胸騒ぎするヴィッツ


外車に乗っているヤツ。 ベンツに乗っていい気になってるバカ。 ...どうもわが国には、外車に対する偏見があるようです。 「外人」 なんて言葉も、 偏見の一例でしょう。 鎖国、勤皇攘夷。鬼畜英米と続く、わが民族の歴史をみても、 外国とのおつきあいが上手だとは、とても申しあげられません。 島国だから、普段着のおつきあいが下手。 へんに見下してみたり、逆に仰ぎ見たり... マスコミの論調なんぞをみましても、 バブルの頃と、いまでは、 まるでアメリカに対する態度が180度転換しております。 オトーサン その典型。 小学生の頃は、アメリカのGIがジープに乗って やってきて、キャンデーなんぞをばらまくのを 争っていただいていました。サンキュー。 中学・高校では、英語の勉強に励み、NHKの 初級英会話を聞き、FENに耳を澄ませたものの 聞きとれるのは、最後のFar East Networkだけ。 大学4年のときに、安保闘争がありました。 同期生に国会正門前で亡くなった樺美智子さんがいた環境。 当時は、アメリカ憎しで固まっていました。 フランス語をはじめたのも、もとはといえば、アメリカ憎しから。 ESSに所属しているやつらなんかキザで、大キライでした。 会社に入ってしばらくすると、資本自由化。 巨大な外資にのっとられる、そうならないように ガンバロウ!と全社をあげて戦闘態勢でした。 それが、平成の御世になると、一転して 「共生」ときましたよ。 GMやVWといった外国の会社と提携しました。 オトーサンの家では、娘2人が、 いまやかつての 「鬼畜英米」の お世話になっております。 急所をにぎられているようなもので アタマがあがりません。 そんなわけで、オトーサンの家も 外車と国産車の共生時代を迎えました。

AUDI....オトーサン 名古屋での通勤・山荘への高速ドライブ
MOVE....奥方    山荘周辺のドライブ         
MARCH..息子    東京で買い物、ドライブ       

おいおい、AUDIとは何だ。 MOVEもダイハツ、マーチは日産 おまえは、確かトヨタに勤めていたのでないか。 決まってそういうご質問を受けます。 そこで、トヨタはVWと提携し、AUDIも売っております。 後輩がそこで販売を担当しており、安く買いました なーんて オトーサン答えます。 大体それで、納得していただけますが、 なかには、トヨタ車が1台もないというのは何事ぞ。 という手厳しいお方もおられます。 MOVEはダイハツですが、トヨタの関係会社ですので、 まあ、トヨタ車ではないでしょうか。 MARCHは、息子のですから、親がクチ出せません。 などとお答えします。 それでも、会社の対する忠誠心という見地から ご納得いただけない方もおられます。 しかし、最今のように 中高年の社員に 「もうオマエはいらない、出てけ」というほうが、株価があがる というような時代に、一方的に忠誠心を要求するのは すこーし 無理があるのではないでしょうか。 大学のゼミの学生に オトーサンの クルマ選びについての感想を聞いてみました。 「別にィ... 好きなクルマを選んでもいいんじゃない.. 「そんなのあたりまえじゃーん。 だって、自分で稼いだおカネでしょ」 これで、オトーサンの迷いもふっきれました。 オトーサンの新商売は若いひとがお相手。 いい授業をするには、研究材料として客観的にいろいろな会社の クルマを勉強する必要がある。 で、お勉強のご報告。 実は、大学ではマーケティングの授業を担当しています。 マーケティングは実学、そうなると、理論だけでは面白くない。 そこで、ケース・スタディとして 新製品のPMを実演することにいたしました。 ところで、 PM(プロダクト・マネージャー)って ご存知でしょうか。 担当する製品について全責任を負う部長ということです。 新製品の開発、価格決定、販路の選択や販売員の動機づけ、 広告宣伝・販売促進などにを立案し、 また、 需要予測、市場調査、販売目標の設定など、担当した製品に 関連するすべてのことに目配りいたします。 まあ、PMを無事勤め終えれば、マーケティングの大半の分野に 習熟することになります。 いい勉強になります。 初年度には、たまたま新発売となったホンダのロゴを 取り上げました。 ライバルとしてはトヨタのスターレット、日産の マーチがあります。 また、外車の小型車の代表として VWのPOLOを選びました。 学生たちに勉強してもらうまえに、 オトーサン、自分で 仕様・寸法をしらべ、 自動車雑誌の記事を読み 実際に試乗したり 販売員に話をうかがいました。 そんなことをしているうちに 自家中毒!、 演習のハズが 試乗したりすると、、 猛然と POLO(1600cc) を買いたくなってまいりました。 ソアラもオンボロになってきましたし、 ちょうど退職金も出て 気分が昂揚しておりました。 ポロ(サイド) 「どうだい、このクルマ」 とオトーサン。 「ちいさいけど...、よく走るわね」 と奥方が申します、 この会話、そのまま受けとると YES になりますが、、 長年の経験で、夫婦の会話のニュアンスを汲み取ると、 NO! であります。 諸君、この会話の前半の 「ちいさいけど...」 にご注目。 要するに「ちいさ過ぎるわよー。 ポロではボロッチイ」ということであります。 ポロ1600ccとヴィッツ1000ccはそっくり。 後ろからみると、もっとそっくり。 スリーサイズをみると、幅が同じ。
ヴィッツ:長さ 3610mm 幅 1660mm 高さ 1500mm
POLO:長さ 3715mm 幅 1660mm 高さ 1435mm
そりゃあそうでしょう。 前のクルマは? たしか、ソアラ。 いま、ダンナが買おうとしているのは、 ポロ。 「ポロは着てても、心は錦」 と、いくらいっても、 事実は冷厳であります。 つまり、高級車から大衆車への転落であります。 家計の事情、乗るのは老夫婦2人になったという 背景を考慮にいれても、 いくらなんでも、そこまで車格を落とさなくとも というのが、奥方の反対理由であります。 まあ、常識的な判断ではありますが。 トヨタの部長の時は、高級車 大学教授になったら、大衆車 これでは、オトーサンはいいとしても、 大学を、私企業の風下に立たせることになって 教育行政の見地からしても、よろしくないのではないか。 娘は、もっと明快であります。 「オトーサン、やーよ。こんなの。いくら外車でも」 ショールームにあるGOLFを物欲しげに眺めます。 「色は濃紺がいいわね」 と娘。 「私は、このグリーンのワゴンもいいわ」 と奥方。 「おいおい、ひとこと100万円だよ」 とオトーサンはつぶやきました。 POLOは、200万円、ゴルフは300万円ちかくも いたします。 さらに娘はショールームの別の場所にある 銀色に輝くAUDIに歩みよります。 「このほうが、やっぱ、いいわね」 みると、 あの流麗なデザインで名高いAUDI A4であります。 400万円。 400万円も出せば、ロールスロイスやポルシェをのぞく あらゆる外車が視野に入ってまいります。 何も、VW=AUDIグループから買う必要もない。 その日は、 「まあ、今日はこのくらいにして帰ろう」 といって退散することにしました。 「煩悩」 という言葉は、このあと数か月にわたる オトーサンの悩みをあらわすために 作られたのではないでしょうか。 だって、 にわかに、世界中のクルマを研究しなければ、 ならなくなったのですよー。 クルマの本や雑誌を何10冊と読んだことか。 徳大寺有恒さんの「間違いだらけの外車選び」草思社なんて いうご本もよみましたよ。 これまでも、毎年「間違いだらけのクルマ選らび」 は買ってまいりましたが、これに加えて、このご本と、 本代がまた増えてしまったのであります。 トヨタの乗用車だけでも、数十車種もあり、 国産車に限定しても、百数十車種あるというのに、 それが外車全般から選ぶとなれば、1000種類を超え、 中古外車も考えはじめたので、 10000000種類に急拡大いたしました。 こんなに多いのでは、 徳大寺さんもお勉強が大変ですなー。 印税が入るから、まあいいか。 で、ある日 よたよたとオトーサンは、 ひとりで 先の販売店に舞い戻って まいりましたと思し召せ。 「いつまで続くヌカルミぞ」 この煩悩から逃れるには、 やはり、思い切って 何かを買わなければならないのでした。 馬券で迷いに迷って、 自分の誕生日にしたり、その日の日付にしたりするような ものであります。 AUDI A3 これにきめました。 ええ、決めましたとも。 キメル、キメナイ、キメヨカ、キメル、キメタの 5段活用の結果がそうなんだから しょうーがねえだろ。 当たって砕けろ。 実は、徳大寺さんの97年版には、 「私の車種別採点簿」というのがあって、 最初に、東京地区標準価格(万円) そして、以下11項目が並んでいます。 設計ポリシー、キャラクター、先進性、スタイル、 インテリア・センス、基本性能、運転の快楽度、 スペース・ユーティリティ、燃費、 ヴァリュー・フォー・マネー、魅力度、 最後に、総合評価も10点法で記載されております。 寸評もあります。 で、オトーサンの最終選考に残ったクルマはどうか。 車名、価格、寸評、総合評価の点数の順に ご紹介しましょう。 (外車大衆車)
VWポロ4ドア   179  マニュアルはスポーティだよ        8
ゴルフ・ワゴン   288  流行のワゴンだが、私ならアストラを選ぶ  8
アウディ A3   ーーー  こいつはパーソナルなゴルフだ       8
アウディ A4   349  素晴らしい小型車、BMW3をしのぐ    8

(国産大衆車)
スターレット3ドア  79  安さに徹しているが、基本はしっかり    7
マーチ5ドア    105  こいつはいいクルマだ           8
ロゴ3ドア      91  走りが問題                6

何を隠そう、AUDI A3は、ゴルフの姉妹車。 ゴルフといえば、名車中の名車。 だから、AUDI A3が悪いハズはない。 この時点では、ゴルフの新型も、A3も 日本では発売されていませんでした。 徳大寺さんは、すでに、ドイツで試乗しておられたのです。 何でも、日本発売は98年1月。新型ゴルフの発売は、遅れて秋。 A3の価格は未定ですが、まあ、300万円前後。 ゴルフワゴンよりは高いが、AUDI A4よりは安いだろう。 ここで、 オトーサン 燃えました。 日本で1台しかないクルマに乗るんだ。 輸入された最初の1台を買うのだ。 そういうクルマ選びがあるということを、天下に知らしめるのだ。 実際には、そうはいきませんでしたが、まあ、名古屋では いまでも、めずらしいクルマであります。 その理由は、簡単。 A3があまり、売れなかったからであります。 スタイルはバツグンです。 いつみても満足。 ヨーロッパの新流行である「面品質」重視を先取りしております。 ボディラインが、実にうつくしい、躍動感がある。 ブスと美女という乱暴な分類を借りると、美女。 とびきりの美人。美肌美人。 走りも高速安定性がいい。 ハンドルから手を放してもまっすぐ走ります。 高速のカーブを120kmでゆうゆうと安心して曲がれます。 長時間走行しても、疲れない。 「そんなによくて、 なぜ売れない?」 実は、問題がありました。 3ドアだけ。後席の乗り降りが不便です。 音がうるさい。とくに3000回転、時速100km あたりがウルサイ。 加速が悪い。1800ccエンジンで1190kgの車重はすこしキツイ。 最後に、維持費がバカにならない。 カタログでは、燃費が10.6km/L とありますが、 実際は、高速道路で10km, 街乗りで8km程度。 それにガソリンは、ハイオク使用なので、1リットル110円。 実際は、5ナンバーくらいの大きさなのに、 安全仕様のために車幅は、1735mmと小型車の制限の1600mmを超えて しまい、税金が高い。 ほんとうに、クルマ選びはむずかしいもんです。 「後悔先に立たず」 奥方選びと同じです。 何? 大学選び、授業科目選び、ゼミ選びもそうだった。 でもまあ、 自分で選んだことは事実。 いわば、「自己責任」 おたがい「事故責任」にならないですんでいるのだから、 まあ 満足しましょう。 でも、失敗を糧に 「今度は、間違えないぞ」と せいぜい未来に希望をもちましょう。 人生の最後でもいいから、理想のクルマに出会えたら、いいなあ。 「センセイ、次はクルマ椅子でしょう」 「キミ、冗談がキツイネー」 さて 人生80年と力んでみても、70歳になれば、 若葉アークならぬ紅葉マーク。 90歳になった落葉マーク 100歳をこえたらどくろマークなんてことはないでしょうが、 波乱万丈のオトーサンの愛車遍歴も そろそろ フィナーレを迎えております。、 「急に弱気になったねえ」 そうなんです。 こうやってホームページづくりに熱中していると 視力が落ちてまいります。 7歳のときからメガネ生活。強度の近視と乱視。 牛乳瓶の底みたいなメガネをかけております。 昨年の免許試験は、めがねをつくり直して 何とか合格いたしましたが、 期限は、 平成12年の誕生日までとなっております。 やばい。 そうとう、やばい。 もう、運転がやれなくなってしまうかも知れません。 昨年、アメリカに行って目医者にみてもらいました。 最新のレーザー治療をしてもらおうと思ったのです。 ところが、あなたの眼球はデコボコなので レーザー治療には不向き。 眼内レンズを入れるしかありませんが、国内のほうが あとあとケアによいのではないですか と親切でハンサムな目医者さんはいいました。 「お代は」と聞くと、 「いいですよ」と やさしいお答え。 異国の地で、人情に触れると、つい涙が流れます。 わが国の目医者にいかねばならないのですが、 どーも、気が重い。 もし、手術に失敗でもしようものなら、 廃人です。 運転どころか、白い杖をついて、ホームの端を よろよろ歩くかもじれません。 で、AUDIはまだまだ元気ですが、 失敗しないためにも そろそろ、 次のクルマ選びの準備はしておいたほうがよい。 とはいえ、10年続きの平成不況。 高ーいクルマなんて売れません。 買い換えるお金などない。あっても使いたくない。 新車を買おうものなら、世間から白い目でみられかねない。 若いひとは、もうクルマなんかに見向きもしません。 ケイタイやEメールに夢中。 そんな時代ですから、自動車メーカーは青息吐息。 つられて、自動車雑誌も休刊が相次いでおります。 本屋にいっても、クルマ雑誌のコーナーが減って、 代わりにパソコン雑誌が増えております。 オトーサンとしては、どっちに転んでも、好きな分野。 ちゃんと保険はかけてありますから、 どーってことはない。 しかし、クルマのお勉強には不便な時代となりました。 クルマなしで暮らせない時代ですから、 若いひとは、いずれクルマを買うハズですが、 「もっと環境にやさしいクルマができないかなあ」 「燃費がもっとよくならないかなあ」 「もっと、すてきなデザインやカラーのクルマがでないかなあ」 と思っているようです。 それまでは、買い控え。 お金もないし。 この不況では、親にも、おねだりできないし。 、 しかし、高い買い物。 これまで、この愛車遍歴をお読みのかたなら、 やはり、日頃から関心をもっていないと、 「そのときになったら周囲に聞けばいいいや」 なんてノンビリ構えていると、 ババをつかまされます。 安全装置不備で、事故で死んだり、 維持費が高くて、家計が赤字。 もったいないから、できるだけ乗らないようにしている。 変なクルマにのってるなあ、とバカにされたり。 いろいろとヒドイ目にあいかねません。 アメリカの高校では、自動車の運転が必修科目だそうです。 クルマがなくてはならない時代になっているのですから クルマについてお勉強をしておいて、ソンはありません。 さて、98年10月に軽自動車がいっせいに新型車を出しました。 規格改正で、排気量がそれまでの600ccから660ccにUP。 車の幅や長さもすこーし、広がりしました。 エアバッグなど安全装置もつきました。 黄色のナンバー・プレートが気にならなければ、軽自動車は いい買い物です。 オトーサンの家のMOVE。 奥方は、大変気にいっております。 わが家が気にいっているくらいですから MOVEとそのライバルのワゴンRの市場人気は大変なもの。 昨年末以来、毎月、わが国乗用車市場で TOPをひた走っております。 「軽って、小さくなーい?」 そんなことはありません。 下の写真をみてください。 右がワゴンR、左がヴィッツ。 背の高いほうが軽で、低いのが大衆車。 「いままで、軽ってバカにしていたけど、そーなのか」 「そー、なんですよ」

ところが、今年(1999)に入って、業界では事件がおきました。 事情をかいつまんでお話しすると トヨタが総力をあげて、世界戦略車を開発したのです。 ヨーロッパ市場攻略を目指し、フランスに工場をつくり、 パリのシャンゼリゼ大通りにショールームまで出して 売り込みをはじめました。 その名はヤリス。 ジュネーブのモーターショーで発表し、話題をさらいました。 それが、日本名は、ヴィッツとして99年1月におめみえ。 発売即、ベストセラーにのしあがりました。 オトーサンは、すぐ、ネッツ店と店名をあらためたオート店に 足をはこびました。 カタログをもらい、息子に渡しました。 「ウーン、、買いたいけどなあ」 それで、終りです。 要は、先立つものがないということ。 最近、かれのマーチにはカップホルダーがつきました。 パンダちゃん柄で、ペア。 「ははぁーん」 彼女ができたのに決まっています。 いろいろ物入りなのでしょうなー。 マーチ(右)とヴィッツを前から比べる。 マーチ〔右)とヴィッツを後ろから比べる。 マーチは、1992年、ヴィッツは1999年と、 ともに1月の発売、 7年の歳月は、さすがの名車も古くみせてしまいます。 ほんとは、息子がマーチを買い換えてくれれば いいんだけれどなあー。 でも、それは安月給の息子にはまだ、夢のまた夢。 で、 オトーサン 立ち直って 自動車雑誌を集めて分析を楽しむことにしました。 安あがりな趣味です。 最近の大衆車の販売台数をしらべました。

表1 主要大衆車:月別販売台数の推移(1999)

車 名 1 2 3 4 5 6 7 8
N マーチ...... 4035 6219 11354 4018 3965 4588 5476 2884
T スターレット 2611 3290 4779 2519 2770 2348 2367 859
M デミオ...... 7715 7914 12667 6051 6851 7172 6906 5023
H ロゴ........ 1836 2367 5350 2299 2609 4455 2448 1685
N キューブ.... 6108 9124 13851 5688 5613 6260 7412  3979
    H キャパ...... 1912 2991 4519 2563 2414 3293 2644 1847
T ヴィッツ.... 4351 13872 23726 12389 12518 16135 18046 8921
T ファンカーゴ 0 0 0 0 0 0 0 280

注)Nは日産、Tはトヨタ、Mはマツダ、Hはホンダ

わがヴィッツは、99年1月は発売されたばかりなので、4351台に とどまっておりますが、2月には13872台、3月は23726台と好調な すべりだしをみせ、7月でも18046台を売っております。 7月のライバル車をみると、キューブが7412台、デミオが6906台です から、ダントツです。 オトーサンは、胸騒ぎがしました。 「ヴィッツに? もう、トヨタのひとではないのでないの?」 そーなんです。 でも、胸騒ぎしたのは、カロ−ラ発売当時のことを 思い出したからなんです。 「カローラのことかい」 それもあります。 1966年10月に発売されて、翌月からベストセラーというのは ヴィッツに似ております。 前のクルマのパブリカを廃止というのも 今回のスターレットの廃止とよく似ております。 でも、その胸騒ぎというのは、 カローラが発売される直前の5月に奥方と結婚したことを 思い出したからであります。 そして、新婚当初の頃の出来事も思い出したからであります。 奥方は、東京のかた、それが名古屋くんだりへ都落ちという感覚であります。 それも郊外の師勝というところの田んぼのなかの1軒家。 オトーサンは毎日残業。 そんな田舎にポツンと置き去りにされたら、 「いったい、この結婚とは何ぞや あたしの人生って、一体、何なの?」 という深刻な問題に直面いたします。 帰宅すると、当時は純情可憐であった奥方が、 奥の間に、 突っぷして泣いているなーんてこともあったのです。 「今日はダイジョーブかなあ」 と胸騒ぎしながらも、 オトーサンが 女子大小路あたりで飲んで帰ると、 案の状 ×××なーんてことが重なりました。 幸い、結婚の2ケ月後の7月には 東京転勤。 成田離婚になるのは避けられたのですが、 それ以来、オトーサン、胸騒ぎというのを信じております。 決まって、何かよくないことが、起こります。 そこで、 オトーサンは、 真正面から問題にぶつかることにしました。 「奥方と対決する?」 いやいや、もうそんな元気はありません。 ヴィッツのことを、もう少し調べてみようと思ったのです。 デーラーのショールームにみにいきました。 前から、後ろから、斜めから。 中をのぞきこんで、話題のセンター・メーターをみたり いたしました。 面品質がよいのがわかります。まるで、スポーツカーのような 躍動感があります。塗装もいい。 リアもおなじように魅力的です。渋滞のせいで、、 前のクルマの後ろをみることが多くなったので、 後部デザインも重要です。 室内写真。センターメーター、どこにあるか分かりますか。 ハンドルのすきまからのぞいているでしょ。 センターメーターの写真。左手のたこやきの鍋みたいなものは 各種警告灯です。 帰ってきてから、今度は、 各車のカタログを集めて、仕様・寸法・性能、価格の一覧表を 作成いたしました。 設計の古いクルマから新しいクルマへと並べてみました。

表2 主要大衆車:仕様・性能比較

 長さ 幅  高さ 排気量 馬力 燃費  価格  発売時期
        マーチ...... 3720 1585 1425 1000 58 14.4 94-154   92. 1
スターレット 3740 1625 1400 1300 85 77-154   95.12
デミオ...... 3800 1670 1535 1300 83 16.0 96-155   96. 8
ロゴ........ 3780 1645 1490 1300 66 18.0 83-142   96.10
キューブ.... 3750 1610 1625 1300 82 14.6 114-141   98. 2
キャパ...... 3775 1640 1650 1500 98 14.8 139-155   98. 4
ヴィッツ.... 3610 1660 1500 1000 70 19.6 84-147   99. 1
ファンカーゴ 3860 1660 1680 1298 88 17.2 124-166   99. 8

すると、どうでしょう。 大衆車の変遷が手にとるように分かるではありませんか。 その観察結果を順番に、マーチと比較すると、 1)長さは、次第に大きくなっているが、ヴィッツは例外。 2)幅は、みな大きくなっている。これは安全性のため。 3)高さも、ずいぶん高くなっている。立体駐車場に収まらないのは、   キューブとキャパとファンカーゴ。 4)排気量は、各車の最下級グレードをとったが、1000ccから1500cc。 5)馬力も、大きくなっている。 6)燃費も、ロゴ、ヴィッツは格段に改善されている。 こうしてみると、新世代大衆車とは、スリーサイズでは 幅と高さがちがう。そして性能がよく、燃費がよく、安全性も高い ということになります。 キューブ(左)とヴィッツを較べてください。 キューブのほうが、ずっと立派にみえます。 なにしろ、高さが125mmちがうのですから。 でも、もっと近づいて、現車をみると、お分かりになるかと 思いますが、やはり面が粗いのです。 つまり、時代遅れ。 ヨーロッパの素肌美人の時代に遅れているのです。 世界的な流行である「小さな高級車」の時代に遅れているのです。 そんなことで ある日、 オトーサンは レンタカーで、ヴィッツを借りました。 乗り込むとシートが厚目で、大きく、しっかりと体を包んでくれます。 計器盤も見やすく、走りながらでも操作しやすい。、 すべてが軽みたいに安っぽくない。 センターメーターというのも、 目新しくていいもんです。 とにかく前方の圧迫感がない。 ひろびろしてクラウンに乗っているみたいです。 走り出します。 静かなること、これまたクラウンのようです。 「これじゃあ。税金も余計に払ってクラウンに乗っている ひとがバカにみえるなー。 トヨタのほかのくるまがみんなかすむなあー」 とオトーサン、思いました。 ハンドルのにぎりもしっくりしています。 走行安定性もいい。 カーブでは、アンダー気味。 ブレーキの効きが硬くもなく、やわらかくもなく、バツグンの味。 つくりもいいし、仕上げもいい。 小物入れもあちこちにあります。 クラクションも鳴らしてみました。 「ヴィッツ」と鳴るじゃありませんか。 オトーサン、 胸騒ぎがしました。 「こりゃ、AUDIよりいいわ」 そこで、 高速走行と、山道走行を試してみました。 いずれも、オトーサンの山荘生活では重要な場面です。 ところが、まるでダメ。 1000ccの非力さが丸出し、高速は110kmが限度。 山道はウンウン。 オトーサンの胸騒ぎはおさまりかけました。 でも、コンビニで買った自動車雑誌をみると、 8月末発売のヴィッツの変り型、ファンカーゴの 記事で埋まっております。 オトーサン 細かな活字を目をこらして読みます。 何でも、100V電源の差込口がオプションですが、 フロントとリアの2ケ所にあるそうです。 「じゃ、車内でパソコンやれるじゃん」 さらに、 リアシートが床下収納で広い荷室が出現と書いてあります。 「じゃあ、ベッドになるじゃん」 そこで また、 オトーサン、 新たな胸騒ぎが。 そこで、 早速 デーラーに行って現車をみました。 実物をみて、一番驚いたのは、 荷室のひろさと高さです。 運転席を一番前までずらすと 長さ  178cm (145cm ) 幅   137cm (117cm ) 高さ  129cm ( 85cm ) 容量 2159cm2(1278cm2) の巨大な荷室が出現いたします。 カッコ内の数値は、キューブのものですが、 くらべると、ほぼ2倍ものスペースがありました。 これだけあれば、いろいろな使い方ができるでしょう。 でも、気にいらなかったのは、 燃費が1300cc車で17.2km/L 1500cc車で15.0Km/Lと ヴィッツの1000cc車の22.5Km/L に はるかに及ばないことでした。 これは、車両量重がヴィッツの820kgに対し ファンカーゴでは1000kgと 大幅に増えてしまったからです。 1500cc車を試乗してみましたが、 走りは、たいしたことはありせんでした。 また、スタイルも、いかにも商用車という感じ。 これでは、しゃれたデザインの小型車という 世界の新潮流に背を向けけいます。 カタログづくりも下手。 セールスマンも、この不況つづきのせいか 元気なし、商品知識なし。 で、 オトーサン いいました。 「こりゃあ、ヴィッツほどは、売れないなあ」 でも 居合わせた 若いアベックが、 シートを床下に格納して、 うれしそうに 荷室に並んで横たわっているのを目撃して またまた オトーサン、 胸騒ぎがしました。 すると、間髪をいれず、 奥方の声が聞こえたような気がしました。 「あなた、いいかげんになさいよ」 そうです。 そういわれるのに決まっています。 勿論、女遍歴ではなくて、クルマ遍歴のことに 決まってはいますが... 愛車遍歴はいいけど、 ファンカーゴの荷室を利用しての 夜遊びというのは、若いひとならともかく 年取ったひとには、どーかと思うよ。 たまに胸騒ぎするのは、若返りにはいいらしいけど 胸騒ぎがずうーっとじゃあね。 心の臓に悪いよ。 自分じゃ若いと思っていても、 もう年なんだから。 では、おあとがよろしいようで。 いいクルマ選びは、 確実に、 おあとのあなたの人生を豊かにいたします。


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