ちょこっとお絵描き in New York

1/1 NY到着、イグアスの滝 1/2 散歩、スタバで落涙、ワイン
1/3 カンボジア料理、自転車屋さん 1/4 ブルックリン橋
1/5 アバクロ、ミュージカル"CHICAGO" 1/6 映画「MILK」
1/7 人間観察、「マンマ・ミーア!」 1/8 次女帰国、ブルーミングデール
1/9 ユニオン・スクエア、オバマTシャツ 1/10 映画"BRIDE WARS"、自転車屋さん
1/11 帰国の途へ


NY到着、イグアスの滝

1月1日。 7時55分、JFK空港に到着。 日本時間は、1月2日の午前5時55分。 NYは、まだ1月1日だ。 長い長い元旦。 旅行鞄もすぐ出てきたし、入国検査もスムース。 タクシーに乗り、夜の高速をひた走る。 途中、料金所を撮影する。 その昔、通過するたびに、感動したもんだ。 いまは、日本中どこにでもETCがある。

7時15分、長女のアパートに到着。 チップ込みで、料金は55$。 階段を上り、部屋へ入る。 「おっ、模様替えしたのか」 来るたびに、部屋がオシャレになっていく。 「暑いなぁ」 摂氏25度くらいあるのでは? 外気温はマイナス4度。 このアパートも光熱費込みらしい。 だから、NYでは、どうしても暖房を使い放題になる。 地球温暖化が進むはずだ。 「おっ、これか」 最新式デスクトップ"iMAC"が鎮座している。 「いいパソコン買ったなー」 「まあね」 長女は、ご満悦だ。 大型スクリーンでYou tubeをみたが、迫力満点だ。 ニュースだろうが、日本のドラマだろうが、パソコンでみられる。 「テレビはやめたのよ、視聴料が高いから」 「倹約してるなぁ」 「そうよ、家賃が値上がりしているからね」 ---テレビをやめるなんてなぁ。 この現象が日本に波及すると、NHKも民放も経営が左前になる。

9時、夕食はすきやきだ。 ---肉はいまいちだなぁ。 松坂牛に限らず、和牛の味は、いい。 世界に冠たるものだろう。 娘2人から、生々しい南米旅行談を聞く。 「治安はどうだった?」 「問題なかったよ」 「危ないところに近づかなかったからね」 iMACのスライドショーをみる。 「へぇ、映画みたいに編集してくれるんだ」 「マックはいいわよ、買いなよ」 世界三大瀑布といわれるイグアスの滝をみる。 「すごいわねえ」 「こんな角度から見たことないなぁ」 落差80メートル! 滝の真下まで小さな観光船で行けたらしい。

「何が何だかわからなかったわ」 バケツ、何十杯分もの水を浴びせられたらしい。 「行けばよかったなぁ」 「そうよ」 娘に誘われたが、もう年だから自重したのだ。 つれあいは、新しいことに臆病になっている。 「...南米は興味がないわ」 「...スケジュールもきつそうだし」 「...治安だって、不安だし」 相談して、参加を取りやめたのだ。 そう...、 このニューヨーク旅行だって乗り気ではなかった。 「もうニューヨークは、分かったよ」 でも、つれあいは行きたがった。 「いろいろ持ってきてほしいものもあるようだし...」 年に一度、長女に会えるのが無上の楽しみなのだ。 さて、こうして、NYにやってきたものの、 観光にも、買い物にも、興味がない。 ---こんなたわ言、若いひとが聞いたら怒るだろうな。 でも、もう70歳、古希なのだ。 杜甫が「人生七十古来稀なり」と詠んだ。 70歳まで生きるのは、昔は、まれだったのだ。 若い頃、病弱だったから、この長生きには、我ながら驚いている。 生きているだけで、御の字。 まして、ニューヨークにいるなんて。 だから、娘のアパート周辺を散歩するだけで充分。 日本と同じように、NYでフツーに暮らしたい。 それだけでは、寂しいような気もするから... 映画をみて、自転車屋を探し歩いて、それに 「ちょこっとお絵描きでもしたりして」 スケッチやイラストの本を数冊、旅行鞄に入れてきている。


散歩、スタバで落涙、ワイン

1月2日。 起床6時。 みんなが起きるまで読書。 ・神谷秀樹「強欲資本主義 ウォール街の自爆」文春文庫 サプライムローン問題の本質がよくわかる。 長女によれば、何でも、ウォール街では、4万人が解雇。 アパートの周辺でも、通勤にタクシーに乗る若い男をみかけなくなったとか。

「うまくいけばいいが...」 8時、長女のiMacの電話コードを外して、 ミニノート(Acer Aspire)に嵌めこむ。 Explorerをクリック。 ---おお! 自分のHPが浮かび上ってくる。 ついで、FFTPに接続。 ---おお、おお! NYでも、自分のHPを毎日更新できるのだ。 8時半、まだみんな寝ている。 ---ひとりで出かけるとするか。 イーストリバーから吹き上がる風が冷たい。 目出し帽、手袋、防寒ジャンパー、厚手の靴下... 着込んでるから、ダイジョウブだ。 York Avを歩く。 ニューヨークに来たという実感が湧く。 高級マンションの前の道路に、ツリーが捨ててある。 例年通りの風景だが、昨年より数が減ったような気がする。 "GREEN KITCHEN"まで数ブロック歩く。 (1 Av - 77 St) お気に入りのレストランだ。 一昨年、改装してややオシャレになった。 アイルランド系だ。

ウエイトレスのおばさんがいる。 「Takeout OK?」 「No problem」 どうやら通じたようだ。 言葉が通じない可能性があるのは、スリリングだ。 持ち帰って、つれあいと2人での朝食。 長女は、仕事に行ってしまったらしい。 次女は、まだ寝ている。 「すごい分量ね」 「こんなのばかり食っていりゃ、肥るはずだよ」 卵2ケ、大きなハム2枚、大量のベークドポテト、トースト2枚、コーヒー。 「もう食べられない...あの娘に残すわ」 「おれのハムもいいよ」 11時、つれあいと次女が買い物に出る。 「おれは、家に残るよ」 日本時間ではもう夜、睡魔が襲う。 頑張って、映画批評に着手する。 NYでも、日本と同じ生活リズムが営めるのは幸せなことだ。 1時50分、厚着して外出する。 目だし帽、手袋、靴下2枚重ねで、防寒対策はバッチリ。 ---ほう、粉雪だ。 NYでも、細雪にお目にかかれるのか。 NYっ子に倣って赤信号でも渡る。 ぐんぐん歩いていけるのだ。 映画「真夜中のカーボーイ」の舞台となった アッパーイースト72丁目の街角を撮る。 "Midnight Cowboy"(1969)は、 アカデミー賞作品賞・監督賞・脚色賞を受賞した名画だ。 百万長者を夢みてテキサスから出てきた主人公が、 このあたりで街娼に騙されるのだ。 ニューヨークは、すれっからしの住む街だ。 カウボーイ役はジョン・ヴォイト。 ダスティン・ホフマン演じるラスティと知り合って、 廃墟のビルをねぐらに、ジゴロ稼業に精を出す。 だが、冬のニューヨークは寒い。 しかも、暖房もない貧乏暮らしのなかで、 相棒ラッツォの病気が悪化していく。

Midnight Cowboy 予告編 そう、ここらは、かつて貧民街だったのだ。 数々のアメリカンドリームが無残に散っていった場所だ。 だが、いまや高級高層マンションが林立している。 それらを消して、往時の雰囲気だけを描ける。 これがイラストの強みだ。 たとえ、拙劣でも。

2時15分、2 Av - 81 St のスターバックスへ。 ここの2Fの窓側の席がお気に入りなのだ。 若いひとが20人くらい。 半数がパソコン族。 早速仲間入りする。 ---ワイヤレスが使えるかも。 残念ながら、ダメだった。 バッテリー残量を気にしながら、作業。 となりの席のカップル(白人女性と黒人男性)が席を立ち、 日本人らしき女子学生がやってきた。 日本語で話しかけたが、koreanだった。 初級グラマーの勉強中だという。 目がキラキラしている。 ---いいねぇ。想いだすねぇ。 その昔、フランスに憧れていた。 パリのソルボンヌ大学前のカフェで、 颯爽と歩いていく黒人学生をみかけた。 ---オレはしがないサラリーマンなのに。 思わず涙が出てきたのを昨日のことのように覚えている。 黒人が大統領になる時代だ。 この娘だって、将来は大臣になるかも。 オレは、もうお終いだけど。 そう想うと、涙が出そうになった。

スタバを出ると、もう雪はやんでいた。 2 Av - 86 St へ出る。 ---高層マンションだらけになったなぁ。 黒人居住区だったのに、白人ばかり。 銀座通りのようだ。 これまたお気に入りの"Barns and Noble"へ。 ---面白そうだ。買っておくか。 ・JAMES PATTRESON "The 6TH TARGET" VISION 映画館を覗く。 ---"マンマミーア!"、やっとらんなぁ。

ワインでも買って帰るか。 古風な店をみつける。 ZAGARTのRatingを印刷した紙がガラス窓に貼ってある。 ・Yorkshire Wines & Spirits   1646 1st Ave. 英語で、以下の要望を店主に伝達する。 「カリフォリニアの白がほしいんだけど、20$くらいで」 「これはどうだ?」 「ナパヴァレーは、ないか? 昨日、映画"BOTTLE SHOCK"を見たものだから」

店主、にゃっと笑う。 「これは、いいぜ。映画と同じく家族経営だ」 ・SEQUOLA GROVE - Chardonnay 2005

4時、帰宅。 まもなく、つれあいと次女も帰ってくる。 "Zabar's"で、食材を調達してきたらしい。 「ゼイバーズか」 この高級食品スーパーは、何度、行っても興奮する。 何しろ、美味な食材が目白押しなのだ。

映画「ユー・ガット・メール」の舞台になった。 予告編 トム・ハンクスとメグ・ライアン主演だ。 ---あの頃のメグは、可愛かったなぁ。 8時から家族4人そろっての夕食。 「このサーモン、最高ね」 次女が、自分が食べたくて買ってきたサーモンをほめている。 彼女は、サーモンが大好きなのだ。 「ホワイトアスパラ、こんな美味しいのはじめて」 つれあいは、自分の選択眼を誇っている。 しょうがないから、買ってきたワインの評価を求める。 「どうだ、このワイン」 長女が反応してくれる。 「美味しいわね、いくらしたの?」 「20$」 「そりゃおいしいはずよ」 よほど美味しかったのか、彼女が1本空にしてしまった。


カンボジア料理、自転車屋さん

1月3日。 起床5時。 みんなが起きるまで静かに読書。 昨日買ってきた洋書は400ページ近くある。 だが、これが読みやすいのだ。 136章構成で、3ページ以内で章が変わる。 ・JAMES PATTRESON "The 6TH TARGET" VISION 8時半、みんなが起きないので、外出。 近所の"Gracie's Cafe"へ。 ・1530 York Ave

朝食をとりに、人間観察のために。 このカフェは、 ラティーノおばさんが、仕切っている。 年の頃は、アラフォー。 黒い半袖Tシャツに黒いパンタロン。 大声で叫ぶ様は、イタリアの個性派女優のようだ。 席に着く。 周囲を見回し、観察を開始する。 まずは、乳母車の若い白人男性から。 ---気の強い奥さんの尻に敷かれているのかな? でっぷり肥って洋書を読んでいる中年男。 ---あれ、ケータイを取り出したぞ。 物静かなひとかと思ったが、活動的なんだ。 せきこむようにしゃっべている。 毛糸の手編み帽を被った老女。 頬がピンク色だ、80は超えていそうだ。 ---ひとり暮らしが長いんだろうな。 カウンターで用を済ますのは、 すべて黒人かラティーノだ。 フレンチトーストとソーセージとコーヒーを注文。 熱々のソーセージは絶品。 フレンチトーストにつける ハニーシロップやバターの多いこと。 全部使うひとっているのだろうか?

家族連れが賑やかに入ってきたので、店を出る。 ---変だな、手袋がない。 片方をどこかで落としたようだ。 ないと寒いので、最寄の"DAGOSTINO"に入る。 安物(3,5$)の毛糸の手袋を買う。 だが、これでは寒い。 9時20分、アパートに戻る。 女性陣は朝食の最中だった。 今日は、郊外のSCへ行くらしい。 「おれはパスするよ」 長女が誘う。 「ものすごく安いのよ、それに円高だし」 「買い物は興味ないなぁ」 「そんなこと言たって、電気製品を買いまくっているでしょう」 「そういえば、そうだな」 「買わないと落ち着けないのね」 「でも、以前ほど、すぐ飛びつくことはなくなったわ」 「そうね、1点1点、吟味して買うのよね」 女性同士の話しがエスカレートしていく。 女3人寄れば、「姦」と書くが如しだ。 「で、帰りは何時頃になるのかね?」 「9時過ぎね」 「パパは、夕食、ひとりで済ませといてね」 11時近くになって、ようやく出ていく。 ---すっかりUPが遅くなったなぁ。 長女のMacの電話コードを外して、 ミニノートに嵌めこみ、FFTPに接続し、HPを更新する。 日本では、朝の6時頃に更新しているが、 ここでは、夜になってしまう。 11時40分、昼食に外出。 ---いい青空だな。雲ひとつない。 目指すは、3番街の93丁目の 新しくできたカンボジア料理店だ。 ・Cambodian Cuisine 日本で買った本に出ていた。 ・松尾由貴「世界の台所 ニューヨークを食べ歩く」ソニーマガジンズ 2006 さて、86丁目を超えて、93丁目へ。 ---へぇー。 驚きで声も出ない。 これは、六本木ヒルズではないか。 超高層タワーが林立している。 長女に聞いたのが馬鹿みたいだ。 「86丁目までは遠征したけど、93丁目はその先。 あのあたり、治安はどうかね?」 「全然」 12時10分、レストランに入る。 ここは、異次元の世界だ。 薄暗く、だだっ広い店内は無人ときている。 ---カンボジア難民の巣かも。 それでも、勇気を奮って奥へ。 注文するのは、勿論、これ。 ・Chicken Ahmok $14.95 ---あれ、本に出ていたよりも高いな。 4ドルも値上がりしている。 しばらくして料理が出てくる。 見た目はパッとしない。 ご飯をお皿に移して、カレーライス風に食べはじめる。 ---おお、このまろやかさ、これは絶品だ。 クセもなく、辛くもない。 メニューには、以下のように載っている。

Steamed sliced chicken breast marinated in a batter of coconut milk, lemon grass,galangal, read chilli and other spices - topped with coconut milk curd and slices of red pepper - on the bed of collard green. 会計をして、店内を横切ると、何組もの客がいた。 店の窓には、NYタイムズの大きな記事が貼ってある。 マンハッタンにカンボジア料理店が初オープン。 これは事件だ、絶品だ。 ---さて、どこへ行こうか。 メトロポリタン美術館もいいが、混んでいそうだ。 ブランド・ショップばかりのマジソン街も敬遠したい。 さりとて、バスやに地下鉄に乗る気力もない。 手近かなレキシントン街を歩いてみることにする。 ここらは、いまだに庶民の暮らしが息づいている。 道路脇の鉄柵に縛りつけてある自転車をみて歩く。 ---ふーむ、盗難防止策か。 前後のホイールを外してある。 あるいは、盗難車両かも。

---おぅ、自転車屋があるぞ。 犬も歩けば、棒に当たるとはこのこと。 ・METRO BICYCLES (Lex Av - 88 St)

店内に入る。 スポーツ車専門店のようだ。 ところ狭しとバイクが並んでいる。 SCOTとGIANTが多いが、LEMONのバイクもある。 ヘルメットを被った老人がやってきた。 SPECIALIZEDだ。 いいバイクだねと言うと、 これを持ってみろという仕草をする。 ---重いな。 8kgくらいかと言うと、そうだと自慢気だ。 オレのバイクは、LOOK585だというとしょげている。 悪いことをした。 この店、用品類も一通り揃っている。 天井からぶら下っている 黄色い蛍光色のウィンドブレーカーが目につく。 店員に頼んで下ろしてもらい、 ブランド名をみる。 ---なーんだ、パールイズミじゃん。 でも、円高だから、日本で買うよりは安いかも。 そう思いなおして、買うことにする。 ・Quest Long Sleeve Jersey $54.99 バイクのレンタルをやっている。 1 hour $9,00 とあるので、 喜び勇んで、現車をみせてもらう。 ---なーんだ、ママチャリじゃん。   30分ほど滞留して、店を出る。 レキシントン街をぐんぐん歩いていく。 ---暖かくなったなぁ。 手袋を脱ぎ、目だし帽も脱ぐ。 ただ、首筋が寒い。 ---おっ、風だ! 地下鉄(Subway)が通過し、 路上の通風口から生暖かい風が吹き上がってくる。 記憶中枢が刺激されて、マリリンを思い出す。

そう、マリリン・モンローのスカートが、 めくりあがったシーンは、あまりにも有名だ。 Marilyn Monroe deleted scenes from Seven Year Itch この映画の数シーンが検閲で削除されたのが評判になって、 都会派監督ビリー・ワイルダーの「七年目の浮気」(1955)は、大ヒット。 このシーンをみた旦那のジョー・ディマジオが激怒して、 離婚になったというエピソードもある。 街歩きは楽しい。 意外な情景に出くわす。 野菜売りの屋台の男が、急にしゃがんだ。 ちらっとこちらをみた目つきが鋭い。

黒人か、インド人か、はたまたイスラム系か、 若い白人女性の赤ん坊に話しかけている。 ---どういう関係なのかなぁ? ただの通りがかりなのか? 夫婦なのか? はたまた、女性諜報員か? 潜伏中のカルロスと連絡を取り合っているのか? つい、映画「ジャッカルの日」を思い浮かべてしまう。 ---夕食材料でも買って帰ろう。 Lex Av - 73/74 Stの"Payard"へ。

ここは、アッパーイーストのセレブのメッカだ。 フランス語が飛び交っている。 本場フランスのパンやデザートを売っている。 すごい混雑だ。 きれいなウエイトレスだったので、 あえてフランス語で注文する。 "corissant six" "Oui monsiuer" "Combian?" フランス語の数字は気にせず、レジの数字をみて支払う。 ちょっとパリに来たような気になれた。 10分ほどで、店を出る。 今度は、高級食品スーパーを目指す。

・Agata & Valentina  1st Av - 79 St イタリア人の家族経営だ。 ここも、アッパーイーストのセレブが集まる。 ニューヨークを代表するユニークな食品店リストに入っている。 ・Chinatown / Little Italy ・Union Square Farmers Market ・Grace's Market Place ・Nespresso Boutique Cafe ・Citerella's ・Chelsea Market ・Balducci's ・Garden of Eden ・Eli's Vinegar Factory ・Agata & Valentino ・Zabar's ・Fairway Market さて、注文したのは、 りんご、ミックスサラダとチキンソーセージ。 2時、陽が高いが歩き疲れた。 年をとったせいかも。 ---アパートに帰るか。 部屋にたどりついて、 1時間ほど洋書を読み進む。 睡魔に襲われて昼寝。 起きると、4時で、外は薄暗くなっている。 1時間半ほど日記を書き、 休憩し、りんごを食す。 ---MACでニュースでも見るか。 NY1というローカル局をクリックすると、 ニュース映像などが流れてくるのだ。 日本もいずれそうなるのだろう。 ---こりゃ、テレビいらずだ。 NY1 - Camp Broadway 日記を続けた後、 7時からひとりで夕食の支度をする。 ---包丁、お皿、箸、ドレッシング、どこにあるのやら。 ようやく支度が終わる。 サラダ、ソーセージ、クロワッサン、オレンジジュース、 いづれも美味だが、何か物足りない。 ---そうか、テレビがないせいだ。 わが人生、夕食時は、いつもテレビとご一緒だった。 MACのMusicをクリックする。 娘が選んだ曲目(映像)リストがずらり。 ---青山テルマか。 少し聴いたが、次々と彼女の歌が流れてくる。 この高音は、年寄りにとっては雑音でしかない。 止めて、リストに戻る。 ---ほう、加藤登紀子の歌がある! クリックすると、彼女の顔が大写し。 つい昔の面影を重ねてしまう。

---年とったなぁ....お互い様だけど。 彼女は、駒場高校から東大へ。 後輩だが、ほぼ同世代と言っていい。 百万本のバラを聴く。 ひとつひとつの歌詞に、想いがこもっている。 最愛の同志である夫・藤本君をを病魔で失ったのだ。 同情して、涙が出てきそうになった。 9時、女性陣が疲れきって帰宅。 まだ何も食べていないという。 幸い、同じ夕食材料が3人分残してある。 主夫してしまったぞ。


ブルックリン橋

1月4日。 起床6時。 暗いなかでPC作業。 7時20分、外出する。 雲ひとつない澄み切った青空だ。 朝日が高層ビルを照らしている。 グリーン・キッチンは、暗闇に沈んでいる。

今日のウエイターは、 歌いながら皿をもってくる。 ---あんたは、ババロッティか。 ここは、アイルランド移民が1931年に創業。 開店時は、ワンブロックもの列ができたとか。 いまでも、じゃがいもが美味しい。 食事をしながら、人間観察を開始。 様々な人種が、店の前を通り過ぎる。 ポメラニアンをつれて散歩しているのは、J.P.サルトルだろう。 リュックを背負った娘と立ち話をしている男は、 無精ひげをはやしたトム・クルーズだ。 着膨れた小柄な女は、みなアジア系だ。 そして、背中を丸めて亀の歩みの老夫婦。 ---やがて、ああいう風になるのかなぁ? 8時15分、近所のスタバへ移動。

パソコン作業は、ここのほうが気楽だ。 勉強中の若い男、 NY Timesの分厚い日曜版($4)を読むインテリ。 若やいだ声を出している孫息子連れのおばあさん。 いづれも、白人だ。 9時30分、帰宅。 ---まだ、みんな寝ている! 昨日は、夜までショッピングしたから、バテたのだろう。 自転車のイラストを描く。 11時半、ようやく女性陣が起床した。 シャワー、朝食、そして昨日の買い物の品評会。 上半身裸の若い男の紙袋がある。

「Abercrombie?」 「知らないの?」 「そんなブランド、聞いたことないよ」 「すごい行列で入れないのよ」 「日本でいえば、H&Mみたいに混んでいるみたいよ」 「売っているものは、H&Mみたいなもんかね?」 「どちらかといえば、POLOね」 「ふーん。ところで、今日のご予定は?」 「ブルックリン・ブリッジを渡ってみない?」 「いいね、いいね」 「それから、お夕食は、グリマルディで」 「グルマリィ?」 「G- R- I- MAL -DIよ。ピザのお店」 ZAGART(2008)でチェックしてみる。 ・GRIMARIDI'S DAMMBO /19 Old Fulton St./Brooklyn FOOD 25 DECOR 10 SERVICE 14 COST $20 「要するに、安い値段で美味しいピザを 食べさせてくれるお店っていうわけだ」 「そうよ」 「行ったことあるのか?」 「二度ほど」 2時半、ようやくスタート。 長女は、昨日買ったばかりのコートを着て、嬉しそうだ。

こちらは、分厚いコートに、 南米みやげのアルパカの帽子を着用した。 地下鉄で、ロウワー・マンハッタンへ。 「混んでるなぁ」 プラットフォームで、黒人4人が歌っている。 CDを振りかざしている。 売り出し中なのかしらん。 電車も身動きできないほどだった。 City Hall駅で下車。 「この立派な建物は、何だろうね」 「United States Court House、最高裁判所よ」

橋の入口を探して、30分ほどウロウロ。 「なーんだ、すぐそばに地下鉄の駅があるじゃん」 Brooklyn Bridgeが最寄駅のようだ。 ようやく橋へ。

「すごい人出だね」 散歩するひと、ジョギングするひと、 橋の半分は、サイクリング・コースになっている。 だが、観光客がお構いなしに歩くので、 若いローディが、"Keep Right"と大声で叫んでいる。 4時、橋の中ほどへ。

---勇壮だなぁ。 この橋は、1883年完成。 19世紀が鋼鉄の時代だったことがよく分かる。 金網や鉄索がないので、ここからの眺めはいい! 摩天楼がそびえている。 ジス・イズ・マンハッタンだ。

「腹減ったなぁ」 「よしなさいよ、みっともない」 空腹に耐えかねて、摩天楼をみながらパンをかじる。 歩道道橋の下には車道がある。 イエローキャブを待って撮ったりする。 ブルックリン側に近づくにつれて、夕陽が沈んでいく。 「あれって、自由の女神じゃなーい?」 「そうよ、そうよ」

小1時間ほどで橋を渡り終える。 「ブルックリンか、物騒なところだな」 「もう、そんなことはないわよ」 橋のたもとの荒れた街路をイーストリバーに向かって歩く。 「ちょっと寄っていきましょ」 "Almondine"なるお店で、クロワッサンを買い、 "JAQUES TORRES CHOCOLATE"で、ホット・チョコレートを飲む。 女性陣は、おみやげに、チョコを大量に買いこんでいた。 Zagartの評価も高いらしい。 そして、ようやくリバーサイド。 ここから眺める対岸のマンハッタンの夜景は、あまりにも有名だ。 真正面からの写真を手違いで消去したので、 その代わりにイラストで。 ---このひとのように上手に描けたらなぁ。

5時半、お目当てのピザ屋へ。 「すごい行列だ。帰ろうよ」 「そんなこと言わないで、せっかく来たのだから」 みんなおとなしく行列している。 気温4度。 足元から冷えてきた。

待つこと、40分。 ようやく店内へ。 収容人数100名以上とみた。 ぎっしり座っていて、会話が室内に響きわたって、 まるでお祭りのようだった。 奥で、ピザをつくっている。 生地を練る職人、 生地にチーズなどを盛りつける職人、 煉瓦窯に、ピザの出し入れをする職人、 流れ作業だが、客が多すぎる。 店に入ってから、ピザが出てくるまで、30分。 「おいしいわねぇ」 7時20分、店を出て、 バス、地下鉄、バスと乗り継ぐ。 8時に帰宅。


アバクロ、ミュージカル「CHICAGO」

1月5日。 起床6時。 暗いなかでPC作業。 7時20分、外出する。 近所のカフェへ。

今朝は、おばはんが仕切っている。 アラフォーが、聞いてくる。 「確か、あんた手袋を忘れたわね」 「イエス」 奥から持ってくる。 椅子の下に落ちていたらしい。 人間観察を開始。 今日は、やけに客が多い。 ---そうか、月曜日なんだ。 長身の白人がやってきた、 スタッフ全員が連れてきた子供を相手に笑っている。 馴染み客らしい。 レジのおばはん、店を出ていく。 客がいるのに変だなと思ってみていると、 道路の反対側に駐車した黒いクルマをUターンさせて、 店の前に駐車し直している。 ---ラティーノのパートも、いいクルマもってるんだ。 人間観察が一段落したので、帰ることにする。 「しまった!財布を忘れた」 食事をすませ、金を払う段になって気づく。 アラフォーに断って、家に戻り、 店に戻る際、レジのおばはんの車をチェック。 レンジ・ローバーだった。

「高級車に乗ってるじゃん」 おばはんを冷やかす。 「うん、結婚20周年記念に旦那があたしに買ってくれたのよ」 「そりゃ、ビューティフルだね」 「ナイス・ハズバンドって言うんだよ」 美談がうまく表現できなかったので、訂正されてしまった。 どうやら、このおばはんが、オーナーのようだ。 ひとは見かけによらないものだ。 8時半、帰宅。 まだ、女性陣は眠っている。 11時半になって、ようやく朝食だ。 終えると、アパートの1階にあるランドリーへでかけた。 3時過ぎまで、映画批評を書き、HPをアップロード。 書くことが多いので大変だ。 4時、全員そろって外出。 バスに乗って、五番街に出る。 まずは、ロックフェラーセンターへ。 巨大なツリーとスケート場に観光客が群がっている。

長女が聞いてくる。 「パパ。アバクロ見たい?」 「アバクロ?」 「昨日話した "Abercrombie"よ」 「ああそうか、見たい見たい」 てなことで、五番街のいい場所にあるお店へ。 行列かと思ったが、スム−スに入れた。 店に一歩足を踏みいれて... 「お、お、おっ」 イケメン店員が上半身裸で踊っている。 若い女性客が並んで記念撮影をせがんでいる。

店内は、ディスコ音楽ががんがん響き渡っている。 小部屋に分れていて、 部屋毎にイケメンや美女が音楽に合わせて踊っている。 「30分後にロビー集合ね」 長女に案内してもらって、紳士服売り場へ。 ジーンズしか置いてなかった。 ユニクロと比較すると、お値段は高い。 女性陣が何も買わないので、理由を聞くと、 一昨日、バーゲンで買ったとのことだった。 「うるさかったな」 「熱かったなぁ」 そうつぶやきながら、店を後にする。 年寄りには、ディスコ音楽は単なる騒音だ。 このアバクロ、日本に出店すれば、 H&M以上に若いひとに人気を呼ぶだろう。 今のところ、出店する意思はないらしい。 6時、"La Bonne Soup"(48W 55th St.)へ。 名物のオニオン・スープを注文する。 パン、サラダ、コーヒー、デザート、それにビール! アバクロを歩いたので、喉が渇いた。

---このスープ、パリの味には及ばんなぁ。 あの時は、冬のパリの街を一日歩いて、 身体が冷え切っていたから、とくに美味く感じたのかも。 4人前、チップ込みで、$80。 払い終わると、長女がいう。 「パパ、大丈夫?」 「どうして?」 「だって、ビール飲んだでしょう」 「ああ。だって、あとは帰って寝るだけだろう」 「これから、ミュージカルを見にいくのよ」 「えっ!」 数ブロック歩くと、もうブロードウェイ。 AMBASSADOR劇場のまえは長い行列だ。 ・215 WEST 49th St 手荷物検査のあと、場内へ。 「おお、いい席だ!」 「ほんとうにいい席ねぇ」 「高かっただろう」 「まあね」

8時、"CHICAGO"の幕が開く。 YouTubeで、予習をすませてある。 "CHICAGO"の解説 あの名曲、"ALL THAT JAZZ"に乗って、 踊り子たちを従えて、敵役ヴェルマが登場。 Vellma Kelly役は、BRENDA BRAXTONとリーフレットにある。

---あれ、黒人かよ。 小柄で美人とはいい難い。 映画では、あのキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じている。 ギャップが大きすぎて、ついていけなかった。 やがて、ロキシーが登場する。 Roxie Hart役は、MEROLA HARDEN。 小柄で、細身の白人女優だった。 映画では、ふくよかなレニー・ゼルウィガーが演じている。 ---大分イメージとちがうなぁ。 悪徳弁護士BillyFlynn役は、TOM HEWITT。 あのハンサムなリチャード・ギアとは比ぶべくもない。 舞台装置は、一風変わっている。 中央にデーンとオーケストラが鎮座している。 その脇と前だけで、ストーリーが進行する。 ---何なんだよ。もっと金かけろよ。 だが、次第に舞台にひきつけらていく。 このモダーンさで、トニー賞をとったんだと納得する。 いい席だったので、踊りも歌も迫力十分だった。 早口の英語のせりふは、半分もわからなかったが、 映画で予習したおかげで、展開が読めて楽しめた。 "CHICAGO" 9時、第1部が終わる。 長女に礼を言う。 「ありがとう、いい席をとってくれて」 「うん」 劇場中央で、しかも、前のほうだ。 「ちょっとトイレに行ってくる」 「そうね、そのほうがいいわね」 最近、頻尿の症状が現れている。 ちょっと冷えると、無性にトイレへ行きたくなるのだ。 実は、この観劇も心配していたのだ。 上演中に、症状が出たらどうしよう。 ロビーに出る。

---おっ、すごい! 女性トイレの長い行列は、日本でもおなじみだが、 男性トイレにも、長蛇の列だ。 長い間生きてきたが、こんなに長いのは、はじめて。 幸い、切迫していなかったので、余裕で並ぶ。 さらに、席へ戻る前に、バーでコーラを飲む。

10時に終わる。 「面白かったわ」 「映画見ておいてよかったわ、筋が分かって」 「それにしても、低コストなミュージカルだな」 「舞台装置や衣装に、お金をかけていないもんね」 「役者をコキ使ってるのよね」 「あの筋肉マンの俳優すごかったわね」 「君らより大きいのじゃないか」 「....」 最後まで、黒人女優の起用には不満だったが、 最後の最後になって、起用理由が分かった。 激しく憎みあった2人、 黒人のヴェルマと白人のロキシーが手を取り合ってこういう。 「アメリカは、この私たちみたいになるのよ」 観客が大歓声をあげ、口笛がこだまする。 オバマ時代の幕開けだ。 異邦人のこちらまで感激してしまった。 帰り際に、黒人の無愛想な手荷物検査係の肩を抱いて、 思わず、こう言ってしまった。 "Here is YOUR country!" 笑顔とともに、期待しない返事が戻ってきた。 "Yeees, sir" 10時、帰路につく。 青白い電光掲示板を指して、娘がいう。 「これが、リーマンのビルよ」 「へぇ」 ここを舞台に、強欲が横行し、 悪事は千里を走り、大不況を招いたのだ。

次女が、ショーウィンドウを撮りまくっている。 ---いい加減にしろよ。 夜になって、急激に気温が下ってきて、 ビル風も強く吹きつけてくる。 呼びに行って、ショーウインドウの被写体をのぞく。 「おお、おお...」 電光掲示板が、ブッシュの残り時間を刻んでいる。

彼は、歴史に残る偉大な大統領にならんとしたが、 意に反して、最も不名誉な大統領になってしまった。 未曾有の大不況を招き、戦争の泥沼から抜け出せず、 アメリカに不和と貧困をはびこらせてしまったのだ。


映画「MILK」

1月6日。 起床7時半。 PC作業の後、8時半に散歩に出る。 ---ちがうところへ行くか。 朝食に適当な店を物色しながら、86丁目まで歩く。 ---意外にないもんだな。 戻りかけて、85 St- 1st Aveに、映画館を発見! ---ショーン・ペン主演か。面白そうだ。 初回上映は、午後1時45分から。 戻っていき、朝食の店をみつける。 昨年、確か入った覚えがある。 超高層マンションの1階にあって、デニーズと思えばいい。 ---混んでるなぁ。 メニューの値段をみて、理由がわかった。 卵1ケ、ベークド・ポテト、ソーセージ、パン、 それに、コーヒーとジュースで、$4.85。 "グリーン・キッチン"のほぼ半値だ。 だが、お味は、いまいちだった。 ・Gracie Mews Diner 81St- 1st Ave

人間観察を開始。 隣に座っているのは、白人のおじいさん。 この高級マンションの住人だろう。 赤いYシャツを着ている。 こちらでは、年寄りが派手な色の衣服を着ている。 遅れて、細君がやってきた。 大柄で、肥っている。 旦那は頭が上がらない様子だ。 ---リーマンの連中かな? 若い白人が手振り身振りで力説している。 手には、ペーパー。 神妙に拝聴しているのは、4人だ。 小柄なオバマ氏、女性2人、斜に構えているインド人。 しきりにメモを取っている女性は、秘書かも。 ---おれにも、あんな頃があったなぁ。 若くて傲慢で、周りが見えなかった。 9時半、帰宅。 女性陣は、起きていて朝食の最中だった。 今日は、お買い物に行くとか。 10時半、女性陣が出かける。 映画批評に専念する。 ---もうお昼か。腹へったなぁ。 12時に外出する。 また、86丁目のほうへ歩いていく。 ---お、煙が上っている。 近づくと、焼け跡が飛び込んでくる。 失火か、放火か。 9.11.を思い出す。 ---もう、7年も経ったのか。 あれから世界は確実に悪くなった。

ぐんぐん歩いていく。 前方に、子供たちの賑やかな声が聞こえる。 ---危ないな、道路で遊ぶなんて。 でも、近づくと、交通が遮断されている。 日本では考えられない風景だ。

12時半、空腹が我慢できず、目にしたカフェへ。

元気な黒人ウエイターが注文を取りにくる。 メニューを迷いながら、見ていると、 「お前は日本人だろう。いいう奴だ。 大阪に行ったことがある」 「...」 「サラダだな。コールスローだな。 それに、ミートソース...分かった、心配するな」 しばらくすると、どかーんと届く。 注文していないサラダがやってきた。 アメリカン・フードの粗野にして大なることに気づくが、 もう手遅れだ。 ふーふー言いながら、サラダを平げる。

パンは、1ケで充分だ。 コールスローは、酸っぱすぎた。 もう終わりにしたいと思っていると、 盛大なスパゲッテイ・ミートソースがお出ましになる。 まったく手をつけないのも何なので、 山盛りの表面だけを食べる。 味はいいが、茹ですぎもいいところだ。 ---映画は、1時45分からだったな。 時間つぶしに、"Barns and Noble"へ。

JAMES PATTRESONが面白かったので、書棚を探す。 日本では考えられないほど、洋書がある。 (当たり前だが) ・JAMES PATTRESON "ALONG CAME A SPIDER" G|C  1冊買ったあと、"ZAGART Shopping"の立ち読み。 H&Mの評価は、手厳しいものだった。 ユニクロも、評価欄に-印がついていた。 それに対して、アバクロは、かなりのスコアだった。 ---買おう。 レジに並んだが、長い行列。 上映時間に間に合わないので、買うのをやめた。 さて、いよいよ映画見物だ。 ---映画館、どこにあったっけ? 85St- 2nd Aveまで行くが、見つからない。 1St Aveにまで戻る。 ---ああ、あった!

窓口で、$12支払う。 (60歳以上は、$8.5だが、パスポートのコピーを忘れた) 映画「ミルク」は傑作だった。 ショーン・ペンは、いい役者だ。

見終わると、4時。 道路の向かい方にある店へワインを買いに。 ---しまった、銘柄を忘れた。 ナパヴァレー、Chardonnay、2005年、白ワイン、 そう店員に伝達するが、見当たらない。 ---この際、奮発するか。 店員が太鼓番を押したのは、以下のもの。 ・"GRGICH HILLS" Napa Valley CHARONNAY 2005   $48.76

ラベル裏面の説明を読む。 1976年の有名なParis Tastingで、 Mike Grgichが優勝したものと同じ製法とある。 ---へぇ、こりゃ驚いた。 映画"BOTTLE SCHOCK"と同じワインが存在するとは... 日本では、手に入るかどうか分からない。 「よし、買った!」 日本に帰って調べたら、こうあった。 「入手困難な白ワイン! ガーギッチ・ヒルズ シャルドネ・ナパヴァレー かの有名な1976年パリティスティングで白ワインのトップに選ばれた カリフォルニアのモンテリーナ・シャルドネ。 そのワインを造ったのがこのワイナリーのマイク・ガーギッチ。 彼の造るシャルドネは常に高く評価され、 キング・オブ・シャルドネと呼ばれている」 5時帰宅。 もう暗くなっていて、 街路灯にぶつかりそうになる。 ---危ない、危ない。 貴重なワインをぶら下げているのだ。 女性陣の帰宅は、8時。 またもや、アバクロの袋を下げている。 長女が風邪気味ということで、 伝説のワインの封切りは、明日となる。 映画「シカゴ」をDVDでみる。

シカゴ・予告編 「やっぱり、映画はお金がかかっているわね」 「リチャードギア、素敵ねぇ」 「キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、 マイケル・ダグラスなんかとなんで結婚したのかしらね」 「キミら、男を見る目がないなぁ」 「....」 「....」 余計なことを言ってしまったので、話題を変える。 「そういえば"CHICAGO"をみたあと、 ティファニーの前に、ひとだかりしていただろう」 「ああ、あれ映画の打ち上げだったのよ」 「ブラッド・ビットとケイトブランシェットが出てくるのを みんなが待っていたのよ」 「へぇ、待ってればよかったな」 「でも、寒かったし」 「あんなのニューヨークじゃ、日常茶飯事よ」 「...」


人間観察、「マンマ・ミーア!」

1月7日。 起床7時半。 夜中に何度も目が覚めた。 ---雨か、傘はどこにあるのかな? 8時、近所のカフェへ。 いつものおばはんがいる。 フレンチト−スト、ベーコン、コーヒー。 窓の外を眺めて、人間観察。 傘を差さずに歩いているひとは、2割程度だった。 フードを被るか、帽子を被るか。 犬も背中にコートを着ている。 ---おっ。 隣の席に、毛皮のコートの妙齢のご婦人が... 脱ぐと、毛糸のセーターと白のチノパン。 ---女性経営者か、女優か? 掃き溜めに鶴が舞い降りたようなものだ。 卵、ベークドエッグ、ソーセージ、パン、コーヒー。 極めてオーソドックスな朝食だ。 残さず平げている。 この美人に気をとられて、他の人間観察がおろそかになった。 8時40分、道路を渡って、スタバへ。 行列が長いので、断念し、雨のなかを 2nd ave - 81stのスタバへ。 お気に入りの2階の部屋へ。 ---有難い!空いている! 先客は、白いセーターを着た初老の男性。 電源のある机に向かっている。 もうひとりも初老の男で、ソファで新聞を読んでいる。 あとひとりは、学生か。 ノートを広げている。 小1時間ほど、ミニノートで、映画批評の作成。 バッテリーの残容量が70%を切ったので、席を立つ。 ---まだ雨だなぁ。憂鬱だな。 捨てるつもりで、履いてきた靴が役立たずだ。 靴底から雨水が上ってきて、足が濡れてきた。 不快だ。 9時半、帰宅。 つれあいは、シャワー。 娘2人は、まだ寝ている。 電源コードにつないで、映画批評の続きに専念する。 12時半。 ---腹減ったなぁ。 女性陣は、朝食の最中だ。 当方の分はなさそうだ。 ---外へ行くか。 雨の中、近場のレストランを探す。 ---怪しげな店だけど、やむをえないか。

店内は、案の上、薄暗く、閑散としている。 ウエイトレスは、チャイニーズだ。 ランチメニューの一番上にあるものを指す。 ・Souer Chicken with wonton soup ---このワンタン、すいとんみたいな味だなぁ。

揚げたチキンに甘酢をかけている。 ---お味はまあまあな。 下に刻んだキャベツが敷いてある。 その他に、春巻きが、1ケ。 ナイフで輪切りにしてみると、中身はキャベツ。 実に安上がりな材料ばかりだ。 これで、お値段は、税込み$7.01 コスト・パーフォーマンスは抜群だった。 ---あれ? 異変を感じたのは、1時を回った頃。 続々と高校生の集団が店に入ってきた。 たちまち、30席は満席。 うるさいこと、姦しいこと。 他の客など念頭にないのだろう。 店外には、空席待ちの娘らも。 レジで支払う段になって、女主人に聞く。 "Boys and girls...College or High School?" "High School...over there!" 目線の先には、続々と出てくる高校生ら。 このお店の前が高校だった。 このお店は、学食代わりだったのだ。 ---ああ、おどろいた。 ・Hunan Dellght Matsuya Chinese Japanese Cuisine 帰宅途中、思いついて、レンタルビデオ屋に寄る。 借りるのにパスポートがいるかと思ったら、 カードでいいという。 娘の名前を告知してみると、会員になっているらしい。 ---しめしめ。 念願の「マンマ・ミーア!」を借りられた。 日本より一足早くみられるのだから、1日$4も安いものだ。 マックにDVDディスクを挿入する。 字幕は英語だが、初等英語で95%は分かる。 出演者みんなが、すばらしかった。 ギリシャの景色がすばらしかった。 ABBAの歌が流れると、ぞくぞくした。

4時半、眠くなる。 目が覚めたら、もう6時。 女性陣の帰宅は、思ったよりも早く6時半。 8時から、夕食。 サケの粕漬けを食す。 長女が風邪気味なので、ワインの試飲は延期。 それだけが心残りの一日だった。


次女帰国、ブルーミングデール

1月8日。 起床5時。 小1時間かけて、イラストを描く。 ---今日帰るのか。 次女は、帰国の途へ。 スーツケースが重い、それも大小2個。 「RIMOWA、また買ったのか」 「うん、まぁ」 「優れものだからね」 リモワは4輪で、静音設計だ。 ポリカーボネート製で実に軽い。

6時半、娘たちをアパートの玄関で見送る。 長女は、出勤日だ。 「空港まで、タクシー拾わないのか?」 「バスで行くのよ」 グランド・セントラル駅まで2人で行き、 長女は職場へ向かい、次女はバスに乗る。 タクシーなら、60ドルかかるが、バスなら13ドルですむ。 買い物三昧だったが、ケチるところはケチっている。 「気をつけてな!」 「はーい」 最初は、老夫婦も今日帰るつもりだったが、 便がとれず、数日延ばしたのだ。 7時半、つれあいと朝食に外出。 「どの店に行こうか?」 「ソーセージの美味しい店へ行きたいわ」 「じゃ、すぐそこだ」 いつものおばはんがいる。 つれあいは、フレンチト−ストと卵2ケ。 こちらは、フレンチト−ストとソーセージ。 ほかに、コールスローも シェアして食べるのは、いいもんだ。 窓の外を眺めて、人間観察。 ---そうなんだ。 幼稚園児がしきりに通っていく。 ダウンタウンに向かう園児だけでなく、 アップタウンに向かう園児も、 さらに、イーストリバーのほうに向かう園児も少数いる。 幼稚園児観察のメッカみたいなものだ。 「子供って、なんで、ああ可愛いんだ」 父親に肩車してもらって得意気な女児。 父親と一緒にキック・スケーターで通学する男児。 数年前ほどではないが、流行っている。 上手になれば、階段だって、ホレ、この通り。 Kick,Puch Skate おばあちゃんと店に入ってきて甘えている女児。 「ここは、いろんな犬が通るのね」 「おっ、おとうさん犬だ!」

「ニューヨーク滞在も、残り少なくなったな」 「そうね、あっという間ねぇ」 「せっかくだから、イースト・リバーを見ておくか」 「風が強いわよ」 「な、ちょっとだけ」 てなことで、ワンブロックだけ河岸を散歩する。 いい自転車道になっていて、 ローディが、ダウンタウンへ軽快に走り去っていく。 「ありゃ、クルマよりも早く職場に着くぞ」 「すごい渋滞ね」 この風景、パリのセーヌ河畔を思い出させる。 もう、2度と行くことはないパリ。 目の前の風景がセピア色になった。

1時、外出。 「カンボジア料理、つきあってもいいわよ」 「それじゃ、行ってみるか」 バスでレックスまで行き、それから83Stまで歩く。 「変だな、この辺だと思ったんだけど」 Lex Avから、3rd、2ndへ探しまわる。 「ないなぁ」 「どこかで食べて行きましょうよ」 「そうするか」 近くにあったレストランに入る。 中に入ると、右手は酒瓶がぎっしり並んだカウンター席。 左手に、テーブル席が奥まで並んでいる。 3方の壁には、大型液晶テレビが6ケも。 バスケットボールやアイスホッケーの映像が流れている。 「スポーツバーっていうのかな」 「こういう店って、日本には少ないわよね」  ...何食べましょうか?」 「分量が多いから、気をつけたほうがいいよ」 「そうね」 てなことで、サラダ、ビーフ・シチューを1皿ずつ注文する。 あとは、コーヒー。 「何これ、このドレッシング、塩辛いわよ」 「おれのビーフ・シチューも、塩辛いよ」 「どれどれ...辛いわね」 そさくさと会計をすます。 しめて、$32.39。 「店選びをしくじったなぁ」 「失敗ね」 「ま、それでも、記憶に残る店にはなったな」 「...」

2時半、86Stから地下鉄で、59Stへ。 地上に出ると、目の前がつれあいのお目当て ブルーミングデールだ。 一頃、日本の百貨店業界のひとが、参拝した場所だ。

「トイレないかな?」 入ってすぐ、トイレ探しだ。 2F、3F、4F、5F、いずれも、Ladiesのみ。 ついに男性店員に聞く。 男性用は、Lower Level と7Fにあるだけだった。 一息ついて、つれあいのお買い物につきあう。 7階の寝具売り場から6階の食器売り場へ。 「前は、いいと思ったのにねぇ」 「進歩しとらんなぁ」 結局、この売り場では、何も買わずに終わる。 その昔は、キルトのシーツカバーを買ったりして、 持って帰るのに一苦労したもんだ。 「疲れたなぁ」 「暖房がきつくて喉が乾いたわ」 6F売り場の真ん中に、喫茶コーナーができていた。 ハーブティーを飲むことにする。 周囲を見回すと、白人老夫婦ばかり。 みんな、大柄で、肥満体型だった。 彼らが、百貨店文化を支えてきたのだ。 GMが得意とする大型車の顧客層なのだろう。 不意に思いがこみあげてきた。 古き良き時代は、彼らとともに過ぎ去っていく... 帰り際に、1階売り場を通過する。 ---ふーん、力入れてるなぁ。 やけに目立つバッグが並んでいる。

女店員に聞く。 "Who is Tory Birch?" "she is a designer around forty."

2004年、NYノリータ地区にショップをオープン。 瞬く間にお洒落な顧客を増やして人気ブランドになった。 ケイティ・ホームズ、アン・ハサウェイ、ペネロペ・クルズ、 キャメロン・デイアス、ユマ・サーマン、ヒラリー・スワンクなどが愛用。 4時半、3rd Av - 69 Stから、バスで帰る。 娘のアパートのそばに教会がある。 尖塔の脇に満月が出ていた。 その背後に、尖塔よりも高い高層ビルが見えた。 「神をも恐れぬ仕業だな」


ユニオン・スクエア、オバマTシャツ

1月9日。 起床5時。 1時間ほどイラストに没頭。 一応、描き上げてから、読書。 ---面白くなってきたな。 女主人公の刑事部長は、殺人犯を逮捕。 だが、巡査に格下げされ、かつての部下の下で働く。 7時半、娘の出勤にあわせて、外出。 今朝はとびきり寒い。 日中の最高気温は、マイマス1度だとか。 娘が間口一間の修理屋の前で立ち止まる。 「あと10分もしたら開くからね。じゃあね」 「行ってらっしゃーい」 「あの娘、もう戦闘モードだな」 「そりゃそうでしょ。仕事が溜まっているんでしょ」 われら老人夫婦は、 申し訳ないが、"グリーン・キッチン"へ。 「お、メニューリストが新しくなっている」 「お客が減ったからでしょうね」 「そういえば、有閑マダムが減ったような気がするな。 朝食ミーティングの連中もいないし」 こんなところにも、不況の影が。 つれあいは、スクランブル・エッグとベーコン、 こちらは、スクランブル・エッグとハムを注文する。 頼みもしないのに、 おばあさんが、ジュースとマドレーヌをもってくる。 さては、おばあさん、 テイクアウトしたときの多額のチップを覚えていたのか。 ---まったく、もう。 つれあいが、日課の食事前のヨガをはじめた。 異国の地だとヒトは奇妙な行動をとる。 ウエイトレスのおばあさんも、マネする。 先客のおばあさんも、興味深そうに見ている。 このおばあさん、 顔つき、衣装から判断すると、先住民族のようだ。 8時半、店を出て、先程の店へ。 つれあいの時計の修理だ。 おじいさんがいる。 風貌はといえば...、 西部劇の酒場にたむろするろくでなしだ。 無口で凄みがある。 裏蓋を開けて、電池を交換している。 その間、ヒマなので、3畳ほどの店内を見回す。 ---おっ、バッグも売っているのか。 ミニノートがぎりぎり入りそうな肩かけ鞄だ。 お値段は、$12。 ---ま、1000円だな、円高だから。 買うことにする。 手持ちの現金がないので、つれあいに払ってもらう。 その様子をみていて、 おじいさん、はじめて欠けた歯を見せる。 おそらく笑ったのだろう。 何でも、奥さんに財布を握られていて、 毎日、お小遣いを渡されるのだとか。 "Me too." 9時、Agata&Valentinoに寄る。 つれあいは、娘に食事をつくってやれることに、 大いなる喜びを抱いているようだ。 夕食材料の魚を物色していると、 背後から日本語で声をかけられた。 「ここの魚はフレッシュですよ」 相手は、女性連れの男性だった。 脂っ気のないブルース・ウィルスというべきか。 神戸で生まれ育って45年、最近NYに住みはじめたとか。 「いまでも、週に1回は、東京に行っています」 ---どういう職業なんだろうね。 買い物をすませて、アガタを出る。 道路の向かいかたは、アガタの別館だ。 リカーショップを買収した。 朝日が当ると、愛想のない街角に風情が出てくる。

12時半、娘のアパートで昼食。 クロワッサン、ゴートチーズ、ヨーグルト、ジュース、りんご。 「美味しいなぁ」 「昨日の32ドル、何だったんでしょうね」 「はは、金を払って、不味いものを食ったな」 「あの娘が言ってたわ。 NYでは、下調べをしてから、 レストランに行ったほうがいいわよって」 1時スタート。 バスで、Lex Ave - 77Stに出て、地下鉄に乗る。 「今日も演奏しているな」 「何でも、マンハッタンでは、 オーディションに受かったひとだけが、駅で演奏できるようよ」 「この曲名、何だっけ?」 「ダニーボーイでしょう」

1時半、ユニオン・スクエア駅下車。 地下鉄6番線で、8つ目だった。 「柏駅から8つ目だと亀有だな」 「変なこと言わないでよ」 外へ出ると、おなじみの風景が開ける。

広場には、Farmer's Marketが並んでいる。 野菜、はちみつ、りんごなど地元産のもの。 工芸品売りや絵描きもいる。 Tシャツは、すべてオバマさんの顔々... ---おみやげに買って帰るか。 そう思ったが、投売り状態だから、手が伸びない。 ---でも、1枚くらいは。

そう思って、露店に近づいていくと、 「おっ、リスだ。リスがいるぞ!」 こんな雑踏に、リスがいていいものなのだろうか? 「ひとを怖がらないのね」 「おお、うじゃうじゃいる!」 「売店のひとが、餌をやっているからよ」 ダンボ−ルの箱の上に、どんぐりとナッツが散らばっていた。 リスは、これを目当てに、樹木から下りて、 芝生を横切り、鉄柵を乗り越えて、歩道にやってくるのだ。 10回目かのシャッターで、 ようやく正面から、リスを撮影できた。

広場の前の大きな靴屋に入る。 ユニオン・スクエアに来たのは、 娘から靴を安く買うなら、ここがいいと聞いたからだ。 なるほど半額セールで、店内はにぎわっている。 ADIDAS、NIKE、NEW BALANCE、ECO、PUMAなど、 一通りブランドが並んでいる。 30分ほど、見て回る。 「おう、地階がアウトレットだ」 「行ってみる?」 靴が捨てるようにあふれている。 「これどう?」 「変わったデザインね」 靴は買わないというつれあいに推奨したのは、 レース模様の運動靴。 「2000円だぜ」 「そうね」 結局、この店では、こちらは買わずじまい。 100mほど先の靴屋で、ハーフ・ブーツを買った。 ウォーター・プルーフとある。 こちらの店は、3割引きで、$70。 明日は、大雪だそうだ。 この後... つれあいの要望で、 またもやブルーミングデールへ寄る。 6F食器売り場のカフェが満席だったので、 奥のレストランに行く。 「おおお!」 有閑マダムの墓場だった。 「やめようや」 「...」 不満気だったつれあいは、 近所のスタバで、機嫌を直したのか、 カフェラテを奢ってくれる。 隣はと見ると、 車椅子の老夫婦を囲んで、家政婦3人。 家政婦たちは、時々、肩を叩きあって笑いころげている。 時々、グラスを差し出し、 老爺にストローをくわえさせている。 老婆のほうは、 毛糸の帽子を被り、ひざかけを引き寄せ、 身じろぎもせずに空をみつめている。 「かわいそうね」 「ああはなりたくないな。経営者だったのかな」 「おじいさん、お家に早く帰りたいと言ってるのにねぇ」 だが、家政婦たちは、話しに花を咲かせていて、 一向に立ち上がる気配がない。 「あなたも、ああなるのね」 「....」 ---お前だって、おなじだろう。 応酬しようとして、口をつぐんだ。 老妻には、低姿勢で望むべし。 老いたら、家政婦にも低姿勢で望むべし。 もっとも恒産あってのことだが...


映画"BRIDE WARS"、自転車屋さん

1月10日。 起床5時。 1時間半かけてイラストを描き上げる。 ---この道も、奥が深いな。 7時半、近くの店へ。 まだ雪は降り出していない。 土曜日だから、がらがらだ。 今日はアラフォーが店番のようだ。 おばはんがいないから、スタッフは気楽にしている。 テレビをつけて、見入っている。 獰猛なワニが、インパラの群れに襲いかかり、 1匹が食われているところだ。 ---おお、人間が襲われた! おいおい、客がいるんだぜ、朝食中だぜ。 いつものように、フレンチトーストとソーセージを食べ終えて、 レジで、アラフォーに代金を支払う。 アラフォー、こちらをみつめ、次の言葉を。

"Bye friend!" 友人になったと思っていなかったので、仰天する。 スペイン語で"adios el amigo"のつもりなのだろう。 せっかくいい仲になったのに、今日でお別れとは、残念だ。 ここは、菅原洋一さんに、 この気持ちを代弁してもらおう。 8時10分、スタバへ。 お気に入りのスタバにも、今日でお別れだ。 幸い、がらがらなので、2階の写真を撮る。 窓際の席が、わが指定席だ。 人生、ずっと窓際族だった。 9時頃、カップルがやってきて、隣に座った。 日記に没頭していたが、 白人のカタコト英語が耳に入ってくる。 女が正しい言葉に直している。 マンツーマンの英会話のレッスンかもしれない。 帰りがけに、男の顔をみる。 プーチンみたいな奴だった。 そういえば、ロシア語が聞こえたっけ。

9時15分、帰宅。 娘は、まだ寝ている。 つれあいは、シャワー。 しばらく、洋書を読み進む。 11時半、2人が外出する。 ニューヨーク・シテイバレエを鑑賞するらしい。 演目は「コッペリア」 こちらは、そのほうの興味はないので、パス。 したがって、お昼もひとりで。 ---おお、雪が降りだしたぞ。 近所のピザ屋へ。 ---すごい名前だな。 ・GOTHAM PIZZA 先客は、黒人と幼い息子2人のみ。 マルガリータと缶コーラで、そさくさと済ます。 Lex Ave - 77Stから86Stまでは、 地下鉄でたったの一駅だ。 建築工事中が幸いして、アーケードになっている。 ワンブロック歩けば、もう映画館だ。 ---なーんだ、朝から上映していたんだ。 平日とは、上映時間がちがうのを失念していた。 お目当ての「ワルキューレ」は、2時45分から。 時計をみると、1時15分。 「"BRIDE WARS"でもいいか」 雪が気になるので、積もる前に見終えておきたい。

2時45分、見終えて外へ。 ---あれ、雪が小止みになっている! 車道はもちろん歩道にも積もっていない。 時間と気分に余裕ができたので、散歩を開始。 まずは、"BARNS & NOBLE"で、本を1冊。 ・JAMES PATERSON "THE 5TH HORSEMAN" VISION 次に、先日のワインショップへ寄る。 ・Yorkshire Wines & Spirits   1646 1st Ave. 白ワインを2本買う。 娘が飲み干したやつだ。 ・SEQUOLA GROVE - Chardonnay 2005 これで、用事は済ませたので、気が楽になった。 ---NYの雪景色でも撮っておくか。 大通りから小路に入ると、寒いのだろうか、 クルマの屋根に雪が積もっている。

York Aveを歩いてみる。 ---おっ、こんな近所に自転車屋がある。 ・NYC ewheels York Ave bet 84/85 St 店内に入る。 店主ひとりの小さな店で、 扱っているのは、折り畳み自転車が主で、 キックスクーターと電動自転車も置いてある。

DAHONとBROMPTONが主力商品のようだ。 「ダホンのリーフレット、ありますか?」 「ダホン?デイフォンだろう。  創業者は、Dr.David honだからね」 「日本じゃ、みんなダホンと呼んでいるけどね」 「...」

後で調べたが、確かに店主の言う通りだ。 博士は、ヒューズ・エアクラフトの研究者だったが、 その技術が軍事に使われているのにイヤ気がさし、 エコと健康に良い折り畳み自転車の開発を志したとか。 リーフレットをもらう。 ・DAHON MU-SL Weight:19.5 Ibs(8.8kg) Folded Size:33×16×25  Gears:9-Speed Frame:Aluminum Warranty:1Year ---娘に買ってやりたいなぁ。 8.8kgなら、階段を持って運べるかも。 でも、どこに置くかが問題だなぁ。

3時40分、近所のスタバへ。 ---小腹が減ったな。 カフェラテに、パウンドケ−キを追加する。 4時15分、帰宅。 2人はまだ帰っていない。 ---どこへ行ったのやら。 映画批評に専念する。 書き上げると、もう7時だ。 仮眠していると、帰ってきた物音がする。 8時過ぎ、例のカンボジア料理の出前を頼む。 はじめて、娘が高級ワインを飲む。 つれあいは、明日の帰国に備えて荷物づくり。


帰国の途へ

1月11日。 起床6時。 暗いなかで、読書。 ---ライトペン、買ってよかったな。 今回の旅行では、活躍した。 まったく使わなかったのが、アエペン・ミニ。 7時10分、近くのスタバへ。 歩道が凍っている ---ハーフブーツ、買ってよかったな。 滑らないし、足元が暖かい。 朝食は、クロワッサンとカフェラテ。 これが最後と思うと、NYのスタバも恋しい。 7時40分、帰宅すると、2人は朝食中。 娘の指示で、部屋を元通リにする。 「俺の部屋より広いなぁ」 「ずいぶん、きれいにしているのね」 8時40分、娘に見送られてタクシーに乗る。 「1枚、記念に撮っておこう」 娘が毎日見ている風景がいとおしくみえる。 雑多な建物、退色し腐食し変色した煉瓦、汚れたガラス窓、 黄色のない信号とイエローキャブ、時折蒸気が吹きあがる街路...

「Oh! Wanderful!」 拾ったタクシーは、トヨタのミニバン。 黒人の運転手が、バックドアを開けて、 鉄板を手前に広げ、地面につける。 重い旅行鞄が楽々と傾斜をのぼって、車内へ。 黒人運転手は、ほめられて得意気だ。 ほめられて悪い気のするひとはいない。 最近のひとをけなしすぎる世の風潮は考えものだ。 これが最後と思って、車窓からパチパチ。 10数枚撮ったなかで、一番いいのがこれ。 イーストリバーの向こうに、 朝靄に煙るマンハッタンの摩天楼がひろがっている。 ---さらば、ニューヨーク。 また来ることがあるだろうか?

「怖いわね」 運ちゃんが飛ばしている。 計器盤をみると、55mphから79mphだ。 道路は融雪剤を撒いてあるから心配ないが、 窓ガラスが汚れている。 ときどきワイパーを動かすが、綺麗にならない。 ウインド・ウォツシャー液切れだ。 9時10分、JFK空港に到着。 「早く着いたな」 「道が空いていたわね」 「えーと、8時40分に出たらから、30分か」 「成田は不便ねぇ」 このあと、チェックインに手間どる。 長い行列の後尾に加わって、すこしずつ荷物を前方へ。 前にいるのは、メキシコ人家族。 6歳の娘と4歳になったばかりの息子だ。 「いい子たちねぇ」 「4歳の子が、親の荷物を押すかねぇ」 仲良くなって、身振りもまじえ自己紹介する。 「Hi!」 いきなり、6歳の娘が手を差し出してきた。 ちっちゃなぬくもりを感じる。 世の中はこれが基本で成り立っているとすら思える。 その後は、ルーティンが待っている。 手荷物検査では、ブーツも脱がされた。 警備はどこまで厳しくなっていくのだろう。 人間不信は、どこまで進むのだろう。 ひとをみたらテロリストと思え。 14番ゲートへ。 目の前に、これから乗る航空機がみえた。 みたところ、命を託す機体に異常はないようだ。

12時13分、無事離陸。 13時間半もの長い旅が待っている。 古希を迎えた老人には、辛い時間だ。


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