LOOK号との楽しい日々

オトーサン、 68歳を控えた2006年11月、 ヒルクライムのメッカ、不動峠を レーヴ号でアタックしました。 1年後、LOOk号で再アタックしました。

目次

1 まずは、大池公園へ

2 不動峠を登るぞ!

3 フラワーパークへ

4 恋瀬川サイクリングロードへ

5 LOOK585に恋して

6 585オプティマム発売

7 サドル選びは難しい

8 朝練の日々

9 LOOK585を仕立てる!

10 わがLOOK585で走る

11 朝練の日々、関宿城へ

12 COSMOS号のこと

13 朝練の日々、大雨被害

14 不動峠、アゲイン

15 りんりんロード

16 真壁を散策

17 平四郎最中

18 法身性西禅師伝


1 まずは、大池公園へ

11月10日-1 快晴。 不動峠を登るぞ! ここは、筑波山ヒルクライムのメッカ。 昨夜からワクワクして眠れない。 国土地理院の地図を張り合わせたり、 コースをチェックしたりする。 大池公園から不動峠までの距離は、 3.9kmだ。 ---ひとっ走りじゃん

9時10分、早目に家を出る。 東武・野田線に乗り、 おおたかの森駅で、 つくばエキスプレスに乗り換える。 前年に開業したばかりだ。 真新しい車両は、揺れが少なく快適だ。 おまけに下りだから、ガラガラ。 自転車を前に置ける。

19分で、つくば駅に到着する。 改札をぬけ、階段をのぼって、外へ出る。 輪行袋を開け、レーヴ号を組み立てる。 わが最初のロードレーサーだ。 ・米KLEIN/ 9.4kg/30段変速

---さぁ、走るぞ! 行く手には、学園都市の広々した中央通り。

すぐに左折し、学園東大通りへ。 両側には、研究施設が次々と現れる。 ---筑波大学だ! 同僚のkさんが、在籍していた。 筑波大学を通過して、北上を続け、 一直線に筑波山をめざす。

---いい景色だな 両側は、刈り入れの終わった田圃。 皇室献上米だったこともある「北條米」の産地だ。


1 不動峠を登るぞ!

11月10日-2 11時25分、大池公園に着く。 走行距離14.91km。 桜の名所だが、秋も風情がある。

トイレのあと、おにぎり2ケを食べる。 いよいよ不動峠アタック開始だ。 起点は、関東ふれあいの道の標識。

---大したことないじゃん 最初の1kmほどは、直線で、傾斜もゆるい。 時速20kgほどで走れる。 だが、カーブがはじまる。 傾斜がきつくなり、見通しも悪くなる。 いつ対向車が飛び出してくるかもしれないので、 速度を上げられない。

ギアを一番軽くし、速度を8-10km/hに落とす。 上体の力をぬき、深呼吸しながら前進する。

---山らしくなってきたな。 2車線が、1車線になる。 車は、すれ違えない。 くねくねが続く。 段々キツクなってきた。 右手をみると、眼下に平野がひろがっている、 ---いい景色じゃん、一休みするか。

水を飲みたい誘惑に負けず、 止まらずに頂上まで行くべきだったが、 息が苦しいし、脚も重たい。 結局、3回も休んでしまう。 勾配6-8%だが、 最後のトドメに、10%という標識がある。

ようやく不動峠の頂上に着く。 残念ながら見晴らしはよくない。 表筑波スカイラインの高架下ときている。 腕時計をみる。 ---32分かかったか 猛者は10分で登り、初心者なら30分と 聞いてきた。 サイクルコンピュータをみると、 ジグザグ走行をしたので、 3.9kmのところが、5kmに増えていた。 ---研究不足だった! 大池公園から不動峠までの標高差270m、 高尾山以下と見くびっていたが、 とんでもない。 不動峠までの勾配を事前に研究し、 手賀沼付近の坂で、 シミュレーションしておくべきだった。

汗を拭き、水を飲んで休憩すると、 欲が湧いてくる。 ---次は、20分台で登りたいな 登坂には、ビンディング・ペダルが必要かも。 スキー板と靴を結合するのと同じように、 靴底の金具とペダルを合体させると、 踏むだけでなく、引き足も使えるので、 だいぶラクになる。 ただ足が外れないと止まったらコケて 怪我する恐れがある。 慣れるまで練習することが必要だ。


3 フラワーパークへ

11月10日-3 つくば駅からの走行距離は、まだ19.91km。 大池公園に戻ることも考えたが、 まだ体力も残っているので、 オプションを行使することにする。 用意してきた地図をチェック。 フラワーパークを目指すことにする。

---さあ、下りだ。 急坂でカーブが連続する。 自動車がきたら危ない。 ブレーキが効きやすいように、 ハンドルの下を握る。 ブレーキレバーから手を離すと、 猛スピードになる。 最高速度33.2km/h。 ブレーキをガツン、ガツン! 指が痛くなってくる。 杉林のなかは木漏れ日が美しい。 日陰なので、身体が冷えてくる。

3kmほど下ると八郷の里に出た。 開放感がたまらない。 刈り入れの終わった田圃が広がる。

緩やかな勾配の直線路を飛ばす。 ハイスピードに慣れてきた。 最高速度37.3km/h。 右手に製材所があった。 積んだ材木の匂いが鼻をかすめる。

12時44分、138号線に出る。 ここまで、24.87km。 不動峠で出会ったオートバイが 追いついてきて、声をかけてくる。 「早いねぇ」 八郷の田園風景をのんびり走る。 138号線は、フルーツラインというらしい。 路面に、そう書いてある。 あちこちに、いちごの直売所がある。 シーズンが終わったか、クローズしている。 水分補給にいいのだが、残念。 ウソのようにクルマが少ないが、 休日になれば、フラワーパークに行く観光客や 柿、梨、りんごなどを求める観光客で、賑わうようだ。

フラワーパークに向かう交差点。 中村屋食堂の看板がみえる。 ---腹減ったな

客は、いるはずないと思ったが、 工事関係者がいた。 手打ちのざるそば(400円)を注文する。 食堂の親爺さんに聞くと、 しし鍋やしゃも鍋を食べに、 遠くからくるひともいるらしい。、 食べ終わって、フラワーパークへ向かう。 ---ここか 世界中のバラを集めているらしい。 駆け足でみても、1時間はかかるだろう。、 先を急ぐので、パス。 ---次は、車でこよう 花好きのつれあいが喜ぶだろう。


4 恋瀬川サイクリングロードへ

11月10日-4 ---恋瀬川、ロマンティックな名前だな 恋瀬川に、サイクリングロードがあるというので、 無性に行ってみたくなった。 恋瀬川の源流は、加波山。 こんな興味深い記述がある。 「郷人達、伊勢に詣で、 五穀豊作、水量豊富を祈念し、 小伊勢神社として御神徳を仰ぐ」 加波山神社は、伊勢神宮の分社なのだ。 常陸国の国司補佐・大江政国の息女が、 加波山に登った時に、小伊勢を恋瀬と読みかえた。 後醍醐天皇が作らせた「続後拾遺和歌集」には、 彼女が詠んだ和歌がある。 ・恋瀬川 浮名を流す 水上も      袖にたまらぬ 涙なりけり フラワーパークから、 恋瀬川サイクリングロードへの近道を行く。 なるほど中村屋食堂の親爺さんが教えてくれた 真新しい道路がある。 右手の丘の上に八郷南中学校の校舎がみえる。 車がまったく走っていない車道を飛ばす。 税金のムダ遣いとも思うが、実に爽快だ。

八郷南中学校の校歌。 ♪萬古ゆるがぬ 筑波嶺と  流れも清き 恋瀬川  学びの庭に 友として  知識の泉 掬みとらん そんな雰囲気を味わいながら、 恋瀬川を探し求めて八郷盆地を走る。

道が細くなったので、 右折して広い道路へ向かってみる。 さらに右折して、河原がありそうな場所に出る。 ようやく細い川が見える。 ---これが恋瀬川か?

サイクリングロードを発見! 1時35分、つくば駅から31.49km。 あとは、川沿いに淡々と走るだけと思ったが、 サイクリングロードは、竹林に入っていく。

---お、急坂か? 短いが、斜度が10%ある。 勢いをつけて登りはじめ、立ち漕ぎで乗り切る。

鬱蒼たる森を潜ったり、 ダートになったり、広々とした田畑に出たり、 かなり変化があるサイクリングロードだ。 振り返ると、背後の加波山が小さくなっていく。 恋瀬川も、その幅を広げ、 葦の枯れ色を愛でる余裕が出てくる。

常磐道、国道6号の高架下をくぐりぬける。 ---水たまりがあるぞ メンテにも、お金を回してほしい。 ---あれが高浜駅かな。 左岸を走ってきたので、行き止まり・・・

---どうすりゃ、いいのさ 田圃の中を突っ切って、県道118号に出て、 踏切りを渡って戻る。

何の変哲もない駅がある。 常磐線の高浜駅着は、2時30分。 つくば駅から44.19km。 距離は少なかったが、波乱万丈だった。

列車は、2時35分発。 自転車に袋をかけただけで飛び乗る。 車内で、きちんと収納する。 一息ついて、車窓から加波山を眺める。 ---なるほど、常陸国風土記の通りだったな ・源は筑波の山より出で、西より東に流れ、  郡の中を経めぐりて、高浜の海に入る。 つまり、霞が浦に注ぐ。 恋瀬川サイクリングロード、 機会があったら、 源流の恋瀬神社から 終点の霞が浦まで走ってみたい。 2駅先の土浦駅で乗りかえて柏駅へ。 ---2時間半もかかるのか。 あとは、自宅まで走るだけだ。


5 LOOK585に恋して

2007年 7月20日。 昨年11月の不動峠アタックから、8ケ月。 ---LOOK585を見に行くぞ! 自転車雑誌を読んでいたら、 「峠の585」の異名をもつ ヒルクライムに強い機種があるという。 9時、ミニベロ号でスタート。 これは、ビアンキの小径車で、 チェレステ・ブルーが、実にいい色だ。 その由来を知ると、たまらなく欲しくなる、 ・ビアンキ(BIANCHI)は、イタリアの自転車ブランド。  チェレステという色が有名。  ミラノのマルゲリータ王妃の瞳の色から取ったとか、  ミラノの空の色を見て現地の職人が  毎年、その色を調合する。 アルミフレームで、20インチ、16段変速。 重量は、11.5kg、 街乗り用に、ドロップハンドルを フラットに改造してもらった。

9時35分、 松戸排水機場から 江戸川サイクリングロードに出る。 いつもの国道6号ルートを使わずに ちがう道を走ってみる。 このバイク、加速はいい、 ハンドル操作がクイックだが、もう慣れた。 ただ、段差に弱いのが難だ。 水元公園を経て、金町駅北口へ。 10時20分、中川の飯塚橋を渡る。 その後、迷いっ放し。 首都高・加平入口を経由し、環七へ。 見慣れた日光街道にようやく出る。 11時30分、33.59km、 都電荒川線・三ノ輪駅に着く。 隣接して、下町の商店街・ジョイフル三ノ輪。 長いアーケードを100mほど入ると、 老舗「砂場」がある。 一見、町のお蕎麦屋だが、あなどれない。 創業は、天正元年(1912年)、 砂場150軒の総本家なのだ。 お目当ての天ざるを注文する。 そばも、つゆも、美味い。 立教時代の長島の写真が飾ってある。 店主は、昭和30年代で、時間を止めたようだ。 大満足して、自転車を探す。 ---あった! 盗難が心配だったが、 小径車は、繁華街でも目立たない。 ---もうすぐだね 隅田川にかかる白髭橋を渡って、 墨堤通りを浅草方面へ。 12時30分、39.46km、押上駅。 すぐそばに、寺田商会がある。 小さなお店だが、 店主の寺田光孝さんの腕がいい。 応対も丁寧で、親切だ。 「LOOK585、用意しておきました」

---これが、LOOK585か。 じっくり眺める。 カラーがいいし、塗装もいい。 トップチューブが扁平なのも、いい。

普通、こうした高級車の試乗はムリだが、 幸い試乗させてもらえた。 購入者の社長さんの了解をとってあるそうだ。 お店の周囲を走ってみる。 ビアンキは、踏みはじめが少し重いが、 LOOK585は、踏んだ分だけ機嫌よく前に進む。 路面の段差や凹凸のよる振動をすぐに吸収する。 乗り心地は、硬い感じがする。 フレームがアルミではなく、カーボンのためだろう。 ---LOOK585、いいなぁ。 高級なロードバイクには、はじめて乗ったが、 こうも違うものか。 重量を計測してもらう。 「6.5kgですね」 「6.5kg!」 ミニベロ号は、 バッグなどを装着して、13kgあって、 両手でなければ持ちあげられないが、 LOOK585は、片手でOKだ。 「チョー軽いね」 これなら、輪行も楽だし、 不動坂も、楽々登れそうだ。 「お値段は?」 「120万円になりました」 「120万円!!」 ママチャリの100倍のお値段だ。 1時間ほどお邪魔し、 光孝さんの父親・好孝さんに挨拶して、 寺田商会を後にする。 国道6号沿いに松戸へ向かう。 中川を越え、江戸川を渡れば、松戸市街。 常磐線の線路沿いに、馬橋駅東口へ。 "ルフラン"で、いつもの席で休憩し、 ケーキセットを食べる。 もらってきたカタログをじっと眺める。 至福のひとときだ。 3時37分、帰宅。 走行距離64.83km、最高速度38.7km/h、平均速度15.1km/h。 習慣になっているバイクの手入れをする。 これは、寺田さんのアドバイスだ。 夕食後、あらためて自転車雑誌を読む。 ---フランス製というのがいいね ・LOOKは、フランスの高級ロードバイクブランド。 カーボンフレームを用いたロードバイクの老舗で、 プロレースでも多数の優勝実績を挙げている。 1951年、スキー用品メーカーとして設立され、 1984年、ロードレース業界初のビンディングペダルを発表。 カーボンフレームを量産した最初のメーカーである。 先端技術をいち早く採用し続けている。 ベルナール・イノーによるツール・ド・フランス総合優勝へ貢献した。

(株)ユーロスポーツが輸入代理店となっている。


6 585オプティマム発売!

7月23日。 ネットで、"Road Bike Review"を読む。 LOOK585のユーザー評価が、20件載っている。 いずれも満点で、ベタぼめだった。 登坂性能だけでなく、下りの評価が高い。 一例をあげると、 "It climbs so well; all the power seems to go to the road. Descending is super predictable, just counter steer and follw the line through I already hit 55mph descending hill only on my second ride." (登坂力に優れている。 すべてのパワーは、道路に向かう。 下りは、予測しやすい。 ステアリングは、ラインをフォローする。 2度乗っただけなのに、 下り坂で、55マイルを記録した。 ---時速88km、ほんとか? こんな投稿も。 "I just finished the Seattle to Portland ride in one day, 204 miles, it was flawless after 10.5 hours on the bike." (シアトルからポートランドまで、  204マイルを一日で走った。  10時間半乗ったが、カンペキだった) ---1日で326km? 平均速度を計算すると、31km/hになる。 すごいひとがいるもんだと感心しながら、 サイクルウェアを洗濯する。 お尻の痛みを軽くするために、 レーパンやインナーパンツを買った。 おむつを当てるようで、 最初は気恥ずかしかったが、いまや必需品だ。 ただ、パッドが入っている分、渇きが遅い。

8月1日-1 ---朗報だ! LOOK585の2008年モデルが出て、 コンフォートバイクが追加されたらしい。 雑誌には、こう書いてある。 ・LOOK585 オプティマム  短いトップチューブ(T)と 長いヘッドチューブ(H)を採用したので、 リラックスしたポジションが取れるため、 女性や小柄なライダーや長距離クルージングをするひとに 最適(オプティマム)な仕様です。

コンフォート・モデルは、 マウンテンバイクで流行していたが、 ロードバイクでも、発売されるようになった。 レーシングモデルでは、空気抵抗を減らすために、 きつい前傾姿勢が必要だが、 一般の人は、スピードが多少落ちても、 長く楽に走れて身体に優しくい コンフォートモデルが向いている。 ---フレーム価格は、36万円か。 高級車は、まずフレームを選んで、 それに、好みのパーツ類をつけていくのだ。 決して、安い価格ではないが、 パーツ類を抑えれば、手が届くかも知れない。 ---銀行に行かなくては。


7 サドル選びは難しい

8月1日-2 自転車雑誌に、こんな記事が。 ・サドル選びは、大事だ。  ママチャリのサドルは、  近距離や短い時間で乗る分には快適だが、  長いこと乗ると、欠点があらわれてくる。  あんこ(クッション)が、数cmしかないので、  底付きして、お尻が痛くなるのだ。 乗り始めだから、筋肉ができていない、  そう思ってムリを続けると、  尿道などの鈍痛が続き、治るのに数日かかる。  下手すると、尿道炎や前立腺炎になりかねない。

 そこで、お尻を浮かせて、  段差や凹凸を乗り越えたり、座位をずらしたりする、  信号待ちなどを利用して、頻繁に自転車から降りる。  これらは、所詮、小手先の対応だ。 この記事に触発されて、 サドル選びがはじまった。 セオサイクル新松戸店に寄って、 ジェル入りのサドルを買ってみた。 使ってみると、いまひとつピンとこない。 妙にずれるのだ。 「これ、評判いいですよ  空気量の調整ができます」 次に、勧められたのが、 ・UNICO UNICO Dr.Air エアーサドルカバー

数千円なので、買って試してみる。 だが、これも所詮、街乗り用だった。 ---弱ったなぁ そんな気持ちでいたとき、 自転車雑誌のサドル特集に出合った。 サドルは柔らかい方がお尻が痛くならない これは、大きな間違いだ。 ある程度、固いほうがお尻が痛くならない。 坐骨(お尻の最下部の骨)の幅は、ひとそれぞれ。 自分にぴったり合うものを探すべきだろう。 各社の新製品が紹介されていて ロードレーサーが推薦するサドルも載っている。 ---フィジークか   そういえば、寺田さんが褒めてた

・fi'zi:kはイタリアを代表するサドルメーカー、  セラロイヤル社のハイエンドブランドです。  50年以上世界をリードしてきました。  プロユースはもちろん、シティ向けサドルも生産し、  多くのサイクリスト達をサポートし続けてきました。  fi’zi:kサドルの名作、ARIONEシリーズは、  十分なパッド量を持ち快適性も損なわれていません  適度なしなりを生み、乗り心地の良さは保証済み。  ロングライドにおける尾てい骨周りの痛みは、皆無。  前後のポジション移動も容易です。 ---まるで、美術品だ 何という美しさだろう。 こんな優美なサドルは、見たことがない。 以来、"fi'zi:k ARIONE"が頭から離れなくなった。 重量は、236g。 上位グレードは、 レールもシェルも、カーボンなので、100g台だ!

上手にロングライドをしたい! サドルにばかり頼るのでなく、 お尻が痛くならない、根本的な方法はないか。 そんな悩みを解決する本が出た。 ・エンゾ・早川「ラクダのコブのある自転車乗りになりたい」  双葉社 2007年 彼は、茅ヶ崎の自転車店主で、 ツール・ド・箱根を主催し、 健脚を誇り、健筆を揮っておられる。 ロードバイクで走り続けると、 腕、腰、足の3点で体重を支える基本が乱れて、 どっこいしょと腰を下すフォームになり、 お尻が痛くなってくる。 ラクダのコブをつくって乗れ、 つまり、骨盤を立てて乗ることが大事なのだ。


8 朝練の日々

8月7日-1。 5時、手賀沼へ。 車から自転車を下して、 ひどり橋をスタート。 夏の練習は、涼しい早朝に限る。 邪魔するひともいない。 手賀沼は、わが家から自転車で30分。 北岸は、遊歩道だが、 20004年、南岸によく整備された サイクリングコースができた。 手賀沼一周20kmをホームコースにしている。

この時間、朝日がまぶしいが、 エンゾ・早川さんの教えに沿って、 骨盤を立て、背筋をきちんと伸ばして走る。 胸を張るから、肺活量も増える。 この姿勢に慣れてきたら、 腕を前方に軽く投げ出すようにする。 ---乗車姿勢って大事だよな お尻も手も腕も、痛くならないので、 曙橋から手賀川沿いのサイクリングロードに入る。 浅間橋までの往復を飛ばす。 曙橋まで戻ると、北岸の遊歩道になる。 散歩するひともいるし、 路面状態もよくないので、ゆっくり走る。 手賀沼を一周して、 7時06分ひどり橋に戻る。 ---成績はいかに? 走行距離38.97km、最高速度38.4km/h、平均速度24.0km/h。 今朝乗ったのは、レーヴ号。 不動峠を攻めて涙を呑んだ機種だ。

9 LOOK585を仕立てる!

8月7日-2。 11時40分、エクセル号で増尾駅へ。

---エクセル号?知らんぞ! ママチャリから脱出したいひとに 是非乗ってほしい機種だ。 ・クオーツ エクセル アルファ。  宮田自転車が開発・販売している。  3段変速のシテイサイクル。 近所の自転車屋さんで、4万円ほどで購入した。 少しでも軽くするために、 前かご、チェーンカバーやドロヨケを外し、 前輪を着脱可能にするために、 クイックレバーを装着してもらった。 さらに、五香の”サイクルサービスおおやま”へ出かけて、 いろいろ手を加えてもらう。 ・外装7段ギア(坂を上りやすく) ・ローラー・ブレーキをキャリパー・ブレーキへ(重量減) ・サイクルコンピュータ装着 ・ボトルケージ装着 ・サドルバッグ装着 ・ブレーキ・ワイヤーを短く ・サドルを水平に ・ステムの位置を下げる 重量は、なんと11.2kg! ママチャリの半分だ。 駐輪所に預けて、東武野田線に乗る。 新鎌ヶ谷で乗り換え、北総線押上駅下車。 寺田商会は、眼と鼻の先だ。 寺田さんが笑顔で出迎えてくれる。 「もう着いてますよ」 「これが実物か」 LOOK 585 オプティマムのフレームだ。 「持ち上げてごらんなさい」 「軽い!ウソみたいだ」 重量は、たったの1285g! 「完成すると、どのくらいになりますか?」 「7kg台前半は間違いないですね」 ステムやサドル高など、サイズ合わせをする。 このサイズ合せは、初心者は無視しがちだが、 非常に重要なプロセスだ。 「サドルは、どれにしますか?」 「勿論、フィジーク・アリオネ!」 「は、は、は」 「コンポは、どうしましょうか」 「勿論、シマノのデュラエース!」 ロードバイク用の最高級コンポーネントで、 堺にある本社工場で生産されている。

シマノは、いい会社だ。 アウトドアに狂っていた頃、 シマノの技術者にマウンテンバイクの乗り方を 教えてもらったことがある。 島野製作所という釣り具メーカーだったが、 自転車部品に進出し、 ブレーキ、変速機、レバーなど それまでは別々に扱われていたパーツを 統合開発・生産する「コンポーネント」という 概念を生み出し、世界をリードしている。 寺田さんは、オーダーをテキパキとメモしていく。 精巧なパーツをみていると、 名前の分からなさも手伝って、頭がクラクラしてくる。 このなかで、シマノの名声を築いたのは、STIレバー。 ハンドルから手を離さなくても、 ブレーキ操作とシフト操作の両方を行えるのだ。

寺田さんがいう。 「慣れてくると、操作はとても楽ですよ」


10 わがLOOK585で走る

8月10日。 晴れ。 2時、寺田商会へ。 LOOK585が完成していた。 前に試乗させてもらった社長さんに出会う。 わざわざ、来てくれたようだ。 重さを計ってもらう。 「7.6kgですね」 「持った感じは、6kgぐらいだ」 「マビックのキシリウム、用意しておきました。」  スポークの本数、少ないでしょ」 「ホントだ、気がつかなかった、かっこいいね」 ・マビックは、1889年創業の老舗。  手組みでなく、完組みホイールを世にひろめた。 寺田さんのアドバイスが続く。 「カーボンフレーム、気をつけてください。  傷が付くと、そこから割れたりすることもありますから」 「心配になってきた」 「普通に扱っていれば、大丈夫ですよ」 寺田さん、やってみせてくれる。 「ステムの高さ、調節できますよ」 「なるほど、ドライバー1本で、やれるんだ。 これで、前傾姿勢を強めたり、弱めたりできる。 朝練の時、ドライバーを持っていって、 試してみようっと。

STIレバーやチェーンなどの注油箇所を教わる。 1時間ほどいて、 社長さんに挨拶して、帰路につく。 ---どのくらいスピードが出るかな? 心は、荒川へ、荒川へ。 荒川サイクリングロードへと急ぐ。 加速すると、LOOK585は、別の乗り物に変身する。 アメリカのサイトを見ていたら、 「ロード・ロケット」という形容もあって、 オーバーだなと思ったが、あながちウソではない。 平坦路で、軽く40km/hが出た。 ---ここ千住新橋じゃないか。 あっという間に、四つ木大橋から4kmも先に。

---今度は、ゆったり走ろう 四つ木大橋に戻り、6号を金町へ。 4時08分、金町駅前のスターバックスで休憩する。 ここまで17.88km、最高速度40.3km/h、平均速度16.5km/h。 ---いいお値段だったけど、買ってよかったな 6号を走って、江戸川へ。 サイクリングロードを北上して、 松戸排水機場手前から堤防を下りる。 馬橋高校の前を通過して、馬橋駅へ出て、 常磐線の線路脇を走る。 いつもは、6号へ出るが、 今日はあえて南柏駅西口へ。 線路をまたぐ歩道橋の階段を登り下りしてみる。 ---なるほど、LOOK585は軽いね。

5時40分、帰宅。 走行距離36.12km、最高速度40.3km/h、平均速度17.3km/h。 ---すごいロードレーサーだ! 自転車の手入れをしながら、思う。 「こうして大事にすると、愛車になっていくんだ」 明日からの朝錬が楽しみだ。


11 朝練の日々、関宿城へ

8月11日。 ---さあ、わがLOOK号で朝錬だ。 クルマのトランクから、LOOK号を取り出す。 軽いから、楽だ。 5時半、手賀沼ひどり橋をスタート。 15分で、フィッシングセンター。 ここまでの平均速度は、30km/h。 ---新記録は確実だな 6時20分、国道16号のファミマで休憩。 ---しまった! サイクルコンピュータを取り外すときに、 データを消去してしまったのだ。 これで緊張の糸が切れてしまう。 ---新記録は、次回にお預けか 帰路は、ポタリング。 7時半、ひどり橋に戻る。 最高速度40.0km/h、平均速度23.3km/h。 LOOK号としては不本意な記録になってしまった。 でも、収穫はあった。 コーナリング、加速性能、振動吸収性のよさを 認識できた。 デュラエースのペダル着脱もスムースにやれた。 フィジーク・アリオネを選んだのも正解だった。 帰宅して、手入れ。 ---しまった! LOOK号の撮影を忘れてしまった。 8月12日。 今日も、LOOK号で朝錬だ。 5時、手賀沼ひどり橋。 まず、昨日忘れたLOOK号の撮影を行う。 ---いいねぇ、いいねぇ

日の出直後に、いつものコースを走り終える。 走行距離39.86km、最高速度38.8km/h、平均速度24.8km/h。 記録がいまいち。 サイクル・コンピュータに問題があるようだ。 休憩中も動いているから、平均速度を下げてしまう。 前半は、25.6km/hを記録したが、 ファミマでの休憩後に、23.8kmまで下ってしまう。 ---変だな、最高速度も伸びない。 レーブ号で、40km/h台が出たのに、 LOOK号では、40km/h台が出ない。 8月13日。 5時半、LOOK号で朝錬スタート。 国道16号の柏大橋に出て、 6時55分、野田スポーツ公園。 ---ここまで24.84kmか 朝食は、おむすび。 利根川サイクリングロードを北上する。 芽吹大橋で、若者と出会う。 我孫子高校の2年生。 「これから千葉県を一周するんです」 「夏休みに冒険旅行、いいねぇ。  何日くらいかかるの?」 「4泊5日です。  今日は関宿まで上ってから、  江戸川を下って海まで」 「すごいね!」 小径車に大荷物を積んでいるのに、 時速30kmで走っていく。 ---若いひとは元気だなぁ 年寄は、ついていくのが精一杯だ。 8時15分、48.03km、関宿城に到着。

このお城は、いまは県立博物館。 天守閣は、展望台になっていて、 利根川と江戸川の分岐点が眺められる。 ここは、江戸時代の水運の中心地だった。 数多の高瀬舟が銚子から利根川を遡り、 ここから江戸川を下って、江戸へ向かったのだ。

江戸川を下りはじめて、 しばらくすると、 先行している彼が道を譲る。 「どうしたの?」 「お腹が減って・・・」 空腹で、走れなくなったのだ。 持参したフルーツケーキを進呈する。 「どこかにコンビニ、ないですか?」 「さあね」 時速20kmのポタリングで、 江戸川サイクリングロードを下る。 金野井大橋手前に、コンビニを発見! 「良かったぁ」 彼と別れて、スピードを上げる。 利根運河に出て、 10時、運河駅に着く。 ---ここまで、75.75kmか 駅前のベーカリーで、アンパンとアイスコーヒー。 ここでの休憩が気に入っている。 東京理科大の学生たちとのおしゃべりが、楽しい。 霊波之光教会の信者たちの会話も、ためになる。 この世は、病気や事故、争い事で満ちている。 運河駅から4km走って、 利根川サイクリングロードに出て、 5km走ると布施弁天。

手賀沼に戻って、オランダ家へ。 ここも、好きな休憩スポット。 女店員たちと顔なじみだ。 12時20分、帰宅。 ---今日は、よく走ったな 走行距離106.14km! 最高速度47.5km/h、平均速度19.9km/h。 走行距離、最高速度ともに新記録達成! LOOK号の威力だ。 自転車の手入れをする。 流石にバテた。


12 COSMOS号のこと

8月19日。 LOOK号で朝錬だ。 6時05分、手賀沼ひどり橋スタート。 6日ぶりのサイクリングなので、 身体がなまっている。 ---ゴミだらけだ 昨夜、手賀沼花火大会があった。 滑りそうなので、減速する。 6時57分、国道16号のファミマ。 ---腹減ったな。 マルチミネラルを飲み、最中を追加。 最近、いろいろな補食を試している。 帰路は、飛ばす。 8時、ひどり橋にもどる。 走行距離39.80km、最高速度38.5km/h。 平均速度25.8km/hは、 LOOK号では新記録だが、 COSMOS号の26.0km/hには及ばない。 ---COSMOS号、あなどれない 10.4kgで、10段変速。

COSMOS号は、 ホリゾンタル・フレームで、 素材は、クロム・モリブデン鋼(クロモリ)。 自転車の代表的なフレーム素材は、 実用車は、安くて軽いアルミ。 競技用は、カーボンが主流になっているが、 クロモリは、長い歴史を持っていて 強度や振動吸収性に優れている。 昨年、印旛沼で出あったひとが、 クロモリのフレームを自慢していた。 ---よく走りますよ。  しなやかで、疲れにくいんです このCOSMOS号、今では数少ないダブルレバー。 ダウンチューブに装着されている。

ハンドルから手を下して、 右レバーを手前に倒すと、後ろギアが軽くなり、 奥に倒すと、後ろギアが重くなる。 左レバーを手前に倒すと、前ギアが重くなり、 奥に倒すと、前ギアが軽くなる。 はじめは、手探りで操作していたが、 慣れると、楽しくなる。 レバーを倒す時に伝わる ワイヤーテンションの感触がたまらない。 お値段は、LOOK号の20分の1。 手賀沼で、タイムトライアルをやっているひとから 話しかけられたことがある。 「クロモリフレーム、ダブルレバー、いいねぇ、   譲ってくれないかな、20万円でどう?」 危うく、応じそうになったが、 このCOSMOS号、思い出がつまっている。 スイスで手にいれた。 散歩中に、ルツェルの市場を覗いたら、 地元の野菜や花や特産品が並ぶなかで 中古自転車のセールをやっていた。 ---これ、いいかも。 細身のホリゾンタルフレームに、 軽快に走るチューブラータイヤがついている。 一目惚れして買った。 出会ったドイツ人に、 船便で送ってもらうようにお願いした。 送られてくるか心配だったが、 ちゃんと梱包して、無事にわが家に着いた。 世のなかには、いいひとがいるものだ。 戦前のものなので、流石に錆ついている。 寺田商会で、念入りに錆落しをしてもらったが、 あちこち塗装が剥げ落ちている。 玩具店で、赤と白の塗料と細い筆を買って、 細心の注意を払って塗ってみたが、 筆が乱れて、却ってみっともなくなった。 ---やはり、LOO号のほうがいいな


13 朝練の日々、大雨被害

8月21日。 LOOK号で朝錬。 5時25分、手賀沼ひどり橋たもとをスタート。 曇り空で走りやすい。 ---そろそろ稲刈りかな 田圃が、だいぶ色づいてきた。 6時15分、国道16号のファミマで、 マルチミネラルと最中。 帰路も飛ばす。 7時15分、ひどり橋にもどる。 走行距離39.80km、最高速度38.3km/h。 平均速度26.5km/hは、記録更新。 COSMOS号の26.0km/hを上回った。 サドルバッグをウエストバッグにしたので、 車体が軽くなったせいかも。 自転車の手入れをする。 8月27日。 LOOK号で朝錬。 5時13分、手賀沼ひどり橋たもと。 水面に霞んだ太陽の帯が映っている。 6時05分、国道16号のファミマで、 マルチビタミンとどらやき。 7時6分、ひどり橋にもどる。 走行距離39.95km、最高速度37.2km。 平均速度27.0kmは、新記録だ。 軽いギアで高速回転したのがよかった。 自転車の手入れをする。 9月8日。 ---大雨被害を見に行こう。 5時33分、LOOK号でスタート。 手賀沼へ出る。 大津川も、大堀川も増水している。 北柏駅を抜けて、布施弁天へ向かう。

新大利根橋は、茨城県との県境にある。 広い川幅だが、今朝は、別物に変身している。 ---大アマゾンみたいだね

利根川サイクリングロードを、5km北上する。 次は、利根運河の被害状況視察だ。 運河のサイクリングロードは、全長7km。 4kmほど走った東武野田線・運河駅の先が冠水していた。 無理やり突き進んだが、 Look号が泥だらけになってしまう。

ラストは、江戸川。 江戸川お河川敷が冠水していた。 ホームレスのおじさんが立ちつくしている。 リアカーに、最小限の荷物は積んでいるが、 苦労して作った小屋が流されたのだ。 下流へ走り続けると、 次々と冠水した運動場やゴルフ場が現れる。

古ケ崎排水機場から堤防を降りて、 8時25分、馬橋駅前のルフランへ。 駅が見える席が、お気に入りだ。 乗降客や客待ちのタクシーの運転手がみえる。 朝食セットは、サンドイッチ、茹で卵、サラダ。 10時分、帰宅。 走行距離53.08km、最高速度44.4km/h。 平均速度は、流石に19.1km/hと遅い。 ---今日は、念入りに手入れしなくては タイヤだけでなく、 フレームやハンドルにも、泥水が飛んでいる。 丁寧に車体を拭き掃除し、 水洗いし、ウェスで拭き取り、注油する。 ---チェーンも、掃除するか チェーン洗浄器具を買ったばかりだ。


13 不動峠、アゲイン

9月9日-1。 ---不動峠を登るぞ! 標高差300m、距離3.9km、勾配6-8%。 昨年11月に初挑戦して、32分かかった。 今回は、新兵器LOOK号を用意し、 走りこんできた。 ---20分台で登れるかな? 5時35分、スタートし、輪行。 おおたかの森駅で、 つくばエキスプレスを待つ間に、 おにぎり2ケを食す。 6時50分、つくば駅着。 桜川にかかる大田橋の先から筑波山をめざす。 一直線の道路だ。 両側に美しい稲田が広がる。

いろんなかかしがある。 「コメどろぼう、打ち首だべ」 ---このメッセージ、雀たちに届くかな? りんりん道路を横断し、大池公園に着く。 7時40分、走行距離15.14km。 いよいよ不動峠、再アタック開始だ。 ギアを最初から一番軽くし、速度を上げる。 息が上がって、一息ついていると、 "オッテイモ"の6人組がやってくる。 柏のサイクルショップ"オッティモ"は、 週末に手賀沼でメンバーの朝練をやっている。 ショップを何回か訪問したことがあって 顔なじみのメンバーもできた。 今日も、柏から走ってきたらしい。 健脚そろいだ。 「お先に」 「失礼します」 「頑張って!」 一気に抜かれ、がっくり。 台風のつめ跡で、 路面に枝葉が散乱して走りにくい。 "オッティモ"組は、 リーダーが巧みにコースを選んで走り、 その後についていくから、 何んら痛痒を感じていない。 ついて行こうとしたが、 脚力の差は、いかんともしがたい。 あっという間に背中がみえなくなる。 ---お腹が痛いなぁ おにぎりを運動直前に食べた。 ウエストバックで、きつくお腹を締めたのも、 腹痛の原因だろう。 途中で4回も休んで、 ようやく、不動峠の頂上に着く。 腕時計をみる。 ---29分かぁ 1年がかりで、新機材を投入して、 たった3分短縮しただけだ。 オッテイモ6人組に聞くと、15分とか。 ---あーぁ、LOOK号で、この程度か。 再チャレンジを誓う。 前回は、峠を越えてから 恋瀬川サイクリングロードに向かったが、 今回は、大池公園へ戻ることに。 下りは、ウソのように楽チンだ。 スポークに枝葉が絡まりそうなので、  枝葉を避けてゆっくりと降りる。 やがて、コツが分かって、 大胆になって飛ばす。 ちらっとサイコンに目をやると、 速度は、40.4km/h! 汗でびしょびしょのウエアが どんどん乾いていく。 大池公園が近づくと、 続々とローディたちが登ってくる。

9時2分、大池公園に着くと、 幸い腹痛は治っていた、


15 りんりんロード

9月9日-2。 ---では、予定通り走るぞ! 事前に入手した資料をみる。 ・りんりんロード(愛称)  正式名称は、県道501号桜川土浦自転車道線 旧称は岩瀬・土浦自転車道。  筑波鉄道の筑波線が廃線となり、  2002年に、岩瀬駅から土浦駅まで  全長約40.1kmのサイクリングロードが完成した。  カラー舗装され、起伏、カーブが少ないので走りやすい。 車道との交差点は、要注意。

今回は、土浦駅へ向かわず、 大池公園から北條新田まで下って、 りんりんロードに入る。

---変だな? 県道501号とある。 岩瀬・土浦自転車道ともある。 この両者は、同じなのかな?

しばらく、 県道14号線が並走している。 疑問を抱きながら走る。 5kmほど北上すると筑波休憩所だ。 妙に今風で、違和感がある。 廃線跡なのだから、 せめて当時の列車を残すとか、 筑波山神社詣の写真でも飾ってほしい。 つくばエクスプレス開通で身近になって 秋葉原からつくば駅まで45分、 筑波山シャトルバスに乗れば 40分で、神社まで行ける。

この地は、筑波山神社詣で繁盛した。 山頂に登れば、関東平野が一望できるので、 上野や水戸から、行楽客が押し寄せたのだ。 モータリゼーションで、筑波線は赤字になり、 1987年に遂に廃線になった。 黒丸で示したが、 旧岩瀬駅、旧雨引駅、旧真壁駅、 旧筑波駅、旧常陸藤沢駅、旧虫掛駅の 6カ所の駅舎跡地が休憩所になっている。


16 真壁を散策

9月9日-3。 10時23分、真壁休憩所に着く。 ---あと20km、北上すればいいのか JR水戸線・岩瀬駅で、りんりんロードは終わる。 その前に、大きな楽しみが待っている。 昔の風情を残す真壁を散策するのだ。

<真壁の略史> 785年 清寧天皇由来の白壁郡が真壁郡と改称 1179年 平長幹が真壁郡司として入る 1602年 関ヶ原後、真壁氏が主君の佐竹氏と角館へ移る 1611年 浅野長重が真壁藩主となり、町割りが形成される 1622年 浅野長重の笠間移封に伴い、笠間藩の一部に     木綿市が活況を呈し、商業地の基盤ができる 1837年 天保の大火以降、陣屋が瓦葺きや入母屋になる     商家に薬医門、見世蔵、土蔵が作られる 明治期 製糸業が発展、銀行設立など最盛期を迎える 1918年 筑波鉄道真壁駅が開通し、     純白の御影石の首都への運送が盛ん 1986年 五所駒瀧神社の祭事が、無形民俗文化財に指定 1994年 真壁城跡が国史跡に指定  2009年 伝統的建造物群保存地区発足

パンフレット片手に、 真壁の市街地は、1km四方。 自転車だとあっと言う間に一回りできる。 道路が直交し、中世の町割りが残っている。 古い町並みが軒を並べているというよりも、 有形文化財が、点在しているのが特徴だ。

まず、下宿町へ。 潮田(うしおだ)家住宅は、江戸末期の呉服商、 明治時代には「関東の三越」と呼ばれた。 通りに面して広い帳場を構え,奥に座敷を配する 重厚な黒漆喰塗の町家だ。 明治の面影が残っている。

---この黒漆喰壁、いいいね 菜種油を燃やした煤を油に混ぜると 黒い漆喰ができる。 ---この真壁(しんかべ)造りもいいね 祖母が生きていた時代が懐かしくなる。 みんな丁寧な仕事をしていたのだ。 柱を表面に露出させ、 柱と柱の間に壁を納める方式で、 柱が空気に触れるため、防腐効果があるそうだ。 ---つぎは、伊勢屋旅館か。 いまも営業中だ。 2代前まで勢州楼という料亭だった。 ここには、薬医門がある。 薬医門といっても、なじみが薄いが、 太い親柱と控え柱の計4本の柱の上に 切妻屋根を組む形式だとか。

そして、上宿通りの猪瀬家の薬医門。 明治初期の建築で国登録有形文化財。 佐竹氏の家臣だったとか。 ---立派な門構えだね 扉がないが、患者が入れるよう左右に木戸がある。

鍋屋町通りへ移動する。 ここでは、西岡家住宅。 ---広いねぇ 敷地3,000坪、」長い塀が圧巻だ。 創業1782年とか。 先祖は、近江商人。 筑波山系の清水と良質な米に着目して、 本家から独立して、 明治初期に味噌・醤油の醸造と酒の販売をはじめた。 お土産に、清酒買って帰りたいが、 自転車旅には、かさばる。

---いよいよ、御陣屋前通りだ 真壁陣屋があった、かつての政治の中心街だ。 大型の店蔵や土蔵が連なっている。

---これが見世蔵か 木村家は、江戸後期の土蔵造。 店舗・住居を兼ねているので、 「見世蔵(店蔵)」と呼ばれている。 柱を表面に露出させた真壁(しんかべ)造りとはちがって 柱などの木部を漆喰で塗り込めている。 天明の大火で懲りて、耐火性を増している。 2階の軒は低く、 白い漆喰塗の外壁の右手に小さな窓がある。 関東一帯でも数少ない江戸末期の遺構だ。

---へぇ、洋風建築もあるんだ 昭和初期建設の洋風建築で、 旧真壁郵便局。 その前は、第五十銀行真壁支店だった。


17 平四郎最中

9月9日-4。 10時55分、雨引休憩所に着く。 桜並木の中にあるから、 満開の頃に走りぬけたら、さぞかし気持ちいいだろう。

---慌ただしい真壁散策だったな いずれもう一度訪れて、 じっくり見学したいものだ。 黄金屋のおばさんは、 ひな祭りの頃に来るといいと言っていた。 11時17分、終点の岩瀬休憩所に着く。 ここまで、55.10km。 ---あー、疲れた。

駅の南口付近には、店らしきものはない。 仕方がないので、引き返して 北口広場に出て、タクシーの運転手さんに 道案内をしてもらう。

11時25分、来々軒に入る。 カウンター、テーブル、小上がりと、 何の変哲もないお店だ。 他に客もいないので、 Look号を店内に置かせてもらう。

冷やし中華を食す。 水がうまい! 正直、水が一番うまかったのだ。 12時15分、岩瀬駅から輪行し、 JR水戸線に乗車する。 羽黒、福原、稲田、笠間、宍戸、 6つ目が終点の友部駅だ。 --笠間は、一度来たことがあるな そんなことを考えながら、 田圃ばかりのローカル列車の旅を楽しんだ。 ---平四郎最中でも、食うか 真壁の黄金屋で、買ったものだ。 包み紙の表には、平四郎の顔が描いてある。

12時46分、JR常磐線に乗り換え。 グリーン料金を奮発したから、がらがら。 2時07分、柏駅着。 すこし眠って元気回復。 柏から自宅まで走る。 暑い! 2時50分、帰宅。 走行距離は、62.57kmだった。 ---自転車の手入れは、明日に回そう


18 法身性西禅師伝

9月9日-5。 4時頃、買い物から帰宅した つれあいにmおみやげの平四郎最中を渡す。

最中の皮はさくさく、中は粒あん。 「甘ったるくないのがいいね」 「上品な甘さね」 「手作りだってさ」 しおりを開くと、 昭和59年の全国菓子大博覧会で金賞とあり、 包み紙の裏には、大町桂月の詩が書いてある。 ・おなじくも  履物とりし  身の上は  猿は太閤  真壁は国師か 秀吉が、主君・信長の履物を懐で暖めて 出世した故事は知っているが、 平四郎が、国師という意味が分からない。 ネットで調べたのをまとめると・・・

「法身性西禅師伝」 法身(ほっしん)は、 号を性西(しょうさい)という。 俗名は、平四郎。 真壁の生まれなので、真壁平四郎ともいう。 幼くして父母を失い、 長じて真壁城主・安芸守時幹の下僕となった。 ある冬の寒さの厳しい日。 城主の帰りを待つ間、 主君のために履物を懐に入れて暖めていた。 やがて、時幹が戻ってきた。 履物に足をおいて、ぬくもりに気がついた。 「主の履物に腰をかけておったか、この不届き者!」 下足履きのまま、平四郎の額を蹴り、額が割れた。 心は、怒りと恥ずかしさで一杯だった。 弁明一つ出来なかった自分自身が腹立たしかった。 「何が悪いのでもない」 「下僕の我が身が悪いのだ」 「時幹よりも偉くなって見返そう」  時幹が頭を下げるのは高僧だけだ。  よし、僧侶になろう」と思い立った。 履物を両手で押し頂き、 「自分の守り本尊にしよう。  心がくじけそうになったり、修行がつらくなったら  いつもこれを出して思い出そう」 平四郎は、高野山に登り、明遍上人のもとで学んだ。 平四郎の修行はすさまじかった。 鎌倉に行って、福寿寺の退耕行勇の門で学んだ。 四十八才の時、宋に渡り、 五山のひとつ径山寺で、 佛鑑無準範禅師の下で修行した。

師は、平四郎に「円相に丁」を書いて示した。 この命題を解こうと、七年間修行した。 「円相に丁」とは何であろうか。 五十才で、悟りを開いた。 「円は、○である。○は宇宙であり、三界である。 丁は屋根であり、天蓋である。天を屋根として生活しよう」 師から法身の号を与えられ、帰国した。 博多から京に行き、鎌倉に行って 行勇の墓前に参り、帰国の報告をした。 この時、寿福寺の住持である了心から 思いもかけず、時幹の消息を聞かされた。 「御老師の法話をお聞きしたくて参りました」 「もしや、平四郎という下僕をご存じではございませんか」 「平四郎・・・」と首を傾げる。 「あなたの草履取りをしておったはずですが」 「おお、それならおぼえております」という。 「下足のぬくもりを履き物に腰掛けていたと激怒して  眉間を蹴りつけてしまいました。  若気の至り、今は反省しております。  ・・・師は何故、平四郎をご存じなのですか」 了心は、法身が懐から下駄を取り出して拝む様を活写した。 「この履物こそ、守り本尊ともいえるものです。  いまは、ただ感謝の念しかありません。  再びお会いできましたならば、  心の友になりたいと念じております」 時幹は、その場で出家し、僧となる。 法身は、鎌倉の建長寺に滞在中、 先の執権・北条時頼の願いを受け、 70才を過ぎて松島に赴き、 天台宗・延福寺を禅宗・円福寺に改めた。 これが後の瑞巌寺である。

だが、法身は、大伽藍に安住することなく、 法身窟と後に呼ばれる洞窟で、 座禅に明け暮れたと伝えられる。

芭蕉の「奥の細道」には、 「真壁の平四郎、出家して入唐、帰朝の後開山す」とある。 「下駄の恩」は、講談になり、教科書にも掲載された。 lOOK号の手入れをしながら 不動峠を征服するには、 心も身体も技も、磨かなければならん! そう覚悟したのだが、 その舌の根も乾かぬ間に、 LOOK号に代わる新機材を考えはじめたのだった。 ☆超軽量MTB、タウリン号の秘密


表紙に戻る