コーラン恋しや、イスタンブール


2010年6月下旬、
アテネからイスタンブールへ飛びました。
行ったことのないひとでも、
庄野真代さんの"♪飛んでイスタンブール"は、
ご存知でしょう。
東西文明が交わる歴史都市、
世界遺産の旧市街、現代が息づく新市街。
極めつきは、ボスポラス海峡に沈む夕陽...
永遠を感じさせる街の魔力が、
世界中のひとびとを引きつけています。
「お願い、行かせて! イスタンブール」
長女の懇願に負けて、ギリシャ観光の日数を削りました。
見るもの、聴くもの、食べるもの、
そして、お買い物を満喫しました。
テロにも、ぼったくりにも出会いませんでした。
ではでは...忘れえぬ旅へと出発進行!

目次

1 いいお部屋ね 2 アヤソフィア&ブルーモスク見学 3 ボスポラス海峡クルーズ 4 エジプシャンバザールで下見 5 トプカピ宮殿見学 6 グランドバザールでお買い物 7 最終日の過ごし方 8 すごい待遇だったな


いいお部屋ね

8時45分、イスタンブ−ル着。 長女がホテルに出迎えを頼んでくれていた。 ハンサムな青年が空港で出迎え、 ベンツのミニバンに案内してくれる。 「うわー、豪華なシートね」 10時15分、ホテルに着く。 「外観は大したことないな」 「ここは、ロケーションとサービスが売りみたい」 「あのさ、名前、何っていたっけ」 「シルケジ コナック ホテルよ」 案内されて部屋へ。 「いいお部屋ね」 「そうだね」

「インターネットはどうなっている?」 長女が説明してくれる。 「パスワードを入力すれば、お部屋で常時接続可能よ」 早速、試してみる。 「おお、すぐ接続した!」 早速、サッカーW杯の速報をみる。


アヤソフィア&ブルーモスク見学

6時起床。 ---起こしちゃ、可哀想だ。 トイレへ行き、ネット接続。 つれあいが起きたので、部屋のデスクに戻る。 スムースにHPがUPできたので、気分がいい。 8時、1Fレストランで朝食。 ホテルが路地裏にあるので、 窓からの眺めはよくないが、 朝食の内容は、なかなかのもの。 オレンジ・ジュースは絞りたて。 何杯もお代わりした。 パンに塗る蜂蜜にサプライズ! 蜂の巣から取った蜂蜜の大きなかけらを ウェイターが長さ50cm、高さ30cmの板に塗りつけ、 板を立てると蜜が垂れてくる。 「出遅れたなぁ」 それを写真に収めたかったが、 大皿に移されていた。

ここのブュッフェは、種類が多い。 ただし... ハムやベーコン類は、香辛料がきつい。 トルコ・コーヒーの味も、好き好きだろう。 お皿に大盛りして席についたところで、 長女がいう。 「明日は、雨だってさ。 トプカピ宮殿見学は、明日に回さない?」 「雨なの?」 「そう、ここに書いてある」 ホテルがDaily Newsを出していて、 そこに、天気予報が載っている。 博物館などの休館情報なども掲載している。 カラー4Pだ。 「こうしましょう。  午前中は、アヤソフィアとブルーモスクの見学、  昼からボスポラス海峡クルーズ。  余裕があったら、エジプシャン・バザールへ。  どう?」 「いいわよ」 つれあいは、原則、娘の言いなり。 ギリシャ観光でガイド役だった次女も賛成。 イスタンブール観光は、長女が仕切るのだ。 彼女は、徹底的にネットで調べてきたようで、 分厚いコピーを持っている。 観光情報だけでなく、トルコの歴史も含まれている。 地球の歩き方よりも、詳しい。 9時半、ホテルを出る。 「雨上がりで気持ちがいいね」 「涼しいな」 半袖、半パンをやめて長袖・長ズボンに着替える。 ホテルから坂道を50mも登ると、路面電車の乗り場。 電車は、現代的なデザインだ。

「いいロケーションだね」 500m歩けば、トプカピ宮殿。 アヤソフィア大聖堂は、その先200m。 両替所が駅のそばにあったので、 1万円をトルコリラ(TL)に換える。 1リラが60円ほど。

「あれがアヤソフィアか」 ミナレットという尖塔が異国情緒をかきたてる。 「きれいな公園のなかにあるのね」 「プラタナスの大木もある」 「あれがブルーモスクでしょう。隣り合ってるのね」 「ちっとも青くないね」 「内部が青いのよ」 てなことで、まずは、ブルーモスクへ。 「すげえ!」

モスクの内部は、イズニック・タイルが2万点以上貼りこまれ、 50以上の異なるチューリップや花、果物、糸杉がデザインされている。 窓は、200以上あって、複雑なデザインのステンドグラスだ。 シャンデリアは、ダチョウの卵を形どっており、 ランプは、金や宝石で覆われている。 貴賓席は、10本の大理石の柱で支えられ、 壁面の大きな銘盤には、カリフの名前が刻まれている。 動画で、モスクの内部を撮影する。 マイ動画のページへ 靴を脱ぎ、ビニール袋に入れる。 女性は、スカーフを頭にかぶせないと係員に注意される。 広い聖堂のなかは、すべて絨毯が敷きつめられている。 ロープが張られ、その内部で信者たちがお祈りしている。 注意書きを読まずに、 ロープのなかに入って撮影している観光客がいる。 ---宗教を大事にしろよ。 モスクのなかを一周した後、 絨毯に座って車座になっておしゃべりする。 わが家にいるような安心感がある。 11時、今度はアヤソフィアへ。 ビザンツ帝国時代にキリスト教の大聖堂として建造され、 オスマン帝国が占領してモスク(イスラム教徒の礼拝場所)に改造。 いまは、無宗教の博物館となっている。 動画で、大聖堂の内部を撮影する。 マイ動画のページへ 以前、NHKTVで見た映像通リの順番で、なぞっていく。 撮り終わって、絨毯に座っていると眠くなる。 外へ出て、売店のテラスで一休み。 コーラ・ライト(2.5TL)を飲み、 売店のお土産品のなかから橙色のボールペン(5TL)を選ぶ。 (いま、老人ホームのデスクに置いてある) 12時半、女性陣がやってくる。 「2階を見た?」 「見ていない」 「ダメよ、見ておかなくては」 次女に叱られ、大聖堂に戻り、 螺旋状の石畳の坂道を上って2階へ。 吹き抜けの回廊からは、モザイク画がよく見える。 ・聖母子と皇帝ヨハネス2世コムネノス、皇后エイレーネー(1122〜1134年) ---イスラム教の寺院に、キリスト教の聖母? オスマン帝国は宗教的に寛容だったのだ。 画面の全体は、マイ動画のページで紹介済みなので、 聖母だけを、そして目の周りをアップで撮る。 こうすると、モザイクの精密さが分かる。


ボスポラス海峡クルーズ

11時10分、路面電車に乗り、 シルケジ(Sirkeci)駅で下車する。 「出船が迫っているわ」 レストランめがけ、走っていく。 先日、ここで食べたサバ・サンドが絶品だったそうだ。 一緒についていくと、サバの切り身を焼いている。 いい匂いだ。 1ケ4TL、4人分で、16TL。 乗船して早速熱々を頬ばる。 「美味しいわね」 「美味しいわ」 B級グルメと割り切ってトライしてください。 船は、エミノニュ桟橋を出航。 尖塔のある市街地が遠ざかっていく。 若い男女は、キス。 老夫婦が肩を寄せ合っている。 爽やかな潮風を受けて、会話がはずむ。 「クルーズはいいね」 「すこし揺れるわ」 「本当に、晴れてよかったなぁ」 「豪華客船が間近に見えるわ」 「あれがボスポラス大橋、 日本の技術・資金援助でできたのよ」 「手前が、ドルマバフチェ宮殿よ」 「トプカプ宮殿ができるまでオスマン帝国の王宮だったやつか」 「壮麗ね」 「今回は行けそうもないけど」 「残念だね」

「あら、あの山の奥に霧が出てきたわ」 「いい感じね」 ところが、他人事でなくなった。 霧が海面までせり出してくる。

息つくヒマもなく、雷と豪雨。 「ディズニーランドの出し物みたいね」 「あはは」 撮影などしている場合ではない。 びしょぬれになり、さらに凍えてくる。 船室に逃げ込み、熱いチャイを飲む。 「おお、晴れてきた」 映画の場面が切り変わるように、 素晴らしい景色が展開しはじめる。 甲板に出て、身体と衣装を乾かす。 動画をチェック。 「まあまあ、良く撮れているな」 ボスポラス大橋を豆粒のクルマが通過していく。 マイ動画のページへ 3時半、エミノニュ桟橋に、帰着。


エジプシャンバザールで下見

「さぁ、エジプシャンバザールよ。  明日、グランバザールに行くから、  今日は下見、いいわね」 桟橋のすぐ前に市場の入口がある。 「うわっ」 雨がまた降り出した。 市場内のシェードの下を駆けぬける。 ついに金具屋さんの店内へ駆け込む。 店員は、迷惑そうな顔もしない。 こういう親切に出会うと、トルコ人が好きになる。 ようやく雨がやむ。 香辛料の匂いのなかを歩く。 「日本語の看板だ!」 流暢な日本語で、男性店員が トルコ石や絨毯の見分け方を教えてくれる。 「日本人の団体客は、まずカッパドキアに行くから、  何倍も高いものや偽物を買わされるの」 「ウチは、直接工場につくらせているから、安いの」 「買わないでいい、明日グランバザールを見てから、  戻ってらっしゃい」

エド松ちゃんを出て、ぶらぶらしていると、 盛んに日本語で声をかけられる。 「カラスミは、どう」 「何がほしいの?」 傑作だったのは、次のかけ声。 「モッテケ、どろぼう」 この声かけ、誰が教えたのだろう。 6時、タクシーでホテルに戻る。 「ティー・サービスがあるの」 お菓子とチャイをロビー奥の応接室で頂く。 「本当にいいホテルだね」 「空港からの出迎えもタダだったしね」 「明日の夕食もタダよ」 「へぇ」 「今日の夕食は、ホテル系列のレストラン。  10%割引よ」 「至れり尽くせりだね」 8時20分、オリエント・エクスプレスへ。 8階のテラス席で、夕食。 「海がみえるのね」 「ユリカモメが飛んでるわ」 注文したのは、 ・白ワイン ・ギリシャ風サラダ ・トルコ風ラビオリ ・ラムチョップ。 いづれも、上品ないい味だった。 9時15分、ひとり先に帰宅。 女性陣は、港に花火を見にいくらしい。


トプカピ宮殿見学

6時起床。 旅日誌を書き、HPにUP。 8時、1Fレストランで朝食。 長女が仕切る。 「今日は、午前中一杯、トプカピ宮殿見学。  お昼は、持ってきた食料を片付ける。  午後は、グランドバザールでお買い物、  いいわね」 「昼メシ、土地のものを食べなくていいのか」 「いいの」 9時15分スタート。 天下のトプカピ宮殿のオ-プンは、9時半。 団体客で行列ができる前に行くことにする。 「長いアプローチだなぁ」 ボスポラス海峡を望む小高い丘の上にあるから、 長い石畳の登りが続く。 「すばらしい公園になっているんだ」

有名な皇帝の門をくぐる。 宮殿の入場料は、15TLだった。 「また徴収するのか」 宮殿内のハーレムの入場料は、20TL。 中に入る。 スルタンが、ハレムの女に出会う情景が 再現されている部屋を通過する。 陰鬱にして淫靡、そして金の匂い。 石畳にも、紋様がほどこされている。

---いい気になりやがって。 「ここは、動画で撮っておこう」 一番の見ものである皇帝の間を撮影する。 マイ動画のページへ シャンデリアも尋常ではない。 イギリスのビクトリア女王からの献上品で、 バカラ製で、重さは何と5トンもあるとか。 「冷えてきたなぁ」 尿意を催し、困っていると、 警備員が、トイレは出口の外にあると教えてくれた。 残りのすべての部屋を駆けぬける。 「どうってことないトイレだなぁ」 用足をして、出口から再入場する。 つれあいも、トイレに行きたいと言い出す。 「じゃ、案内する」 何度も、ハーレムを歩きまわることに。 長女、 「今度は、秘宝館よ」 団体客が入ってきて、長蛇の列だ。 ようやく内部に入る。 ヒステリックな女性係員の声が轟く。 "No photo no video!" 第4館で、ようやくお目当ての秘宝に出会えた。 ・世界一大きいダイヤモンド ・トプカピの短剣 特に長さ35cmの短剣はすごい。 黄金色に光り輝いている。 柄の頭には、巻き時計が埋め込まれ、 柄には大きなエメラルドが3つ嵌め込まれている。

お次は、明るいところへ。 長女、 「ここが、絶景ポイントよ」 『眺めがいいわね」 つれあいは、撮影モード。

ガイドブックに書いてあるのだろう、 みんなが写真を撮っている。 ボスポラス海峡クルーズを堪能してしまったので、 さして感激しなかったが、いい景色だ。 一番いいところに宮殿を建てたのだ。 12時、宮殿を出てホテルへ戻る。 宮殿の城壁沿いに、物売り。 おばあちゃんと孫だ。 誰も買わない。 「気の毒に」 12時45分、娘たちの部屋で昼食。 「このホテル、湯わかし器もあるのよ」 熱湯を注いで、インスタントを食べる。 ・梅ワカメごはん 部屋に戻り、テレビをつける。 BBC放送に、見慣れた顔が映っている。 「おお、中田だ。英語の発音、うまいなあ」 日本がデンマークに勝ったので、 解説者として呼ばれたようだ。


グランドバザールでお買い物

次女、 「あのさ、  グランドバザールに行く前に、  シルケジ駅に寄ってみたいんだけど」 「なんで?」 「オリエント急行の終着駅で、記念館があるの」 「じゃ、15分だけ」 長女の許可が下りて、次女がほっとする。 ギュルハーネ駅からはたったの1駅だ。 「ここが、オリエント急行の終着駅か」

構内に小さな博物館がある 待合室を改装したもの。 昔のオリエント急行の実物が置いてある。 アガサ・クリステイの写真も。 数々の著名人が利用したレストランもある。 次女が盛んに写真を撮っている。 「Orient Express、いい感じね」 長女、 「さ、行きましょう」 2時40分、シルケジ駅から4駅目で下車。 舌を噛みそうな駅名なので、バザール駅としておこうか。 「おお、立派なもんだ」 貴金属店が並ぶ大通りがある。 「すごい人出だ!」

「まいったなぁ」 苦行の時間だった。 女性陣の買い物が延々と続くのだ。 1つの店だけで1時間の品定め。 立ち聞きする。 その理由がわかる。 品選びを口実に、おしゃべりを楽しんでいるのだ。

次第にいらいらしてくる。 「長いなぁ」 店主の老人や警備の警官と顔なじみになる。 目くばせや肩をすくめる動作をしてくれる。 どこの世界も、同じなのだろう、 男にとって女の買い物につきあうのは、苦行そのもの。 庄野真代さんの歌を思出す。 ♪恨まないのがルール 「オレも、すこし買い物するか」 ・背中を洗える棒つきたわし 7TL (帰国して使ったら、すぐに壊れた) ・自転車の模型 20TL (身体を壊して、自転車とは無縁に) ・小袋 2TL (安物買いの銭失い。どこへ消えたのやら) 3時、ようやく休憩。 まず、定番のチャイが出る。 アイスクリームと Baklavaというお菓子を注文する。 その間も、女性陣は、買い物の話し。 6時45分、ようやく買い物が終わる。

7時、ホテルに戻る。 7時半からホテルの好意で、オープンカフェへ。 「この夕食、無料なのよ」 ・白ワイン ・野菜スープ ・焼き魚(スズキ) ・デザート。 ホテルのマネージャーが顔をみせる。 冗談を言って笑わせてくれる。 なかなかの芸達者だ。 「ロシアに勝った日本、バンザーイ!」 その昔、トルコの宿敵だった日露戦争で、 日本が勝ったので、以来、親日家が多い。 ネコが寄ってくる。 「昼間、ギュルハーネ駅前にいた奴よ」 「絨毯屋の店先、絨毯の上で寝ていた」 「昨日は、ホテルの入り口にいたわ」 「イスタンブールは、猫の天国だな」 「ダメよ、餌やっては」 次第に冷えてくる。 長女がしかめ面をする。 「お腹が痛くなってきたから、お部屋に戻る」 「だいじょうぶ」 「うん、熱いシャワーを浴びてくる」 「じゃ、オレも部屋に戻る」 9時半から日本vsデンマーク戦があるのだ。 残念ながら放送していなかった。


最終日の過ごし方

4時半起床。 シャワーを浴びた後、すぐネットを見る。 ---おう、日本が勝った! ・日本 3 vs 1デンマーク 6時、長女を見送る。 一足先に、ニューヨークへ戻るのだ。 「また来たいわ。次回はゆっくり」 しばらく逢えないと思うと、胸が痛む。 7時、起床。 旅日誌(6月24日分)を書く。 9時、朝食の席で。 「2人で買い物に行ってくる」 「どこへ?」 「エジプシャンバザール」 「ああ、エド松ちゃんの店か」 部屋に戻って、旅日誌の続きを書く。 11時15分、2人が戻ってくる。 「エド松ちゃん、行ったかい?」 「行かなかった」 「何、買った?」 「...」 つれあいの頭は、荷づくりで精一杯のようだ。 12時、チェックアウト。 荷物をホテルに預ける。 4時半まで自由時間がある。 最後の観光だ。 これからは、次女が仕切る。 「地下宮殿をみましょう」 「何それ?」 「昔の貯水池、  メドゥーサの首があるんだって」 「ホテルの傘、借りていこうかな」 「いらないわよ」 「降りそうだ」 結局、持たないで出る。 滞在中、 何度も路面電車と城壁の間の道を通ったが、 次女の提案で、静かな脇道に入ってみる。 宮殿警戒中の若い警官に出会う。 怪しくない一行とみてか、 気軽に写真撮影に応じてくれる。 植物好きのつれあいが 邸宅のぶどう棚に気をとられている。 それをみて、房のありかを指さし、 房を採って、食べてみろと差し出してくれる。 美味そうなフリをすると、喜んでいる。 実は、テロが起きたのだ。 ・イスタンブールで爆弾テロ、兵士ら4人死亡  22日、西部ハルカリ地区で  軍関係者が乗ったバスを狙った爆弾テロがあり、 兵士3人と17歳の兵士の娘、  計4人が死亡、12人が負傷した。  トルコでは分離・独立を目指す  クルド人武装組織PKKと軍の衝突が激化。 軍は大規模な掃討作戦を展開しており、  報復テロの可能性がある。  (読売 6月22日) 次女、 「こんなところに出るのね」 「あそこが、ブルーモスクの入口よね」 「帽子を高く売りつけられた場所だ」 20TLで買ったが、5TL程度の代物だった。 「焼栗、食べてみたいな」 「でも、一山買うのもねぇ」 次女が交渉して、3ケ5TLで買うのに成功する。 「うまい」 野趣のある味だった。 「ここ、いい通りね」 両側に、すてきなレストランが並んでいる。 「ここで、昼飯食うか」 「まだお腹、空いてないわ」 「あたしも」 2対1で、動議は否決される。 レストラン街の先に、土産物屋がある。 ショーウィンドウの鞄に目が吸い寄せられる。 若い店員に値段を聞く。 「ワタシ、日本語、勉強中です。教えてください」 無理やり店内に案内される。 この野郎と思うが、人懐こい笑顔に負ける。 ひとつだけ教えてあげる。 ・OHAYOU = good Morning 発音がおかしいので、訂正する。 出ようとすると、日本人女性が入ってくる。 大阪のOLで、前回イスタンブールで知り合った ハンサムなイラン人男性を訪ねてきたという。 「こんな時期によく休暇がとれたね」 「いいんです。いつも超過勤務しているから」 「オレたちの頃は、いくら超過勤務しても、 長期休暇なんかくれなかったけどな」 次女、 「出ましょう」 「何も買わなくていいのか」 「いいの」 外は、すごい雨。 「傘、借りてきてよかったな」 「隣の店に入りましょう」 55TLの財布を30TLまで値切って買う。 次女はスカーフを買う。 ようやく雨が小降りになったので、 小径に入る。 右手に素敵な絨毯屋があった。 若い店員は、日本に行ったことがあるという。 "Are you single?" "Yes" 次女をみて、にこやかな顔になる。 言い寄る気かも。 「こちらへどうぞ」 店の裏に防空壕があって、 ずんずん階段を降りていく。 地下には部屋がいくつもある。 説明板もあった。 「ここも地下宮殿のようだな」 さらに進んでいき、階段を昇る。 「おお!」 レストラン街に面するレストランだった。 次女を青年の横に立たせて、記念写真を撮る。 次女が宣告する、 「地下宮殿の見学はやめましょう」 「えっ、楽しみにしていたのに」 「ここで、大体分かったわよ」 「じゃ、そこらでメシ食おうや」 「だめ。こんなところじゃ。  イスタンブールで最後のご飯だからね」 「そうよ、そうよ」 2対1で、再度、動議は否決される。 ホテルの裏手まで戻る。 「ここにしましょう」 ・The Han Restaurant 店先で、民族衣装の女性2人が トルコ風のパンケーキを焼いている。 店内は、一風変わっている。 中央はテーブル席だが、 両側は、座敷となっている。 日本の座敷とちがうのは、 絨毯の上に座布団のような平たいソファがあり、 壁にはクッションがたくさん並べてある。

「快適ね」 「みて!」 ドイツ人の若者は、靴を履いたまま。 「連中、あぐらをかけないんだ」 膝を立てたり、足を投げ出したり、 日本人の常識からすると、無作法な座り方をしている。 ところで。肝心のパンケーキ。 冷えていて、いまいち美味くない。 「このクレープ、熱々ね」 ・きのこ入りスープ 「いろんな味が楽しめていいわね」 「盛り付けも素敵ね」 ・MIX MEZE PLATE ナス、トマト、ニンジン、青豆をすりつぶし、 オリーブオイルで味つけ。 キュウリは、すりつぶしたあと、ヨーグルトで味つけ。 それらのペーストが、大皿に星状に並べてある。 女店員おすすめのデザートが、絶品だった。 3時半、ホテルに戻る。 昨夜の猫を路地で見かける。 「あいつ、行動範囲広いな」


すごい待遇だったな

4時、クルマが来る。 タクシーは高いからと言って、 マネージャーが知り合いのクルマを呼んでくれたのだ。 「これ、おみやげ」 スタッフ全員で、お見送り。 空港へ向かう車中の会話。 「すごい待遇だったな」 「4人で3泊もしたんだもの。上客よ」 「異常だよ、このもてなし」 「ベッドカバーも、格安で売ってくれたしね」 「えっ、そんなことまでしてくれたのか」 4時半、空港でチェックイン。 買い物を詰めこんだスーツケースは、 幸い、超過料金を取られなかった。 係員が親日家だったのかも。 次女が最後の仕切り。 「これから自由時間、6時に搭乗口で」 つれあいとVIPルームに行ってしまう。 「しょうがねぇな」 お茶でも飲もうとすると、一文なし。 さっきのレストランで、 次女に言われて、 小銭をすべて出してしまったのだ。 「トルコ・リラ、残したってしょうがないでしょう」 両替所で1000円をTLに交換する。 「これで、どこでも飲める」 インターネットがやれるカフェを発見。 ようやく席を確保するが、 料金表をみると、足りない。 別の安いカフェを探しあて、時間つぶし。 隣りは、4人連れ。 女性3人がおしゃべりに熱中 旦那は置き去りにされ、仏頂面。 「女は、想像力がないのかな、  相手の立場に立つ心の余裕がないのかな、  所詮、女は、自己中心主義の生き物なんだ」 免税品店の時計コーナーへ。 「うわぁ、この時計、3000ユーロだ」 1ユーロ116円とすると、35万円。 100円ショップの時計で満足している身としては、 こんな高いものを買う奴の気がしれない。 「こいつは77ユーロか、気になるデザインだね」 のぞきこんでいると、 ビジネス・エリートが隣にやってくる。 女店員を呼び、その品を買ってしまう。 空いたスペースを眺める。 「カードなら買えるな」 気をとりなおして、買うことに。 幸い、同じものがあった。 ・Fossil Digital Watch JR9455 (この買い物も失敗だった。 使い方が分からぬし、重すぎる) 現地時間6時、日本時間12時。 成田行きTX050便に搭乗し、 12時30分、成田着。 曇り、気温29度、蒸し暑い。 1時40分、京成バスに乗って柏駅へ。 2時間後、ようやく柏駅西口着。 タクシーに乗る。 女性運転手が話しかけてくる。 「どのくらい海外に行ってこられたのですか?」 「2週間」 「いいご身分ですね」 「...」 「頑張られたからでしょう」 「...」 4時、わが家に戻る。


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