてきません ところが、 奥方は勇敢であります。 到着した日の夕方には、 「あなた、つきあって」 そう一方的に宣言して、 「るるぶ」に出ていたミラノというお店に行くのです。 香港島にあるホテルから街路に出て、 地下鉄MRTの金鐘と言う駅を探し当て、 まごまごしながら切符を買い、 海を潜って、1駅目が九龍半島にある尖沙咀へ。 やたら人出の多い通りを邁進して ようやくシエラトンホテルを探りあてます。 薄暗い地下のアーケードにある狭い店でした。 「るるぶ」 では、見開き2ぺージ。 誰でも大きいお店と思うではありませんか。 「騙されたあ」 しかし、奥方は、意気込んでいます。 オトーサンが、入口でためらっているのに、 ズカズカ入っていきます。 店の中には、ご主人らしき若い人とやや暗い顔の小柄な奥さん。 まあ、危害を加えられる心配はないでしょう。 奥方の周囲にも 「オーダーメイドに挑戦して見たい、でも、チャイナドレスはどうもねえ」 という御婦人方が多いようです。 「どうして?」 理由は、決まってるでしょ。 身体の線がもろに出るからです。 そこで、鞄を注文するのが流行しているようです。 流行の鞄の模造品が安く手に入るからいいように思いますが、 それだけでは面白くないのでしょう。 奥方は、鞄の色に合わせて靴もつくろうというのです。 それには、時間がかかります。 「今日注文して置かないと、帰国日までに出来上がらないわ。 ねえ、早く、お店にいきましょうよ」 という奥方専用の緊急事態となったのです。 オーダーメイドといったって 手順は簡単。 1)鞄の型を決める。 2)鞄の色を決める。 3)靴の形を決める。 4)靴の色を決める。 オトーサンなら、4分で決まります。 ところが、奥方は10倍の40分以上かかったのですよー。 オトーサン、 退屈で退屈で、お店を出て、地下のアーケードを一周しました。 3周目には、周回路を変更して シェラトンホテルーペニンシュラホテルースターフェリー乗り場ーシエラトンホテル に拡大しようかと思ったほどです。 「思えば、おれの人生は待ち時間の連続だった。 子供の頃は、大人になるのを待っていたし、 学生の頃は、勉強なんて、早く終わらないかと待っていたし、 会社員の頃は、偉くなる時期をすっと待っていたし...」 周回路の途中に、ミラノという店もあったっけ、 というほど待たされた時、奥方が呼び止めます。 「ねえ、鞄の色、どの色にしようかしら」 手には、革の素材見本の束を持っています。 オトーサン、浅はかでした。 40分たっても、まだ、手順2だったのです。 1)鞄の型を決める。 2)鞄の色を決める。 3)靴の形を決める。 4)靴の色を決める。 という手順は間違っていたのです。 現実には、 1)鞄の型を迷う 2)鞄の革の素材で迷う 3)鞄の色でさらに迷う 4)靴の形でさらにさらに迷う 5)靴の色で再び迷い、1)に戻る 6)予算と照らし合わせて、この店はやめようかしら だったのです。 そこで、 オトーサン、 大胆なデシジョンをいたしました。 「エーイ、ここまで来たら、時は金なりだ」 奥方にいいます。 「色は黒がいいんじゃない。 革は勿論高いほうがいいよ。 鞄と靴はあなたのすきな型にしたら。 それに同じ色の財布もオーダーするといいかも。 その分は、オレが持つから」 支払金額は総額で5万円。 うち1万円をオトーサンが負担。 お店を出ると、奥方はごきげんでした。 「ねえ、あのバッグ、バーキンズと言って60万円はするのよ」 「お前、奥方に甘すぎるのではないか?」 オトーサン、そういう批判は、甘んじて受けます。 「でも、全額出したわけでもないからねえ。 家内安全保障費が1万円と考えれば、 まあ、安いもんじゃないの」


10 天虹海鮮酒家での豪遊

オトーサン、 今回の香港旅行でひそかに楽しみにしていたのが、 南Y島(ラマ島)での海鮮料理。 しかし、ひとつ難関が待っています。 どうやって、 「あたし、船旅がきらいなの」 という奥方を納得させるか、それが問題でした。 でも、オトーサン、 「香港奥方接待旅行」と銘打ってもいいほど、 奥方に尽くしてきました。 前々日にはオーダーメイドにつきあいましたし、 前日には、極悪非道のツアーで疲れているのに、 女人街の買い物にもつきあいました。 6つ買った時計のうち、 オトーサンはたったの1ケ。 1 オメガ 150HK$ オトーサン用 2 宝飾時計 200HK$ 奥方用 3 CK 50HK$ 息子用 4 時計(3ケ) 90HK$ みやげ用 「時計の運び屋になっちゃったわねえ」と奥方はご満足。 あるいは、 読者の方は疑問をもたれるかもしれません。 「お前、オメガがそんなに安く買えるはずはないだろう」 オトーサン、胸を張って答えます。 オトーサンが、胸を張っているときは要注意でしたよね。 「いやあ、本当に安かったのですよ。 この前買ったのと同じ型なのに、この前よりずっと安かった」 150HK$といえば、日本円に換算して2250円。 これで3年はもつのです。 でも、これってヤバイよね、偽物づくりに協力しているわけだから。 でも、 そんなことにはお構いなく、 奥方は、翌朝はチョーご機嫌。 両腕に時計を4つも嵌めて 「今日はどこへ行こうかしらね」 とのたまいます。 大体お目当てのところに行き尽くしたので もう行きたいところなんか思い浮かばないのです。 そこを狙って、 オトーサン切り出します。 「じゃあ、うまい海鮮料理を食べに行こう」 「いいわね」 話はトントン拍子にまとまって、早速、スターフェリー乗り場へ。 ところが、運の悪いことに、 南Y島行きのフェリーが、ここから出ているかと思いきや、 案に相違して、別の桟橋だったのです。 その場所が、遠いの何の。 離島行きのなかでも一番遠いのです。 「何よ、船に乗るの?」 奥方の柳眉がだんだん逆上してまいります。 さらに、悪いことに 南Y島行きといっても 航路が2つあって、 目指す海鮮料理屋のあるのは 榕樹湾行きではなくて、索苦湾行きなのです。 前者の出発時刻は、12時50分、すでに大勢待っています。 後者は、1時10分発で4人だけ。 おまけに日曜日ですから、割増料金でひとり18HK$。 「何よ。辺鄙な島に行ってどうするのよ」 奥方の疑念も、もっともです。 「るるぶ」に、海鮮料理店の小さい写真が出ているだけ。 オトーサン、祈ります。 「るるぶよ、お前だけが頼りなのだ」 さて、海に出ると、 160人乗りの船はゆれるの何の。 波しぶきが、舷窓を覆います。 オトーサン、奥方が船酔いになって 海鮮料理どころでなくなるのではないかと気が気ではありません。 でも、今日は意外に元気。 「松島みたいね。ほんとに島が多いのねえ」 「違ってるのは、高層マンションの切れ目がないことだけだね」 幸いなことに、奇跡的に話しがはずみます。 船で一周すると、よく分かりますが、 ほんとうに香港は超高層ビルのメッカなのです。 香港島の西半分をぐるっと回りましたが、超高層マンションだらけでした。 やがて30分。 島につきます。 「西伊豆の辺鄙な漁村みたいね」 奥方の疑念は、なおも、晴れません。 桟橋を出てすぐに公衆便所。 この男性用が傑作でした。 縦3m、横30cmのステンレス流し台を下に置いたもの。 勿論、仕切り板などありません。 誰もほかにいなかったらいいようなものでしたが、 大勢いたら、出るものも出ないところでしたよー。 用を足して、 前方をみると、 右手の道路沿いに海に張り出すテラス席が ずうっと200mほど続いているでしょうか。 オトーサン、 天虹海鮮酒家を探して、進みます。 空いている店ほど、袖を引き男や女がいます。 「ああ、あった、あれだ、満員だ」 天虹海鮮酒家は超満員。 幸い、海側の2人席に案内されました。 まわりは外人ですから、オトーサンたちも 金払いのいい外人扱いされたのでしょうか。 六本木あたりのお店のようです。 奥方の機嫌が急速に改善に向かいます。 「ねえ、魚、見にいかない?」 いけすには、エビ、カニ、貝類、魚が元気に泳いでいます。 ここでは、生けすの魚介類を指さして、 調理法を中国語で指示するのですが、 オトーサンたちには、むずかしそうです。 ちょうど、おじさんが、イカの皮をはいでいるところでした。 奥方が立ち止まって、じっと見つめたあと、言います。 「おいしそうねえ」 オトーサンは、 石坂好事と浅はかルミ子夫妻のように、奥方と長年連れそっているのに、 夫婦の間には、深い性格の不一致が存在することに気付きました。 だって、 片方は「おいしい」 片方は「気の毒」ですよー。 生きながら生皮をはがれているイカを気の毒に思わないなんて、許せません。 「お前、鬼婆か」 でも、それを言ったらお終い。 せっかくの海鮮料理が開戦料理になってしまいます。 そこで、 オトーサン 席に戻って、 「ビアー」と言いました。 給仕が、 「ハイニッケン...もにゃもにゃ」 と言うので、とりあえずウンと言いました。 ウンですから、運がよければ通じるでしょう。 ところが、運ばれてきたのは、ハイニッケンの大瓶。 これまで、大瓶なんて見たことありません。 「小さい缶でよかったのになあ」 でも、後の祭り。 でも、おいしいの何の。 目の手術で、この3ケ月間もの長きに亘り断酒していたので 五臓六腑にしみわたり、天にも昇る気持ちよさです。 天虹海鮮酒家の名のとおり 奥方が鬼婆ではなく天女に見えてくるから不思議です。 オトーサンが、次に発した言葉は 「ジャパニーズ・メニュー?」 それで通じるのですから、たいしたものと思いきや、 分厚いメニューは、中国語と英語でした。 日本語の姿がないのです。 「こりゃ、食べたいものも食べられないかなー」 と心配していたら、メニューの前の数ページは、写真入りでした。 奥方が、喜んだの何の。 でも、定価が書いてありません。 「どうする、高いかもよ。時価かもねえ」 オトーサン、 時価の料理とは無縁のひとですが、 もう酔いが回っていますから、 「時価たって、 全財産没収というこたぁないだろう。 構わん構わん、おれが持つ 今日は豪遊だあ」 と叫びました。 まず、ホタテとブロッコリーの炒めものを注文しました。 大きなホタテがプリプリして、おいしいこと。 ブロッコリーも、茎はコリコリ、葉の部分はしっとり。 あっさりし味つけで、 調理人は、なかなかの腕前とお見受けしました。 次は、蟹。 奥方が身を乗り出してきます。 目が輝いています。 「どうする? 茹でたほうがいい? それとも炒めたほうがいい?」 「どっちでもいいよ。 好きなほうにしたら」 「あなたは、どちらがいいの?」 「お前は、どっらがいい?」 「じゃあ、炒めたほうにするわ、いいわね?」 「ああ、いいよ」 オトーサン、シメシメと思いました。 ビールには、炒めものがよく合うので、 最初から炒めたほうがいいと思っていたのです。 でも、最初にそれをいうと痛めつけられる危険があるので、黙っていたのです。 運ばれてきたのは、小ぶりの蟹。 「これ、上海蟹じゃない」と奥方は上機嫌になりました。 「ねえ、蟹がいるわよ」 奥方が叫びます。 「いるも、いないもないだろう。いま、食べているところだ」 ところが、奥方の指指すところは、テラス真下の海中。 透明で、魚の動きもよく見えます。 蟹が岩の間から出てきたのです。 「次は何を食べる?」 奥方が聞いてきたときには、 実は、もう食べたい物が決まっているのです。 でも、もしもですよ、 オトーサンが、この質問を真に受けて 奥方の意中の食べ物ではないものを言おうものなら。 「あたしの気持ちの分からないひとねえ」 と非難されるに決まっています。 そこで、 オトーサンは、 用心深く「お前にあわせるよ」と答えたのです。 奥方は満足そうにうなずきました。 ところが、 奥方が注文すると、 給仕のおじさんが、 「この魚、2人で食べるには、大きすぎるよ。 それに、200HK$もするけれど、本当に、いいかい?」」 そう聞き返してくるではありませんか。 オトーサン、 即座に、 「いいよ」 と答えました。 オトーサン、 もう中国人民を相手に会戦モードに入りました。 世界の平和をまもるため、 家庭平和を守るため、 ゴー、ゴー、レッツ、ゴー 宇宙戦艦、ヤーマートー。 というテーマ・ソングが鳴り響いています。 給仕のオジサンは、 オズオズと引き下がります。 ヤマト民族ノ勝利デス。 運ばれてきた魚、そんなに大きくありませんでした。 やや大きめのカレイみたい。 白身が淡泊で、新鮮。 あんかけ。 「この数年で食べたうちで一番おいしいなあ」 オトーサンがビールのお代わりを頼みながらいうと、 奥方は、うれしそうに言います。 「ねえ、あたしの言ったとおりでしょ」 食事が終わったのが、3時少し前。 オトーサン、遠くの島影をみながらいいます。 「どうする? 飛び乗るかい? 次は4時の便になるけれど」 「せっかく島に来たのだから、腹ごなしに散歩しない?」 何と、奥方は、島にいたいというのです。 ほんとうに、ひとの心とは、ふしぎなものですねえ。 オトーサン 支払いを待ちます。 「3皿とビール2本で、いくらかなあ」 540HK$でした。 まあ、払えといわれれば、払えます。 高過ぎると、裁判を起こすほどの金額でもありません。 オトーサン、 一安心して言います。 「ここは、クルマが1台もない島なんだってさ」 「へえ、ヴェニスみたいね」 と奥方。 着いたときは、確か西伊豆の寂れた海岸と言ってたはずです。 シメシメ。 南Y島への小旅行は、 オトーサンの思った通りの展開になってきました。 また、食後の散歩がよかったのです。 静かな海辺の歩気安く整備されたトレイルが、榕樹湾まで続いているのです。 歩いて、2時間弱だそうです。 オトーサンたち、30分くらい歩きました。 途中、西洋人の別荘の犬と遊んだりしました。 奥方は上機嫌。 天気も快晴。 香港島とちがって空気もきれい。 奥方が少女のように、天女のように、はしゃいでいます。 「あらあら、 バナナがなっている。 いいわねえ、この島は。 熱帯なのねえ。 ああ、見て、 スターフルーツが鈴鳴りよ」 葉っぱの数くらい多くの実が枝先についています。 オトーサン、身を乗り出して もぎとろうとしましたが、、 見ると、その家のおばあさんと娘さんが道端にかがんでいました。 竹の竿の先の金具でもぎ取って、道端で売っているのです。 10ケで10HK$。 たまらず買ってしまいました。 オトーサンたち、 浜辺で、大きな流木に腰かけて スターフルーツをポリポリかじりました。 淡白な味です。 すぐそばの岩には、若い二人が抱き合っている静かなクリスマスです。 奥方がいいました。 「何でも、体験してみなければ分からないことってあるのね。 冬の香港、暖かいし、冬に来るのは、サイコーねえ、 今度は、娘たちと一緒に海鮮料理を食べにきましょうね」


11 下町市場散策

オトーサン、 香港の魅力の一つは、 やはり下町の市場散策にあると思います。 ところが泊まっているアイランド・シャングリラと 廊下つづきの太古市場(パシフィック・プレイス)ときたら、 一流ブランド店のメッカ。 それはそれは広いフロアが3層もあって、 世界中の名店がすべてあるかと思うほどです。 ブルガリ、バカラ、ルネラリック、テイファニーといった貴金属店、 ルイヴィトン、グッチ、カルチェ、クリスティアン・デイオール、 プラダ、セリーヌ、ランセル、ランバン、バリー、フエラガモ、 ヒューゴ・ボス、ジャンニ・ヴェルサーチといった高級ブランド。 CK,ベネトン、アニエス・ベー、アルマーニ・エクスチェンジ、ゲス、 ケネス・コール、ナイン・ウエスト、ティンバーランドといった若者ブランド、 エスプリ、エピソード、G2000、U2といった香港ブランド、 アクアスクータム、バーバリ、ダンヒル、といった英国ブランド、 マークス&スペンサー、レインクロフォードといった英国の百貨店も入っています。 そのほか、シテイバンクやHSBCといった地元の銀行、 日本料理店やスターバックスなどなど、その数およそ150店。 本場のアメリカのモールも顔負けするほどです。 奥方は、最初のうちは、目を輝かせて覗き込んでいました。 しかし、何軒か値札を確かめたあと、首を振ります。 わざわざ、店員にまで宣告します。 「アメリカのほうが、はるかに安いわ」 オトーサンも こうしたモールは、あまり好きになれません。 それぞれに趣向をこらした内装(什器、照明など)を競っていますし、 店員も粒ぞろいの美人軍団ですが、 お値段のほうもとびきり高く、 どこか近寄りがたいところがある上に、 インドアということもあり、 しばらくいると、息が詰まってきます。 そこへいくと 下町の市場はいいですよー。 活気があって、安くて、新鮮な驚きが詰まっています。 早くも、香港滞在は4日目になりました。 奥方は、朝9時頃、起きるやいなや、高らかに宣言しました。 「あたし、玉器市場にいってみたいわ」 オトーサン、女人街に行ったことだし、 奥方は、市場の喧噪はもういいのかと思っていたのでビックリ。 「また市場かよー。行き先くらいは自分で調べろよ」 と悪態をつきましたが、内心は大賛成。 ホテルのビュッフェ・バイキングで、 目の前で好みの具でオムレツをつくってもらったりして おなか一杯の元気をもらって出発。 玉器市場は、 油麻地という駅のそば。 香港では連日、九龍半島に通っています。 オトーサン、 地下鉄(MTR)の車内でぼやきます。 「こんなにしょっちゅう九龍半島に渡るのなら、 やはりホテルは、尖沙咀のほうがいいのかなあ」 スターフェリーで渡ったり、MTRで渡ったりしましたが、 さすがに面倒になってきました。 奥方が反論します。 「でも、今度のホテルは最高よ」 「そうだなあ」 オトーサン、たちまち、調子を合わせます。 まだ、午前中、 香港島がいかか、九龍半島がいいか、 そんな問題で奥方と戦端を開くことはありません。 「アイランド・シャングリラが尖沙咀にあれば、いうことなしだ」 玉器市場は、 大きなテント小屋のなかに50軒くらいの露店でした。 緑色のヒスイのまがいももの腕輪、首飾り、ネックレスの店がほとんど。 あとは、骨董品の小物。 すべてオトーサンには無縁のものもの。 奥方は、ヒスイの首飾りを買い叩いていました。 「まあ、こんなものだな。気がすんだか」 そういって、テントの外にでると、 前方に、市場。 通りの両側に八百屋、魚や、肉屋、乾物屋などの露店商。 およそ300メートルも続いているでしょうか。 野菜や果物の豊富なこと。 新鮮な菜の花がおいしそうです。 あまり見慣れぬ野菜もあります。 「マンゴーがあるわ。ここは本当に熱帯なのね」 地元の人は、食生活の面では、ほんとうに幸せです。 日本では、スーパーが数店と限られていて、競争がない状態。 新鮮な豊富な野菜・果物は、どうしても縁遠くなります。 肉屋が凄い。 大きな肉の塊が天井からいくつもぶら下がっています。 狭い金網のカゴのなかには、ニワトリがビッシリ。 「これ、みんな生きているのを買っていくのよね」 こちらのひとは子犬をみると、 「かわいらしい」ではなく 「おいしそう」というそうです。 台の上にごろんと転がっているのは、 鶏の生首かと思いましたが、 「ちゃんと耳があるわよ」 と奥方が叫んだのを見ると、犬かもしれません。 魚屋が面白い。 こちらは、ミニ水族館です。 水槽がずらっと並んでいて、いろんな魚が泳いでいます。 たらいの魚は、水がないのにバタバタ。 エビは、ピョンピョン跳びはねています。 オトーサン、 「おいしそうだなあ」 の声のすぐ後、驚きの声。 「ありゃありゃ、ウナギがいる。その横の縞のある長いのは何だ」 「ヘビよ」 そうなのです。 こちらのひとは、精がつくといって、ヘビも食べるのです。 乾物屋。 オトーサンたち、 めずらしい乾物に見とれて、 機内持ち込み可能な、日本宗谷産の貝柱の干物を買いました。 奥方は「大根と煮たら絶品よ」と大喜び。 200HK$分買いました。20ケ位あるでしょうか。 そのあと、別の乾物屋を通りかかったら、 「蝙蝠」 という字が目に入りました。 アジの開きを裏がえしにした大きさでしたが、 頭が付いていて、目がオトーサンをにらんでいます。 「こんなものまで食うのかよー」 そんなことで、 香港に来たら、絶対に、市場に行くべきであります。 とくに、サラリーマン諸兄! 「所詮、オレはカゴの鳥さ」なんて ブーたれているのだったら、 香港のカゴのなかの鶏を一度見てやってください。 自分がどんなにいい身分か分かりますよ。 人間に生まれたことの幸せを、しみじみと味わえるはずであります。


12 嗚呼、オーダーメイド

オトーサンたち、 この後、ようやくシェラトンホテルに向かいます。 ここネイザンロードは、香港で最も賑やかな通りではないでしょうか。 最初に、香港を訪れたとき、 空港からのバスがここを通ったのですが、 看板に仰天しました。 道路を跨いで、無数の巨大看板がせり出しているのです。 2階建てのバスのオープン・デッキに立ったりしようものなら、ゴツン確実。 でも、オトーサンたち、もう驚きません。 ジス・イズ・ホンコンのなつかしい風景です。 このネイザンロードの両側には、商店の列。 人波も途切れることがありません。 オトーサンたち、人混みに揉まれて進みます。 盗まれないように、肩かけ鞄を抱き締めています。 前方にペニンシュラホテルの優雅な白亜の宮殿が見えます。 シェラトンホテルは、ほぼ真向かい。 奥方が半分心配そうに、半分嬉しそうに言います。 「もう、出来上っているかなあ」 階段を駆け足で降りて、 地下のアーケードのミラノに急ぎます。 先客があって、鞄を見ている日本女性もいるではありませんか。 彼女ら2人が、奥方の晴れ姿を見る最初の日本人になるのです。 店主が、奥方の顔をみてニコニコ。 「できあがっていますよ」 早速、紙袋に包んだ鞄を取り出します。 それから、靴も。 「ありゃ、こんな色だったっけ?」 「そうよ、あなたがいいって行った色にしたのよ オトーサン、確か、黒にみえる青がいいといったはずでした。 そのほうが、飽きがこないと思ったのですが...。 奥方は、鞄の出来に満足して 靴の履き心地を試してみようとします。 ところが、女店員は 鞄と靴をもって、 ついていらっしゃいと促します。 やや! 店の外に連れ出すではありませんか。 連行先は、同じ経営者の別の店のようです。 カシミア製品を売っているのです。 そこで靴を取り出して、 やおら切り出します。 「どうぞ、履いてみてください」 奥方がうれしそうに、サファイアブルーの靴に足を入れます。 「あら、痛いわ」 店員は 「慣れれば、だいじょうぶですよ」 と言い張ります。 オトーサン、 これまでの経過をじっと観察していましたが、 なぜ店員が、別の店に連れてきたのか、その理由がわかりました。 「そうか、こんな風にお客が騒ぐと、商売にさしさわるんだ」 オトーサン 奥方に加勢することにしました。 「ああ痛い、いたい、いたーい」 中国語で「痛い」を何と言うのか知りませんが、 叫び声は万国共通で、何とか通じるものです。 女店員が、ようやく分かってくれて、 「1時間待っていただけますか? お直ししますから」 と言ってくれます。 オトーサンたち、顔を見合わせて、ニッコリ。 ところが、店主がやってきました。 「これ、きついわ」 と奥方。 「でも、慣れれば、きつくなくなるよ」 「だって、履いていられないくらい、きついのよ」 「ダイジョーブ」 まるで先ほどの女店員相手の会話のリプレイ。 大方のお客は、これで妥協してしまうのでしょう。 しかし、 オトーサンは、 平成の水戸黄門。 悪徳商人に出会うと、 コラシメテヤリナサイとすぐ自分に命じてしまうタイプです。 「ああ痛い、いたい、イターイ、ああイターイ」 段々、音量を上げることにしました。 これなら店の外にも聞こえるでしょう。 「ご内聞に」はもう古い、情報公開の時代です。 ついに、店主もたまりかねて、 「直しますよ。明日まで待ってください」 と言ってくれました。 オトーサンが、 「今、この人が、1時間で出来るといったよ」 と言うと、 店主は、鬼の形相で女店員をにらんで 「こいつは何も分かっていないんだから」 とぼやきます。 オトーサンの方を向いて、 「直すと、明日までかかりますが、いいですか?」 と聞くでは、ありませんか。 「そらきた、やっぱり」 オトーサン、にやりとします。 即座に「いいよ、明日またくるから」といいました。 店主があっけにとられたような顔をしています。 店を出てから、 オトーサン、奥方にいいます。 「1泊増やしておいてよかったな」 そうなのです。 大方の日本人の香港滞在は3泊4日。 オーダーメイド品を受けとるのは、大体、最終日。 直しなんかしようものなら、飛行機の搭乗時間に間に合わなくなるのです。 そこで泣き寝入り。 帰国してからの高い金を払って、お仕立て直しとあいなるのです。 さて、 オーダーメイドの後日談。 といっても、翌朝9時半ですが、 オトーサンたち、またシュエトンホテルのミラノに行きました。 「どうですか」 「これなら大丈夫」 と奥方。 そこで、双方、お手打ち。 オトーサン、 「ああ、ようやく一件落着か」 と思いましたが、ちがいました。 奥方が、したたかに粘るのです。 「たしか、るるぶには、買うとおまけで財布がもらえると書いてあったけれど」 といって、おまけを要求します。 店主もさるもの。 「嗚呼、忘れていました」 ワザと忘れていたのに決まっていますが、 ザルを取りだします。 なかには、いろいろな形の小銭入れがありました。 「どれにしますか?」 イチゴの形の小銭入れをゲットして、奥方ニコニコ。 店主もほっとして、ニコニコ。 でも、付け加えるのを忘れません。 「これで、オクサン、いつでも注文できるね」 オトーサンがけげんな顔をしているのを見て、奥方が小声でいいます。 「この前、住所を書かされたのよ。もし間にあわなかったら郵送するって」 オトーサン、 心のなかで拍手しました。 「さすが、香港商人。やるねえ。 でもなあ... もう駆け引きで儲ける時代ではないんだがなあ... 顧客満足の仕組みで儲ける時代になっているのになあ...。」


13 健康ランド、香港

オトーサンたち、 いよいよ帰国の日になりました。 4泊5日なんて、あっという間です。 「それにしても、よく歩いたなあ」 ひさしぶりに万歩計をつけて歩きました。 23日 23773歩 24日 17935歩 25日 20557歩 26日 23496歩 運動量十分です。 しかも、25日、26日と水泳もしました。 おかげで風邪も治りました。 水泳といえば、 オトーサン、 目の手術をした後、しばらく泳いでいませんでした。 最初予約していたマンダリン・オリエンタル・ホテルには、 インドア・プールがあって滞在客は無料と書いてありました。 「それじゃあ、泳がないっていう手はないよなあ」 オトーサン、いそいそと旅行鞄に水着を入れました。 ところが、あの騒ぎで、 マンダリンからアイランド・シャングリラに変更したら、 こちらには、インドア・プールがないのです。 屋外プールのみ。 香港は暖かいので、 無理やり泳げば泳げないことはないとも思いましたが、 風邪気味だし いったん鞄にいれた水着をしまい込みました。 ところが、 旅行寸前に買いこんだ「るるぶ」には、 「超高層ビルに囲まれたプールは年中泳ぐことができる」 と書いてあるではありませんか。 オトーサン、小躍りして、水着を旅行鞄に戻しましたよー。 「おお、屋外プールだ」 「青い水がきれいねえ」 8階にプールがありました。 屋外プールって、気持ちいいものです。 このアイランド・シャングリラのプールは、 楕円形で、全長28メートル。 深い場所で2.2メートル、浅いところでも1.3メートル。 水温は28度。 さすがに外気温は低くなっていますが、プールは適温。 オトーサン、夜景を見ながら泳ぎました。 クロールで左右、平泳ぎで前後の景色を見ます。 水面から頭をあげると真上にそびえる超高層ビルの屋上が オレンジの光の輪で彩られています。 前方には、青縞のデッキチェアと深紅のハイビスカスの花。 プールの底は、白いレンガ模様。 オトーサン、 貸しきり状態で泳いだ後は、 ジャグジープールでゆったりしました。 何と、洗面室とドライヤー室が分離しています。 これで、ドライヤーの後、足が濡れないで着衣ができます。 「よく考えているなあ」 青いタオルも、 白いバスローブも うず高く積んであって、使い放題。 実に、快適です。 「これで無料とは、利用しなけりゃソンだわ」 一方、奥方はマッサージの1時間コース、 オイルマッサージのあと、 希望を聞いてくれて、 疲れた足や肩を揉んでくれたようです。 お値段は、500HK$。 奥方は、「身体が軽くなった」と、ご機嫌です。 でも、 オトーサン、 「やっぱり水泳のほうが、安くて気持ちいいよなあ」: と思いました。 ええ、勿論、口には出しませんでしたよー。 だって、後がこわいもの。


14 香港〇級グルメ

オトーサン、 香港に最初に行ったときは、 グルメ探訪が目的でした。 でも、高い割にはうまくなかったり、 有名な割にはうまくなかったり、 期待した割には、どうってこたぁなかったりして、 今回は、A級グルメには見向きもしませんでした。 かっこよくいえば、ブランド物に飽きて、ユニクロにはまっているようなもの。 オトーサン、 今回は、〇級グルメを心がけました。 「〇級グルメって、どんなグルメなのかなあ?」 興味をそそられたかたは、以下をお読みください。 そうそう、忘れないうちに書いておきましょう。 香港では、水道水を飲むと下痢します。 そこで、初日は、香港のセブン-イレブンでヴィッテルの小瓶を買いました。 夜、歯磨きに使うとすぐなくなりました。 「困ったなあ」 でも、翌朝ホテルの冷蔵庫を覗くと 無料の蒸留水が大瓶2本も入っていました。 しかも、嬉しいことに、毎日補充してくれました。 オトーサンたち、水不足が解消して、一安心。 「このホテル、やっぱりいいなあ」 高級ホテルは、こうしたこまやかなサービスで勝負しているのです。 さて、香港全食事メニューを公開しましょう。 22日夜 尖沙咀の糖朝で4時頃おやつ代わりに、      カキと豚の赤身入りおかゆ     33HK$      蓮の実入りくるみのお汁粉     17HK$      黒ゴマ、餡入りの白玉       38HK$ これを奥方と二人で分け合って食べました。 「ここの品はみんなうまいよなあ」 あと、8時頃、太古広場のフードコートで       さつま揚げ入りうどん      44HK$ 23日朝 寝坊して食べる時間がなく、ホテルの部屋に     差し入れのウエルカム・フルーツで代用。      バナナ、りんご、オレンジ、キウイ  0HK$ 昼 ツアーの飲茶、まあまあの味でした。 夜 また、糖朝に5時頃、早めの夕食に行きました。      鶏肉入りワンタン         32HK$      菜の花炒め            35HK$      ニンニク入りの茄子の炒め物    25HK$ オトーサンの感想は「ここの麺類は、いまいちだけど、 200品揃えて、ほとんど美味いというのはスゴイよ」 24日朝 ホテルの朝食。パックには朝食込みだったことが判明。      ブレックファースト・ビュフェ   178HK$ 昼 天空海鮮酒家で2人分で      580HK$ 夜 流石に、食欲なく、ホテルの部屋で、買ってきた      餅菓子、エビ干物、りんご、バナナ  0HK$ 25日朝 ホテルの朝食。「今朝もお腹いっぱいよ」      ブレックファースト・ビュフェ   178HK$ 昼 油麻地の海皇粥店へ、「この前食べたらおいしかったなあ」      海皇一品粥            19HK$ 夜 太古広場のGREATで、      マーボドーフとライス       40HK$      コーラ               5HK$ 26日朝ホテルの朝食。「また、今朝もお腹いっぱいよ」      ブレックファースト・ビュフェ   178HK$ 昼前11時に、アイランドグルメでお茶。      ケーキ&コーヒー         80HK$ 昼 工展会の屋台で、座るところなく、立ち食い。 「このそば、マズーイ」「おもちは、まあまあね」      やきそば              8HK$      コーラ               5HK$      あんころもち、蓮の実入りのもち   5HKG オトーサン、 こう書き記してきて 「〇級グルメって書いてきたけれど、 満漢全席を食したわけでもなし... どう考えたって、グルメじゃないなあ。 わざわざ読んでもらうほどのこともなかったか。 でも、まあ、いいか。 オトーサンのオー(0)と書いたわけじゃなし...」 「お前、変なこと言い出したな。何のことだ?」 「いやあ、申し訳ありません。ちょっとイタズラしました」 皆様、よーく、オーの字をごらんください。 これ、オー(0)ではなく、丸(〇)ですよ。 最初のタイトルからずうっと〇になっているでしょ。 つまり、 今回の〇級グルメとは、 「NYでご入浴」で紹介した0級グルメではなかったのです。 食べ過ぎて、お腹をこわすようなみっともないマネはしない という意味の○だったのです。 つまり、健康にマル(○)っていうわけです。 年を取ってくると、何よりも健康が大事です。 外国に行ったら、好きなものをお腹いっぱい食べるなんて、 いまどき、流行りませんよ。 普段着の食事を心がける、これが一番です。


15 謎の帰国時間

オトーサン、 2日目のツアーの後で、 東洋旅行社のレスターさんに、 最終日の送迎について聞きました。 「香港出発は、午後4時30分だけど、 ホテルにはいつ迎えにくるの?」 「午前11時にホテルに迎えにいきます」 「どうして、そんなに早くなるの?」 「各ホテルを回ってお客様を載せて、空港にご案内します。 あとは、各自、ご自由に昼食をとって、出発までぶらぶらお過ごし ください。空港にはDFSもありますから」 オトーサン、 奥方にいいます。 「HISの送迎、11時ピックアップだとさ。 どうする?断ろうか?」 「当然よ」 「ホテルのチェックアウトは12時だから、 午前中どこかへ行って、午後は、すこしノンビリするか」 「そうねえ」 ということで意見が一致して、 レスターさんに、送迎不要と伝えました。 「あとで、問題になるといけないので、一筆書いてください」 「ああ、いいよ」 そういって、 「26日の送迎は不要です」 と書きました。 それにしても、ふざけた話しです。 空港まで1時間、2時間前にチェックインとしても、 3時間で充分。 午後1時半の送迎でいいはずです。 それを午前11時とは、どういうことでしょう。 謎の帰国時間です。 ところが、 奥方は、明解です。 「次の便を迎えにいくのに好都合だからでしょう」 「なるほどなあ」 それにしても、5時間半前に集合とは、ふざけた話しです。 おかげで、オトーサンたち、余分な出費が加わりました。 HISの猛省を促したいところです。 さて、オトーサンたち、 自分で空港まで行かねばなりません。 前回は、赤柱で寝椅子を買ってしまったので、 カオルーン・シャングリラ・ホテルの コンシエルジュに相談して、ミニバスを頼みました。 奥方に聞きます。 「どうする? エアポート・エキスプレスにでも乗ってみるかい?」 「どのくらいかかるの?」 「23分、ひとり90HK$」 「そうねえ」 前日に、下調べに中環から歩いて香港駅まで行ってみました。 20分おきに発車することも分かりました。 ホテルから無料で香港駅までのシャトルのあるのも分かりました。 「3時間前として、午後1時半にホテルを出発すればいいか」 「そうねえ。HISより2時間半儲かるわ」 「そうしよう」 ところが、 オトーサン、 当日の朝、朝食を取った後、 すっかり仲良くなったホテルのコンシエルジュに聞きます。 「このホテルからエキスプレスに行って、乗りかえるのは面倒だけど、 直通バスか何かないの?」 「ありますよ」 説明を聞くと、 タクシー:380HK$ リムジン:650HK$ バス:90HK$ の3つの方法があるとのこと。 「じゃあ、バスにする。出発時間は?」 「何時に出発の便ですか?」 「午後4時半」 「じゃあ、午後2時半でいいですね。予約しましょうか?」 「ちょっと待ってね。奥方に聞いてみるから」 「2時半でほんとうにダイジョーブなの?」 「ダイジョーブだろう」 「でも、万一何かあったら」 「じゃあ、2時半ではなくて、1時半のバスを予約してください」 さて、実際にどうなったかというと、 バスは、午後1時20分にはもう待っていました。、 乗客は、全部で5人。外人夫婦が2人。ビジネスマン1名。 運転手さんが、260ml入りのワトソンズの蒸留水の瓶を サービスで配ってくれました。 すぐ出発。 道は、がらがら。 シートは、リクライニング、しかもオットーマンつきです。 高速道路をぐんぐん飛ばします。渋滞などなし。 空港に着き、出国審査も終えて、 搭乗ゲートに着いたのが、2時半でした。 何と、出発の2時間前! オトーサン、奥方に抗議しました。 「やはりコンシエルジュの言うとおりにすればよかったなあ。 2時半のホテル出発で、らくらく間にあったじゃないか」 HISご都合時間よりも、 3時間半も少なくてもダイジョーブだったのです。 これだけあれば、旅行客は、もうひと遊びできるでしょう。 オトーサンたちの、 あとの2時間の過ごし方もご報告しておきましょう。 奥方は、 DFSめぐり。 「ねえ、いいお財布あったのだけど。 すこし香港ドルがたりないのよ、 あなた、確か、あまりのお金もってたわよね」 オトーサンは、200HK$を差し出しました。 警戒すべきは、HISだけではなかったのです。 皆さん、身内にもご注意を! その後、 オトーサンは、 がらがらの空港で、 椅子3つを占領して、お昼寝をしました。 それでも時間が余ったので、 パソコンを取り出して、 香港天空滞在記の続きを書いていましたよー。 旅行社が、 出発の2時間前迄に 空港に行けというのは、 どう考えてもおかしいと思います。 現にNYにいるわが娘などは、 「アメリカじゃあ、 出発の30分前でいいのよ。 オトーサンたち、バカみたい。 そんなに急いで空港に行くことないのよ」 といつも言われております。


16 ゆとりの2時間半

オトーサン、 「朝の起きかけの10分は貴重」 とよくいわれますが、 「帰国日の2時間半はもっと貴重」 と思います。 HISの極悪非道な11時ピックアップを拒否したおかげで いくつか貴重な体験ができました。 まず、朝8時、起きて、 「ホテル出発は午後1時半でよかったっけ。 じゃあ、ゆっくりできるなあ」 あらためて、うれしく思って、 プールにもう1回行くことにしました。 朝のプ−ルで泳ぐひとはいないらしくて、 貸しきり状態。 朝日が超高層ビルの壁に反射して、それはそれは綺麗です。 朝の空気も格別です。甘すっぱいのです。 泳いだので、朝食も格別おいしく食べられました。 何より、ジュースや果物類のおいしいこと。 次に、尖沙咀に出かけました。 奥方が直しを頼んだ靴を受取りにシェラトンのミラノに行く前に その手前の「高明眼鏡」に立ち寄って、度つきサングラスを受取りました。 「なに?お前もオーダーしたのか?」 「そうなんですよ。香港の職人は腕もいいし、安いですよ」 奥方が心配していた靴は、履きやすくなっていたので、 数分で引渡し式典が終わりました。 時計をみると、まだ9時35分でした。 「どうしよう? まだ、時間がたっぷりある」 「すこし、ペニンシュラ・ホテルでも覗かない?」 「ああ」 そういうことで 香港一歴史もあり、格式も高いザ・ホテルを覗きました。 1階のビュッフェでお茶でもしようかと思ったのですが、 日本人客で満員。みな朝食中のようです。 「バカみたい」 オトーサンも同感です。 ペニンシュラの名前にだまされて 景色も悪く、薄暗い食堂で、日本人に囲まれて 高い朝食を食べるなんてサイテーです。 HISかJTBか、どこか知りませんが、 旅行者の良識を疑います。 そこで、地下のアーケードを見学。 これも昔風、狭い店がえらそうにぎっしり。 「チョコレートでも買わない?」 「ああ、いいよ」 奥方につきあって、ペニンシュラの売店に入りましたが、 店員がお高く止まっていること、お値段がばか高いことに 驚きました。 「帰ーえろ」 スターフェリーで潮風に吹かれて、 10時半頃、金鐘の太古市場に戻りました。 出発がHISにまかせていたら、今頃、アタフタしているところです。 ところが、まだまだ時間が余っています。 「たしか、どこかにスターバックスがあったなあ」 「お茶でものみましょう。喉が乾いたわ」 2階にありましたが、超満員。 「やーめた」 そこで、ホテルに戻ることにしました。 「8階のライブラリーでお茶するか?」 「そうね、一度くらい、利用してもいいかもね」 行ってみました。 ところが、8階だと、景色が自分たちの部屋に較べて各段に悪いのです。 「これじゃあ、部屋のほうが増しよ」 「ちょっと待って」 奥方は、椅子の座り心地をチェックします。 「すごくいい椅子よ」 「でも、閑散としてさびしいよなあ」 「そうね」 「じゃあ、アイランド・グルメに行こう」 アイランド・グルメは、 5回の太古市場への連絡通路のそばにあります。 ケーキの売店のそばに小さなカフェがあります。 さして広くはありませんが、今日は空いています。 先客は2人。裕福そうなご婦人と子供。 白地に青い模様を散らしたテーブルクロスがかけてあります。 奥方にあわせてティーを頼み、 奥方は、チョコレートを2つ、 オトーサンは、モンブランを頼んで、感想を漏らします。 「ここのケーキ、おいしいなあ。 清春白樺美術館のパレットのケーキみたいだ」 「そうね」 他の誰にも分からない、私的会話で、申し訳けありません。 とにかく、おいしいのです。 時計を見ると、まだ11時ですが、 「そろそろ部屋に戻るか」 「そうね、12時チェックアウトだったわねえ」 部屋に帰って 窓際のテーブルに座って、りんごを食べます。 「いい景色だなあ」 このとき、奥方がご自慢のソニーのデジカメで撮った写真をご覧ください。 山がヴィクトリア・ピーク、下の緑が香港公園です。

オトーサンたち 30分ほど、天空に滞在していました。 HISご都合時間だと、 今頃は、ツアー客を拾うためにバスの車中。 ホテルめぐりをしていたところです。 危ないところでした。 12時にチェックアウト。 荷物はそのまま預かってもらい、セーフティ・ボックスもそのまま。 身軽なうえに、1時半までヒマです。 「どうしようか?」 「胴羅湾のほうに行ってみる?三越やそごうがあるらしいけど」 「行ったことなかったっけ?」 駅のほうに歩き出しました。 オトーサン、もう買い物はたくさんという気分です。 金鐘駅に向うと、人の流れが海のほうに続いていました。 「何かイベントでもやってるみたいだなあ。行ってみるか?」 「いいわよ」 広場では、工展会が開催されていました。 「晴海のモータショー会場みたいね」 ひとり10HK$を払って入場。 若いひと、家族連れ,老人さまざまな香港人で溢れています。 一通り、展示を見て回りました。 エレクトロニクス関連では、中国語の翻訳ソフトなどが目につきました。 ほかのは、中国語の説明なので、ちんぷんかんぷん。 よく分かるのは、漢方薬や食品や衣料品の展示。 これは、見ればすぐ分かります。 でも、女人街の露天商みたいで、どうってこたぁありません。 「飯でも食おうや」 パヴィリオンの外には売店の列がありました。 うどん、そば、肉、中華料理、コ−ラなどの飲み物。 「ヤキソバにするか」 奥方が買いにいき、オトーサンは、席を確保に走ります。 ところが、ひとが多過ぎるわりに席数が少ないのです。 結局、立ち食い、きゅうさいの青汁ではありませんが、 マズーイのです。コーラで流しこみましたよー。 「口直しに、何か買ってくるわ」 奥方がいいます。 意気揚々と買ってきたのは、蓮入りのお餅と大根餅。 一見まずそうですが、これがなかなかのお味。 「庶民は、こんなもの食べているんだ」 オトーサン、自分も庶民なのに、エラソーに言います。 「でも、こういう場所では、日本のカップ・ラーメンが一番ね」 「そうだなあ」 そんなことで、 HISを断って獲得した自由時間を有意義に使えたかどうかはともかく、 オトーサンたち、非常に満足して、香港を後にしたのでした。 まあ、ITだとか何とかいって、 ヴァーチャルの世界が尊重されていますが、 やはり、現地・現物・現実には敵いません。 香港は一番近い隣国のひとつ。 まだ行ったことのないひとは ぜひ一度行ってみたらいかがでしょうか。 小さいけれども内容が濃い都市なので いろいろな体験ができるはずです。

でも、旅行会社選びだけは、気をつけてくださいね。 折角の旅が台無しになります。


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